「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。ところが怒りや不安といったネガティブな感情や、自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でも「バカな判断」をすることがあります。そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないコツを教えてくれるのが、精神科医・和田秀樹さんの『感情バカ』です。その中でも、私たちがとくに陥りやすい感情をご紹介しましょう。
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なぜあの人は「感情的」なのか?
怒りの感情だけでなく、他の様々な感情のコントロールが悪いときも、人間は誤った判断をしたり、暴走したりしがちです。それらをひっくるめて、感情的にならないためにはどうすればよいのか。その方法論については後の章でお話しします。
その前に、感情的ということを、最近の科学ではどう説明しているか、ちょっと見てみましょう。
現在の脳科学では、感情は基本的に、大脳辺縁系、特に扁桃体というところでつくられるとされています。つまり、私たちの怒り、喜び、悲しみ、恐れなどは、大脳辺縁系と密接に関係しているというわけです。
ここで、人間の脳の構造を簡単におさらいしてみましょう。
上の図のように、私たちの脳(大脳)は、大きく分けると「大脳皮質」「大脳辺縁系」「脳幹」という三つの部位で成り立っていて、それぞれに役割があります。
外側の大脳皮質(新皮質)は、思考や判断、言語機能など、精神活動の中心的な働きを司っています。
その内側にある大脳辺縁系は、記憶と、今述べたように感情に関することを司っています。
脳と脊髄を結ぶ脳幹は、生命維持に関することを司っています。
たとえば、怒りが大脳辺縁系で生じると、交感神経を刺激したり、あるいは体のいろいろなところに命令が行って、表情をつくったり、怒鳴りつけたりといった行動になります。
怒鳴りつけるとは、怒りという感情を言語として表すわけですから、言語を司る大脳皮質も絡んできます。
「大脳辺縁系」をいかに制御するか
ところが、大脳皮質とは、これまでの経験をもとにして感情の暴走を止め、理性的な行動を取らせようとする、つまり感情の行動化にブレーキをかけてくれる部位ともされています。
ということは、感情的であるとは、大脳辺縁系でつくられる感情のテンションが高い状態だけを言うのではありません。感情のテンションがそれほど高くなくても、大脳皮質のブレーキがあまり利いていない状態も、感情的になっていると言えるわけです。
それとは反対に、感情のテンションが高くても、大脳皮質のブレーキの性能が良ければ、そこで制御が利くので、怒鳴るという行為にまでは至らないということになります。
先ほど例に挙げた豊田真由子氏の場合は、もともと感情のテンションが高い人なのかもしれませんが、大勢の人がいるところなどでは、おそらく大脳皮質を必死に働かせて、ブレーキをかけていたのでしょう。それが、目下の相手と二人きりになったことで、ブレーキがすっかり緩んでしまい、あのような言動に至ったのではないかと思います。
つまり、脳科学の立場で見れば、感情的な人とは、感情のテンションが高い人だけでなく、大脳皮質による感情のブレーキがうまく働かない人も含むと考えることができるわけです。
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この続きは幻冬舎新書『感情バカ』でお楽しみください。
感情バカ
「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。ところが怒りや不安といったネガティブな感情や、自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でも「バカな判断」をすることがあります。そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないコツを教えてくれるのが、精神科医・和田秀樹さんの『感情バカ』です。その中でも、私たちがとくに陥りやすい感情をご紹介しましょう。