2月27日朝。大勝負に臨む木村一基王位の顔は、思いのほか穏やかだった。
「将棋界の一番長い日」と呼ばれるA級順位戦最終局。静岡の料亭「浮月楼」の2階和室で、木村と広瀬章人八段が駒を並べていた。木村は敗れると、B級1組への陥落が決まる。集中している様子はうかがえるものの、ピリピリした空気は感じられない。
1月の8回戦の時は、そうではなかった。相手は、共に残留を争う羽生善治九段。木村は口を真一文字に結んで眉を少しつり上げ、2手目の△8四歩を指した。気合がみなぎっていた。
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