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幻冬舎plus+編集部便り

2016.10.10 公開 ポスト

書き下ろしミステリー冒頭を公開!

小路幸也『刑事その五 ギョウザとバー』

10月7日(金)に創刊された書き下ろしミステリー電子書籍レーベル“幻冬舎plus+ミステリー”。そこで発売された7作品のプロローグを、毎日1作品ずつ無料公開いたします。4日目は小路幸也氏最新作。料理上手な刑事、登場! 美味しく、そして痛快。なぜこんな刑事がいなかったのか!?
 

書籍紹介

小路幸也『刑事その五 ギョウザとバー』
通常価格200円(税別)期間限定価格100円(税別)
→電子書籍のご購入はこちら(Amazon)

鹿野原市警察署刑事課強行犯捜査係に勤める僕は「刑事その五」と呼ばれている。僕たちのボスが「刑事その一」と呼ばれているからで、他の意味はない。そんな僕の趣味は料理。給料の大半は料理のために費やしているし、非番の時は、事件のことを忘れるためにも、一日中料理のことを考えている。そんな今日の献立はギョウザ。ご飯は誰かと食べた方が美味しいから、友人で美人のノンコさんを誘った。そこへ先輩刑事の加藤さんも合流。三人でギョウザを食べていると、ノンコさんが、彼女の友人が遭遇した笑い話として不思議な話を始めた。でもそれは僕たちが聞けば「立派な事件」だった……。

 

プロローグ

 もちろん、刑事にだって〈日常〉はあるんだ。

 家に帰ったら熱帯魚が泳ぐ水槽を眺めるのが趣味だっていう人もいるし、優しい奥さんと可愛い娘さんという家族が待っている人だっている。一刻も早く事件を解決、つまり犯人を逮捕しなければならない職業とはいえ、人間なんだ。休暇も休息も必要だ。仕事が生き甲斐みたいな人もいるんだけど、大抵の人は一日の終わりを迎えたときには、刑事じゃなくて一人の男に戻る。戻って、日常を過ごす。

 僕の趣味は、料理だ。

 早くに母を亡くしてしまった関係で料理せざるを得ない状況になってしまって、そしてやってみたらものすごく楽しかった。どうして料理人という職業を選ばなかったのかと今でも思ってるぐらい、好きだ。

 独身なので給料のほとんどを調理道具と食材に注ぎ込んでいる。僕の部屋に遊びに来た人は例外なくキッチンを見て驚くぐらいに。

 同僚の刑事たちも、うまく非番や休日が合うと、僕の部屋にご飯を食べに来る。独身が多いから皆僕の食事を旨い旨いとたくさん食べに来てくれる。料理好きな人は例外なく自分の料理を人に食べさせるのが好きだし、美味しいと言ってくれてたくさん食べてくれると本当に嬉しくなる。たくさん作る方が楽しいしね。

 そうなんだ。

 本当にたまにだけど、一般人である僕の友人と、同僚である刑事が一緒に食卓を囲むときもある。

 そういうときに、つい、事件めいた話題になってしまうことがある。

 僕らが一般の人に扱っている事件のことを話すことは決してないけれども、刑事が二人三人と揃っていると話したくなってしまうことって、一般の人でもひとつやふたつはあると思うんだ。

 そういうときには、嫌がらないで聞くようにしているんだ。

 市民の心の平穏を保つことだって刑事の立派な仕事だからね。

 

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幻冬舎plus+編集部便り

幻冬舎発のオリジナル電子書籍レーベル。

電子書籍ならではのスピードと柔軟性を活かし、埋もれた名作の掘り起こしや、新しい表現者の発掘、分量に左右されないコンテンツのパッケージ化を行います。

これによって紙に代わる新たな表現の場と、出版社の新たなビジネスモデルとを創出します。

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