ところで、房野史典さんの『超現代語訳 戦国時代』『超現代語訳 幕末物語』という話題の本をご存知でしょうか? 歴史大好き芸人の房野さんが、戦国と幕末の歴史をめちゃくちゃわかりやすく&面白く書いた本。この連載「落語 DE 古事記」の著者である落語家の桂竹千代さんも、「超現代語訳」に感動したひとり。
ということで、「落語 DE 古事記」は、そのシリーズにハマった方にもおすすめなのです。
だって、歴史に興味を持ったあなたは、もっと昔の歴史も知りたいですよね。
「古事記」というのは、昔も昔……。もう、人間じゃないです。神様の話です。
史料の残っている時代の話ではないので、読めば読むほどびっくりだらけ!
歴史って…本当に面白い!!!
第2話をどうぞ!
* * *
第2話「島生んじゃったよ!」
「天地(あめつち)の初発(はじめ)の時、高天原(たかまがはら)に成りませぬ御神(みかみ)の御名(みな)は、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、次に高御産巣日神(タカミムスビノカミ)、次に神産巣日神(カミムスビノカミ)」
これが『古事記』の冒頭です。
……すでについて来れない……という方はいませんか?
これは「天地が現れた時に、高天原というところに〇〇と△△と××の神が誕生した」ということです。
ボクも初めて読んだときビックリしました。天地が現れた途端に、いきなり神がいるんですから。しかも長い名前の。
突然過ぎて面食らいますよね。ゴング直後にストレートもらったみたいですよね(我ながらいいたとえだよね)。
いかにも乱暴な出だしですが、ここはひとつ、大人になって飲み込んでください。
この3柱の神が、まずは存在したのです。
はい! 早速、神様用語が出ました! 神様は1人、2人ではなく1柱、2柱と数えます。
この3柱の神が、高天原にいました。
高天原というのは神々の住んでいるところで、天地の「天」の部分です。カミは「神」であり「上」なので、やっぱりお空の上のイメージですよね(ドリフの雷様のイメージ)。
この3柱の神を「造化三神(ぞうかさんしん)」なんて言います。
ちなみにこの造化三神には男女の性別がありません(オカマでもないよ)。アメーバのように分裂したのかどうかは分かりませんが、また、性別のない神が2柱の神が生まれます(これも突然)。以上の5柱の神を、合わせてゴレンジャー! ではなく「別天津神(ことあまつかみ)」と言います(ゴッドファイブの方がカッコいいけどね)。
そしてこの5柱の神、特に何をするというわけでもなく消えます。
……はい、消えます。
「一番初めに生まれたから一番偉い神じゃないの!?」
……はい、当然の疑問だとは思いますが……消えます。
「一番初めに生まれたから一番活躍するんじゃないの!?」
……これ以上聞くと、ボクが消えます。
『古事記』にそう書いてあるんです。現れたと思ったらすぐ消えてしまうんです。そして、その先を読み進んでいっても、ほぼ出てきません。
しかし、この神々が祀られている神社ももちろんあります。
福島県の相馬市にある相馬中村神社や、埼玉県秩父市にある秩父神社がそれです。
この神様たちは、超自然的というか、無限の宇宙を表すイメージなので、心願成就や延命長寿にご利益があるとされています。
さて、このとき、大地は未だクラゲのように漂っていて区別がありません。
そしてまた、2柱の無性別の神が生まれます。この神々も後に出てこないので省略します(何故かゴレンジャーに漏れたベンチ組)。
そして、いよいよ男女の神々が誕生します。
5組のカップルが順番に生まれます。この最後にできたカップルが有名な
「伊邪那岐命イザナギノミコト。男。以下イザナギ)」
と
「伊邪那美命(イザナミノミコト。女。以下イザナミ」
日本版アダムとイブです。この2柱の神は、覚えてください。日本神話の大看板です。
ちなみに、この場面で生まれた5組(カップルは2柱で「1代」と捉えるよ)と、その前に生まれた無性別の2柱の神々を合わせて「神世七代(かみよしちだい)」と言います。
このイザナギとイザナミは天浮橋(あめのうきはし)に立ちます。天上世界にかかっている橋で、ここから地上を見下ろせるんですね。この橋の上から、大きな矛(ほこ)をブスっと海に突き刺さし、「こおろこおろ(ホントに書いてあるよ)」とかき回し(水割り作るように。ソーダ割りはあんまり混ぜない方がいいらしいね!)、サッと矛を取り出します。すると、矛の先から海水が滴り落ち、塩が固まって島となりました。
これを淤能碁呂(おのごろ)島と言います。
ちなみにヨネスケ師匠の本名は小野五六(オノゴロウ)。
そんなわけで、おのごろ島はしゃもじの形をした島です(ごめんなさい、ウソです)。
イザナギ&イザナミはこの島へ降り立ち、晩御飯を食べ……(晩御飯を食べたというのは想像ですよ)、日本列島を作っていくのですが、これを「国生み」と言います。
さて、このコンビがどのようにしてが日本列島を生むのか!?
ここから皆さん、一番お待ちかねのエロとなりますが……
ちょうど私の持ち時間がいっぱいです……これから話の佳境に入るって時に終わっちゃう寄席の講釈師か! ということで続けます。
イザナミ「ねえ。アタシのカラダ、1箇所足りないとこあるんだけど?」
イザナギ「ボクのカラダは1箇所余ってるところがあるね」
大人の皆さん。何となくイミわかりますよね?
イザナギ「よし、これ合わせてみようか!」
イザナミ「いいわね!」
イザナギ「じゃあこの天之御柱(あめのみはしら。太くて大きい柱と思ってください)をお互い、逆から回って出会ったところで合わせよう!」
……どんな演出?
イザナギは左から、イザナミは右からくるりと回る!
イザナミ「あなた何てイケメンなの!」
イザナギ「キミこそ何てべっぴん(死語)なのだろう!」
合体(©︎釣りバカ日誌)。
こうしてハマちゃんとみっちゃんは……いやイザナギとイザナミは夫婦となり、愛し合います。
すると誕生したのが、水蛭子(ヒルコ)という子供。この子が手足のない未熟児だったので、葦(あし)で作った船に乗せて海に流します(育児放棄。何て残酷なのでしょう)。
次に生まれた淡島(アワシマ)という子供も同じだったので、流します(この世には神も仏もいないのか。いやアンタ神だろ)。
どうしてこんなことが続くのか、イザナギ&イザナミが高天原に戻って原因を探ると……、
おせっかいな神「そらオメェ、男女は男から声かけるもんだっぺ!(竹千代の生まれた千葉県旭市の方言で失礼します)」
そこで、言われた通り、イザナギからイザナミに声をかけることにしました。
では……アクション!!
イザナギ「キミは何て美しいんだ(もう飽きてきたな)」
イザナミ「あなたこそ何てイケメンなの(もうめんどくせ)」
合体!
……すると誕生したのが淡路島!!
でかー!!
ってか、子作りしてると思ったら島生まれちゃったよ!
これが神なのです。我々の想像を超えてきます。
さあ長男の淡路島を筆頭に(ヒルコとアワシマを入れるとホントは3男。島の性別はわからないけど)、イザナギ&イザナミはどんどん島を生んでいく!
長男(シマとして長男とします):淡路島
次男:四国
三男:隠岐諸島
4男:九州
5男:壱岐島
6男:対馬
7男:佐渡島
8男:本州
俺たち8島合わせて、日本列島です!! ……いや全然足りてない! 北海道や沖縄はまだないにしても、日本の島の数って海岸線の長さが100m以上のもので約7000もあるらしいですからね。人が住んでいる島でも400もあるんだって! とにかく足りない!
でも、とりあえずここで出来た8島を、総じて「大八島国(おおやしまのくに)」と言います。
ちなみに淡路島がいちばんはじめに誕生したことから、おのごろ島は現在の淡路島付近にある「絵島(えしま。無人島。面積1153㎡)」か「沼島(ぬしま。有人島。人口約500人。面積2.71㎢)」がモデルじゃないかと言われています。この沼島へは淡路島からフェリーで行くことができ、そこには天御柱のモデルとなる上立神岩(かみたてがみいわ)という奇岩もあります。さらに、イザナギ&イザナミが海に矛を突き刺してかき回すシーンは、淡路島と徳島の間にある、鳴門海峡の「渦潮」をイメージしてるのではないかとも言われます。ーー以上、豆知識でした。
話を戻して。またその後に、香川県小豆島や長崎県の五島列島などの島々を生み、日本列島が出来上がります(まだ足りないけどね!)。
さらにその次に、色んな神を生んでいきます。水の神、風の神、山の神、木の神、トイレの紙(これは生んでないよ!)……。
ざっと33柱の神々を生んで(ここが一番神の羅列多いとこね! 神様版寿限無だ!)、最後に火の神「迦具土(カグヅチ)」を生みます。
カグちゃんは、火の神だから燃えています。
奥さんのイザナミは、何と自分が生んだ息子の炎で大火傷してしまいます(よく生めたよね!)。
苦しむイザナミが吐いたゲロ、糞や尿からも、神々が誕生します(やっぱりトイレの紙必要だったね!)。
例えば、ゲロからは金山彦神(カナヤマビコノカミ。鉱山・金の神。ご利益はズバリ金運アップ!)。
糞からは埴山姫神(ハニヤマヒメノカミ。土の神。土木・造園関係の方、足元固めたい方にご利益!)。
尿からは水波能売神(ミズハノメノカミ。水の神。雨を降らせたり、晴れさせたりできる!)。こうして6柱の神々が生まれます。
でもイザナミは死んでしまいます。奥さんを失った夫のイザナギは、それはそれは悲しみます。
イザナギ「うおおーーん!! 愛する妻よー!」
そのイザナギの涙からも神が生まれます(なんか悲しい神だね)。
イザナギは、イザナミを比婆之山(ひばのやま。広島県と島根県に同じ名前の山があるよ!)に葬ります。
しかし悲しみが増すばかりのイザナギは、最愛の妻を焼き殺した我が息子のカグヅチを、剣でズバッ……!!
カグヅチ「ギャー! おれってば勝手に燃えてるだけなのに……アツい男なだけなのに! 松岡修造なだけなのに! ……不可抗力なのにぃー!」
このカグヅチを切った剣や血、体からも神々が生まれます。死んだカグヅチそのものからも神々が生まれます。このシーンだけでも16柱の神々が生まれます。まだ上巻始まって1割くらいだけど、この時点で既に80くらいの神の名が出てきてます(まるで神様の確変フィーバー)。このシーンで生まれて後にも出てくるのは、建御雷神(タケミカヅチノミコト。以下タケミカヅチ)くらいです。この神は、まだ結構先の話だけど主要な役者ですよ。
イザナギ「うおーーん! 妻に会いたーーい!」
そして、イザナギは、死んだイザナミを黄泉の国へと迎えに行きます。
「あの世の世界」を描いた「黄泉国訪問譚」の幕開き。
ちゃかちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん♪(陽気なお囃子合わねーって!)
落語DE古事記
神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね!
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