テレワークの普及で悩まされる方が増えてきたのが腰痛。「8割は原因不明」といわれますが、スタッフと共に100万人以上もの患者さんを診てきた酒井慎太郎さんは「問診をして情報を事細かく聞き出していけば、必ず『痛みの原因』にたどり着きます」と断言します。
酒井さんが従来の腰痛治療の常識を超えた「新しいルール」を開陳する『つらい痛みが1日3分でスーッと消える 新しい腰痛の教科書』より、腰痛に関する基礎知識や対処方法の一部をご紹介します。
正座は0.8倍、イスに座って前かがみは1.85倍
腰痛のストーリーは、椎間板の消耗からスタートします。
椎間板は、使えば使うほど疲弊が進む「消耗品」のような存在です。もともとはやわらかく弾力性に富んだ組織なのですが、日々酷使されていると、だんだん弾力が失われて消耗していくのです。しかも、普段から悪い姿勢をとっていると、より大きな荷重プレッシャーがのしかかるため、その消耗がいっそう早く進みがちになります。
下図は、腰の椎間板にかかる重圧が姿勢によってどれくらい変わるかを示したもの。(1)のようにきれいな姿勢でまっすぐ立っているときの椎間板への負担を1.0倍としましょう。ところが、(2)のようにお辞儀の姿勢をとると、それだけで負担が1.4~1.5倍になります。頭や上体が前に出ると、そのとたん、重圧がどっと跳ね上がるのです。
(4)のように体を丸めた姿勢で座っているときは、なんと1.85倍。デスクワークなどで毎日長時間こういう姿勢をとっていたらどうなるでしょう。つまり、腰の椎間板はこうした悪い姿勢習慣によって日々疲弊し、弾力性を失って消耗していってしまうわけです。
腰痛になりたくないなら「後ろ重心」の5つのコツをつかめ!
腰痛にならないために、普段からどんな姿勢をとるべきなのか。その答えが「後ろ重心」の姿勢です。
私は、腰痛の患者さんによく姿勢の指導をするのですが、「後ろ重心の立ち方」を試してもらうと、それだけで“あれっ、痛くない!”と驚く方が少なくありません。重心を後ろ寄りにシフトするだけで、腰椎にかかる圧が緩和して痛みが軽減することもめずらしくないのです。
守るべきポイントは5つ。では、その立ち方のコツをご紹介しましょう。
(1)あごをしっかり引く
人の頭は非常に重いので、前へ傾くことのないように、常に背骨という「柱」の真上にセットしておかなくてはなりません。ただ、背骨がついているのは体のいちばん後ろ側。だから、頭を背骨の真上にセットするには、しっかりあごを引いて、頭をできるだけ後ろにシフトしなくてはならないのです。
(2)両肩を引いて胸を張る
両肩を後ろへ引くことも大切。左右の肩甲骨を背中の中央へくっつけるような要領で肩を開くと、自然に上体が後ろへ反って胸を張った姿勢になります。
(3)腰を反らせる
腰は反らし気味でキープしてください。へその下やお尻の穴を軽く締めると、腹筋に力が入り、自然に腰を反らせることができます。
(4)ひざをまっすぐ伸ばす
前傾姿勢をとりがちな人は、ひざを曲げる姿勢のクセがついていることが多いもの。ひざはまっすぐ伸ばして立つようにしましょう。
(5)体重の7割方を体の後ろ側にかける
背骨にしっかり体重を載せるには、「前3割、後ろ7割」のバランスで後ろ寄りに体重をかけて立つのがおすすめ。「後ろ7割」だと、“後ろすぎて倒れちゃいそう”と思うかもしれませんが、“後ろすぎる”と感じるくらいがじつはちょうどいいのです。最初は戸惑うかもしれませんが、「後ろ7割」に慣れてくれば、そのほうが腰も安定し、各関節がスムーズに回って体をラクに動かせることに気づくはずです。
* * *
編集部注:腰痛には重篤な病気が隠れている場合や重症化する場合があります。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
より詳しい腰痛のメカニズムや腰痛を治すためのストレッチ、体操については書籍『つらい痛みが1日3分でスーッと消える 新しい腰痛の教科書』をご覧ください。