わたしもあなたもたった“8つの要素”でできている。そして人間の選択や行動はすべて無意識によって決定される。脳科学や心理学の最新知見を使って解き明かした、この恐るべき「スピリチュアル理論」で、今度はあなた自身が「人生は変えられる」と気づく番だ——。 話題の新刊『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(橘玲著、幻冬舎)から、試し読みをお届けします。
* * *
わたしたちは「人生という舞台」で自分の物語を演じており、自尊心は演技の出来(観衆の評価)によって決まる。
仕事で成功したり素敵な恋人ができたりすれば自尊心は高まり、失業や失恋によって自尊心は下がる。だが、そのときの振れ幅(ソシオメーターの感度)には個人差がある。
わたしたちは「自尊心の高いひとは安定していて、自尊心の低いひとは不安定だ」と思っているが、自尊心の高/低と安定/不安定は相関していないらしい。そうなると、図17のような4つのタイプがあることになる(*14)。
このうち(1)は「自尊心が高く、かつ安定している」タイプで、「自己充実的達成動機が高い」とされる。他者との競争に勝ちたいという意欲が競争的達成動機で、「自分なりの基準で達成を求める」のが自己充実的達成動機だ。これは、ものごとに積極的に取り組んだり、競争の結果よりも自分自身の成長を目指すことにつながるとされる。
(3)は「自尊心が低く、かつ不安定」というもうひとつのステレオタイプで、これは強いコンプレックスにとらわれ、その結果、競争を避けたり成長をあきらめたりするかもしれない。
自尊心の高いひとがみな成長への強い意欲をもっているわけではない。「自尊心は高いけれど不安定」という(2)のタイプは、「他者からの批判的なフィードバックを受けたときに、相手を低く評価する」とか「誰かに助けを求めることに抵抗感を抱く」などの特徴がある。
このタイプは自我への脅威に対して脆弱で、そのため批判に対して過剰に反応したり、援助を受けることを自分の弱さだと考えたりする。ふだんは自信たっぷりに振る舞っていても、傷つきやすくすぐに逆切れしたり、トラブルが起きても自分で抱え込んで報告しない困ったひとは、あなたのまわりにもいるのではないだろうか。
自尊心が安定していればいいというわけでもない。それが(4)の「低い自尊心が安定している」タイプで、この場合は「他者からの批判的なフィードバックを受けたときに相手を高く(「低く」ではない)評価する」とされる。一貫して低い自尊心をもつこのひとたちは、権威者からの批判をそのまま受け入れ、盲従するのだ(これも会社にたくさんいるのではないだろうか)。
*14─脇本竜太郎『なぜ人は困った考えや行動にとらわれるのか? 存在脅威管理理論から読み解く人間と社会』ちとせプレス
スピリチュアルズ 「わたし」の謎
スピリチュアル=無意識+魂。脳科学や心理学、進化論の最新知見が、「わたし」や「人間」に対する理解を180度変えるー—。驚け、そして目覚めよ!