日本人の新型コロナウイルスの感染者数と死亡数は、欧米に比べてなぜ少なかったのか。今後、「夜の街」問題はどうするのか。ファクターXは何なのか。予防に手落ちはないか? 抗がん剤の世界的権威にして細菌学・ウイルス学のエキスパートが、私見を含め、最新の疑問に答える。
* * *
コロナもインフルエンザも呼吸器感染症と考えられていますが、メディアも専門家会議も手洗いの重要性については力説していても、うがいの重要性は、その十分の一も語っていません。
これらのウイルスの侵入・感染経路は、空中 → 口腔・鼻腔・口蓋 → 気道(気管支)→ 肺と移ると考えられますが、その第一関門の口腔・鼻腔・口蓋のうがいは、手洗いに劣らず重要と考えられます。
前項で記した家ダニ(house dust mite)プロテアーゼもそこに付着し、感染性の増強に加担しています。このウイルスは何れにしろ、鼻腔・口腔から上気道(気管支)に入るわけで、そこに吸着したウイルスはうがいによる洗浄除去が第一といえますが。
一般に日本では冬場は空気が乾燥し、ウイルスだけでなく家ダニのプロテアーゼも軽くなり、空中を浮遊飛散しやすくなります。随分以前に、仙台の小児科(細菌学)の庄司真先生が、年間を通してインフルエンザの新患者数と湿度をグラフにプロットすると、乾燥度が高くなるほど(絶対温度が低くなるほど)、インフルエンザの新患者が増えると報告しています(文献12,13)。
今日では夏も冬もエアコンを使用するので、室内の空気は夏でも乾燥しています。インフルエンザが夏季にもよくみられるようになったのは、このためでしょう。そこで、ウイルス感染の予防のためにも、夏であっても加湿することをお勧めします。
加湿といえば、マスクの効能は飛沫感染の防御だけでなく、口腔・気道・口蓋を湿潤にし、気道(気管支)粘膜上の粘液の粘度をゆるくし、気道にある繊毛細胞が細菌やウイルス、さらに粉塵などの異物排除のため、波をうって効率よく排除し、感染を防ぐことにもなるのです。
<引用文献>
12. 庄司真, 気象と感染症流行の創刊に関する研究(第2報)インフルエンザ流行の拡大因子は気温か、湿度か、その他か, 抗酸菌病研究所雑誌(0910-6073)40巻2号, 95-106 (1988.10)
13. 庄司真, 気象と感染症流行の創刊に関する研究(第3報)平均気温による感染症流行予測―試案, 仙台市衛生試験所報(0387-9771)14号, 117-120 (1985.10)
<今後の公開予定記事>
第11回 収束が見えないなか、「抗体価検査」と「交差免疫」への期待
第12回 コロナCOVID-19のワクチンはあまり期待できない
第13回 スペイン風邪のような悪夢は来ない
第14回 ウイルス感染と発症:不顕性感染、潜伏感染とPCR検査
〈参考文献〉
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•堀江重郎「ヤル気が出る! 最強の男性医療」、文春新書、pp. 1-207(2013)
•堀江重郎「対談集 いのち 人はいかに生きるか」、かまくら春秋社(2018)
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•奥野修司 2020年3月19日、3月26日号 週刊新潮 •『トマトとイタリア人』内田洋子 シルヴィオ・ピエールサンティ 文藝春秋
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