ゴシゴシこすってはいけない、いきなり水拭きをしてはいけない、フローリングのホコリに掃除機は禁物、ウイルスの除菌・消毒は正しくやらないと効果なし……。『病院清掃35年のプロが教える病気にならない掃除術』は、これまでの掃除の常識がくつがえされる驚きの一冊。掃除はただ部屋をきれいにするだけでなく、自分と家族の健康をも左右する大切なもの。本書でぜひ、正しい知識を学んでください。
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これではウイルスは死なない
このコロナ禍で除菌をする機会が一気に増えました。みなさんも1日に何度も手指や普段触れる場所の除菌を行っていることでしょう。
シュッシュと除菌をするとやった感は得られますが、実際にどれほどの効果があるのでしょうか。病院清掃を例に見ていくことにしましょう。
病院の清掃では、まず最初に洗浄を行います。洗浄とは、手洗いとか洗い流すという意味です。
実際には水を使えるところばかりではないので、正しく拭くとか、汚れや菌やウイルスの量を減らしてあげるという作業が最初に来るわけです。
汚れや菌などの汚染物質の量を減らしたら次が消毒・除菌です。
普段の生活で見られるような「いきなりの消毒・除菌」はありません。消毒・除菌の前に必ず汚染物質を集める行為があり、次に集めたものを回収して減らし、はじめて消毒・除菌を行います。
病院清掃においていきなり消毒・除菌剤をシュッシュはありえないわけです。
それにはきちんとした理由があります。
消毒・除菌剤は、殺したいウイルスや細菌にきちんと接触してはじめて効果があります。汚染物質の量を減らさない状態でただ全体にワーッと噴霧したからといってウイルスや細菌がすべていなくなるわけではありません。
「1万個のウイルスがありますよ」という状態でシュッシュとやるのと、「100個しかいませんよ」という状態でシュッシュとやるのとでは、100個の方が消毒・除菌の効果は大きくなります。
だからまず汚染物質は集めて量を減らしましょうとなるのです。で、減らした状態で消毒・除菌を行う。こちらの方が何倍も消毒・除菌の効果があります。だから、いきなり消毒・除菌はしないわけです。
これは家庭でも同じで、食卓を消毒・除菌する前に必ず乾拭きをして汚れを取り除き、その上で消毒・除菌剤を吹きかけたり、除菌シートで拭いたりするようにしてください。いきなり消毒・除菌をしてしまうと、消毒・除菌の効果が減るだけではなく、小麦粉を塗り広げるようにテーブル全体に汚れを広げることになってしまいます。
ウイルスを拡散させてしまうことも
理由はもうひとつあります。ウイルスや細菌は単体で存在しているわけではなく、たいていは他の汚れと混在しています。ホコリと混ざり合っています。
そこにいきなり消毒・除菌をするとどうなるでしょう。
本当はウイルスだけをやっつけたいのに、他の汚れに消毒・除菌剤が阻まれ、きちんと当たってくれません。ところがみなさんそれを知らずに、いきなりシュシュシュシュとアルコールを吹き付けて一気にやってしまいます。これですと、スプレーの風圧でテーブルの上のウイルスを四方に拡散させてしまうリスクもあります。
「それって本当に効果あるのですか?」と聞かれたら、「まったくない」とはいえませんが、「効果的ですか?」と聞かれたらそれはもう間違いなく「ノー」となります。
このようにある作業をひとつひとつ分解して考えてみると、それぞれの過程で何をしていいのか、何をしてはいけないのかが見えてきます。
やってもいいことと悪いことがわかれば、どのように進めていくのが一番よいのかがわかります。
なんとなくワーッとお掃除して、ワーッと集めて汚れがなくなると、やった感は得られます。しかし、その途中にはいろいろな問題が残っています。
何も考えずにワーッと一気呵成にやってしまえばよいというものではありません。そうしたことを何度もテストしたり、汚れを可視化したりしてきた中で、いまの病院の消毒・除菌の作業手順があります。
病気にならない掃除術
ゴシゴシこすってはいけない、いきなり水拭きをしてはいけない、フローリングのホコリに掃除機は禁物、ウイルスの除菌・消毒は正しくやらないと効果なし……。『病院清掃35年のプロが教える 病気にならない掃除術』は、これまでの掃除の常識がくつがえされる驚きの一冊。掃除はただ部屋をきれいにするだけでなく、自分と家族の健康をも左右する大切なもの。本書でぜひ、正しい知識を学んでください。