昨年11月に公開された映画『走れ!T校バスケット部』のDVDが好評発売中だ。
原作は累計120万部突破、松崎洋のベストセラー『走れ!T校バスケット部』シリーズ。連戦連敗の弱小バスケ部が、最強チームとなって活躍する痛快青春小説だ。
幻冬舎plusでは、モテたくてバスケ部に入ったお調子者・牧園浩司(通称ゾノ)を演じた、劇団EXILE・佐藤寛太さんのインタビューを3回にわたってお届けする。
第2回は、自身も中学生のときにハマっていたという原作小説や、映画作りの現場の空気感、そして大切な仲間について――。
(撮影:岡村大輔/インタビュー&構成:藤原将子)
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──中学時代に原作を読んでいたということですが、きっかけはなんですか?
バスケをしていたおじが、「おもしろいよ」って教えてくれました。うちの学校には「10分間読書」の時間があって、この原作を持っていって読んだら、すごくハマりました! バスケ部の女の子にもすすめられました。
──けっこう周りの友達も読んでいたとか。
野球部で読んでるのは僕だけでしたけど(笑)、バスケ部のみんなはけっこう知ってたんじゃないかなあ。
……いまパラパラ読んでて思い出しました。僕、「週刊少年ジャンプ」とか、少年マンガが大好きなんですよ! で、この『走れ!T校バスケット部』も、少年が焚きつけられるような展開というか――みんなわりと凡人っぽいけど、非凡なことをするじゃないですか。「もしかしたら自分にもこういう一面もあるのかな」って思わせてくれるところが好きで、ハマりました。ファンタジーすぎないところに夢が見られて、読みながらすごく楽しかったです。わかりやすいですよね、文章が。心にスッと入ってきて、想像しやすい。
『MAJOR』の茂野吾郎は天才すぎるけど、ああじゃなくても、天才がひとりいれば、チームってうまくいくじゃないですか。そういう感じで「自分のよさを見つけたい」っていう気持ちはありましたね。
──佐藤さんにとって、「T校」シリーズの一番のおもしろさはどんなところですか?
チームメイトの仲の良さかもしれない。うらやましいなと思ったのが、部活帰りにチビのお寿司屋さんにみんなで寄ること! そういうのは学校で禁止されてたんですよ。
僕も、放課後も一緒にいるのは野球部の友達でしたけど、休みの日にまで野球の話は絶対しなかったから……。試合で負けたらやっぱり悔しいし、本気になる瞬間はもちろんありました。でも、その本気の瞬間をずっと持続して、誇りを持ってやれているT校のみんながかっこよくて、うらやましかった。自分たちの野球部では、「俺たち一生懸命やってる!」って言うのがちょっと気恥ずかしかったんですよね。
──ところで、映画で演じたのは原作でいうところの「のぞき魔」(ゾノ)でしたが(笑)、この役で出演のオファーを受けたときの心境は?
「こういう役はやったことないな」と思ってお受けしたんですけど、台本が何回も何回も変わっていったんですよ。最終的にはああいったキャラクターになりました(笑)。モテたくてひとりだけ茶髪にしてるし。最初はもっと、(原作のように)よくいる男子高校生みたいな変態じみたキャラクターで、それはそれで面白そうでしたが(笑)。
──原作では全編をとおして、いじめの問題が大きなテーマになっています。
とくに中学生のときって、体格差があらわれる時期なので、体の大きさがほとんどそのまま交友関係において上下として出やすい気がする。僕は体も大きいし運動部にも入ってたからそんなことはなかったんですけど、もし自分がちっちゃくて運動部にも所属していなかったら、性格も変わってたかもしれません。
ただ、間違いなく大人になったほうが生きやすいです。自分の好きな人と一緒にいればいいじゃないですか。学校だとそういうわけにいかない。仕事場とか、中学校とか高校とか、そういう場所は人を選んでいられないから。でも、それぞれの事情は言葉にするよりもっと複雑で、数の分だけ、全部形が違うと思うので、周りの人が善悪を判断できない場合、してはいけない場合もあると思う。本当に難しい問題です。
自分が仕事を続けることでそういう子たちを元気づけたり、打開策を見出せたり、考えさせることができれば幸せです。
──佐藤さんは9年間野球をやっていたそうですが、バスケや野球などのチームスポーツの魅力は、どこにあると感じますか?
自分もやっていたので、チームスポーツは単体じゃできない良さがあるなと思います。
作品作りもそうなのかなと思うんです。映画を作るのも、俳優部がいて、照明部やカメラマンさん、メイクさん、衣装さんがいて、いろんな人たちが連携して作っています。俳優だけとか、監督だけじゃない。画面には映っていないけど、見えないところでいろんな人が作品を支えている。そういうところで、この仕事はチームスポーツにもつながるのかなあ。野球をやっていてよかったなと思います。
――社会人になってからも、当時の経験が生きている。
そうですね。そうか、社会人なのか……(笑)。
──佐藤さん自身には、T校のメンバーみたいに「仲間」と言えるような存在はいますか?
部活って最後の大会や試合があるじゃないですか。この(俳優という)職業も、毎回そんな気がするんですよね。集中して、みんなで一緒に作っていく感覚。毎回出会いがあって、別れがあるから、そういうときに「野球部の中総体みたいだな」って思うことはあります。この作品(映画『T校』)はまさにそういう感じで、みんなで一生懸命、作品に愛を持ってやっていました。
もちろん、撮影が終わってその作品が終わりというわけではなくて、ちゃんと公開してみなさんに届けるところまでが役者の仕事ではあるのですが、「撮影」っていうひと区切りがついたときに、「一緒に作ってきた仲間だな」っていう気持ちはありました。チーム感が強かった。そういう現場で出会った俳優さんとは、すごく仲良くなります。
──それは監督さんの影響も大きい?
大きいと思います。監督さんも、僕らがふだんからしゃべっているところを、「カメラを回してみようか」っていうニュアンスで撮ってくれて。「セリフもあるし、そのシーンの目的はもちろんあるけど、言い回しとかは個人に任せるし、みんなが作ってくれた空気感を俺は素直に撮りたい」って言ってくれたので、それはすごく大きいと思います。
それに、周りの環境もすごくよかったです。スタッフさんがすごくよくしてくれたし、僕らの自由度を、いい意味でまとめてくれた。本当に青春だなって思いました。自分たちが一生懸命やった作品は、そんなふうに思うんですよね。撮影が終わってからも、「ちょっとスタッフさんとしゃべって帰りたいな」って思う現場がいい。そういう現場のほうが作品に思い入れがあるし、培えるものが大きいと思います。
俳優だけの力じゃないところって、絶対あるんですよ。絶対! そういう空気感は、画面にも出ますね。たとえば新人の俳優さんでも、みんなが支えていれば急に素晴らしいお芝居をしたりする。それって環境だなとすごく思いました。
──『T校』のストーリーでも、小山先生をはじめ裏で支えてくれる人たちがいるからこそ、みんなが一致団結して強くなれるというところがあります。それが現場の空気感に影響したのかもしれませんね。
今回の現場では、(小山先生役の)YOUさんがすごく支えてくれたって思っているんです。大人がひとりだけだったので。(志尊)淳くんも大人ですけど、若い役をやってると、気持ちも若くなるじゃないですか。そういう僕らを、ずっと見守ってくれてて。話しかけやすいし、いつも輪のなかにいてくれて、すごく居心地がよかったですね。僕らが気を遣うとかじゃなく、本当に学校の先生みたいな感じでした。年上だし、大人なんだけど、ちゃんとリスペクトがあり、いい空気感で現場を過ごすことができました。
(最終回へつづく)