「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。
コロナウイルスの影響でたくさんの商業施設が休館となり、在宅勤務に切り替わり、1日のほとんどを自宅で過ごす人が増えている中、おうち時間の過ごし方を改めて振り返っている方も多いのではないでしょうか。
本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。
未曽有の状況の中、不安や焦りを抱える毎日ですが、本書で少しでもリモートワークがやりやすくなったり、自宅時間を発見のあるものにして頂けたら幸いです。
昼食は365日同じ、お気に入りの組み合わせで
朝、書斎に入ってまずは、自身のホームページを更新します。その次に、今の私にとっていちばん大事にしたいエッセイなどの原稿の執筆を。1本書いたら、その次には雑誌などの原稿を。なるべくアポ取りやメールの返信などの雑務は入れず、午前中はひたすら「書く」ことに集中します。
11時ぐらいになると、さすがに疲れたり、飽きてきたりして、だんだん集中力がなくなってきます。そしてお腹がクウと鳴ります。そこでもうひと頑張り! 12時になると、「よし!」とキッチンに向かい、昼食の準備を始めます。つまり、私にとって昼食は午前中の仕事の「おしまい」であり「ゴール」でもあるのです。「大好きなバタートーストを食べるまでに、これを終わらせよう!」と思いながらガンバルというわけです。
キッチンに立つと、まずは直径18センチのミニオーバル鍋に野菜と鶏肉と塩麴、カップ1杯の水を入れて火にかけます。この間に冷凍しておいたパンを解凍しトースターへ。バターやジャム、コンポートやヨーグルトを食卓に運び、紅茶を入れます。準備が整う頃、野菜スープが完成! こうして、大好きなものばかりをそろえたスペシャルランチが始まります。365日この同じ組み合わせでOK。1日の中で、この昼食時がいちばん幸せかもしれません。
この昼食を境に少し仕事のペースを緩めます。食べ終わった後は、眠くなるのでソファで昼寝をすることも。そのあと掃除に取り掛かったり、アポイントを入れたり、取材の準備をしたり。午前と午後で仕事のモードを変える……。これは、私が自然に習得した仕事の配分です。
かつては「気になる仕事」から手をつけていました。このアポを早く入れなくちゃ。この企画書を早く出さなくちゃ。その日起きて、思いついた仕事を思いつくままにこなしていくと、つい「本当は大事なのに、緊急ではない」仕事が後回しになります。エッセイなどの執筆は、締め切りが1か月、2か月先だったりします。そうすると、つい後回しにしてしまう……。でも、私にとってそれはいちばん大事にすべき仕事なのです。
「やるべきこと」ではなく「やりたいこと」を優先して仕事をする
目の前にやってくる「やるべきこと」だけに追われていると、本当に「やりたいこと」が見えなくなってしまいます。でも、そのモードチェンジをすることはなかなか難しい……。なぜなら「やりたいこと」は、誰にも強制されず、誰にも評価されず、やらなくても、誰にも文句を言われないから。
まず「やりたいこと」から手をつけるのは、とても勇気がいることだと思うのです。仕事のノルマ、いい母、いい妻だと言われるための掃除や洗濯……。そんな自身の評価をアップさせるであろう「やるべきこと」を手放して、心から「やりたい」と思うことだけに正直になるには、強さが必要です。すべての時間を費やすのは無理だとしても、「ここからここまで」と決めた時間だけ、「やりたいこと」を優先してみる。それは、自分の人生のハンドルを自分で握るためにとても大切なプロセスなのだと思います。
毎日は「やらなくてはいけないこと」で溢れています。何が大事かさえ、「あそこに間に合わせるため」「あの人に怒られないため」と、自分の外側へ選択の基準を預けがちです。私も、仕事に追いかけられ、焦ったりイライラしたりして「やるべきこと」にのっとられることもしょっちゅう。
そんな日々の中で、時間を区切り「ここまではコレをする」と決めてしまうことはなかなか有効。時間という枠組みの中に「いちばん大事なもの」を入れて守る。その先にご褒美のように輝いているのが、私のランチタイムなのかもしれません。
暮らしの中に終わりと始まりをつくる
『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。
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