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古典にすべてが書かれている。

2019.07.05 公開 ポスト

考え続けた人だけが勝利する『戦争論』の真髄坂口孝則

◎今回取り上げる古典:『戦争論』(クラウゼヴィッツ)
 

 

成功の説明はすべて後付けにすぎない

1990年代、シスコシテムズは驚異の成長をとげた。もともと地下室をオフィスにしたスタートアップだった。彼らは積極的なM&Aを重ね、市場を席巻することに成功した。社員は楽しみながら働き、そして、顧客の声に耳を傾ける。関連企業も支配することによりシナジー効果を生み出す。

自社でなんでもやるのではなく、必要な機能は企業を買収すればいい。そのような潮流もシスコへの称賛を増やしていた。しかし、2000年代に入ると、株価は大きく下落し、そして従業員のリストラクチャリングを実施するにいたった。

2019年の現在、シスコの株価は、絶頂期のそれにまでは至らないものの、復活している。批判はあれども、立派な経営状態にある。

私が興味深いのは、2000年代はじめの不調は、それまでシスコシテムズの強みと思われていた観点から語られていたことだ。つまり、顧客とのコミュニケーションがさほどうまくいっていなかった。取引先との情報共有も不十分だった。企業文化にも問題があった。買収企業の選定に、さほど合理性がなかった――などだ(なお、これらの過程はフィル・ローゼンツワイグ『なぜビジネス書は間違うのか』に詳しい)。

考えてみるに、好調企業を説明するに、「社員が楽しそうに働いている」「顧客中心」「関連企業とのシナジー」とさえいっておけば、ほぼすべてにあてはまるだろう。固有名詞は出さないものの、日本の某社も好調時にはそう説明されていた。

しかし、おなじく不調企業も説明できるだろう。「社内は不穏な空気」「顧客の真のニーズをつかめていない」「自社の強みを活かせていない」、など、裏返すだけだ。不調企業なのに、社員は楽しそうに働いていることはありうる。顧客中心でも、利益があがらないことはありうる。

私は常々「日本では大衆の手のひら返しがもっとも恐い」といっている。しかし、それは日本だけではない。成功したら、その戦略はすべて正しいとされ、さらに、失敗したら、その戦略はすべて間違っているとされる。その意味で、日本マクドナルド創出者の藤田田さんがいう「勝てば官軍」は正しい。

おなじ企業であっても、感想が好意的にも、悪意的にもなる。

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坂口孝則

1978年生まれ。調達・購買コンサルタント、未来調達研究所株式会社所属、講演家。大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』(小社刊)、『製造業の現場バイヤーが教える調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。

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