デートを重ねても毎回付き合うに至らない私には、何が足りないのか？宇多丸（ラッパー、ラジオパーソナリティ）／小林奈巳（女子部JAPAN）

ラッパー、ラジオパーソナリティとして縦横無尽に活躍し続けているライムスター・宇多丸さんの人生相談本『ライムスター宇多丸のお悩み相談室』がついに刊行です！女子部JAPANで長年続けてきた連載からぎゅっと厳選＆加筆修正してお届けする1冊。仕事や恋愛、人間関係のお悩みから女性差別まで、とことん考え答え続けた名回答の数々、ぜひお楽しみください！

＊　　　＊　　　＊

デートを重ねても毎回付き合うに至らない！　私には何が足りないの……？
（2016年5月21日）

私は独身実家暮らしのアラサー女子です。そろそろ家族や会社からの風当たりが強めになってきて結婚しようかな……と思い始めたところです。私はまったくモテないわけではないですが、モテるわけでもありません。男性から食事などにも誘ってもらえるのですが、デートを重ねても付き合うに至りません。理由がまったく思い当たらず、謎のままです。デートを重ねるだけで付き合わなかった人は何人いたことか……（向こうから誘ってきてくれての体の関係もありません）。私には何が足りないのでしょうか？（チャーシュー先輩・31歳・群馬県）

宇多丸   僕はまずやっぱり、大前提として、「家族や会社からの風当たり」なんてもんに屈して、人生最大級の重大な決断を慌ててしようとするってこと自体、ちょっとどうなのって気がしちゃいますけどね。

こばなみ  そこはまずありますね。それと気になるのは……、チャーシュー先輩はニックネームが秀逸ですよね！

宇多丸   なんでこの名前にしたのか知りたい（笑）。ともあれチャーシュー先輩、もうちょっと詳しく状況がわからないとなんとも言えない部分もあるけど、可能性としてひとつ考えられるのは、お互い「隙」ができる余地が、あまりにもなさすぎるようなデートの仕方をしてるんじゃないか、ということですね。いずれにしても、2人のうちどちらかが、どこかのタイミングで勇気を出して非日常的なアクションに出るリスクを取らなければ、性的な距離感なんてもんは永久に縮まるはずもないわけですよ。そして、「隙」があると、そういう決断をしやすい、させやすい。たとえば、デートにおけるアルコールというのは、その隙を意図的に生じさせるためのツールであるといっても過言じゃない。チャーシュー先輩、ひょっとしたらお酒飲めなかったりするんですかね？

こばなみ  私もチャーシュー先輩と同じようなことがあったので、気持ちはけっこうわかります。5回目のデートで相変わらず楽しかったんですけど、おつかれさまでした！！　……みたいなサッパリ感で、なかなか発展しないとか、ありますよ。私、ひとりでしゃべりすぎ、なのかな？

宇多丸   要は、どうも色っぽい空気になっていかないってことだよね。こばなみは酒飲んでもダメなの？

こばなみ  がんがん飲んでますよ～。あひゃひゃひゃ～、うっけるー！　って。

宇多丸   あひゃひゃひゃ～！？　まぁ、一般論でいえば、コミカルなムードが支配的ななかではラブラブモードに持っていきづらいのは間違いないよね。

こばなみ  でもですよ、そんな相手と何回も2人でご飯食べに行きます？

宇多丸   それこそ完全に「友達として」、安パイ認定されちゃった結果、とかも全然考えられるでしょ。なにしろあなた、「あひゃひゃひゃ～」ってノリなんだからさ（笑）。なんにしてもね、まともな男性ほど、性的に距離を詰めるということに関してはきわめて慎重になっていて当然なわけで。いくらデートの回数を重ねても、よほどわかりやすく脈アリ！　と確信できない限り、とりあえず引いておこう、って考える男の人、多いと思うんですよね。まして毎度「あひゃひゃひゃ～」とか言ってる人に、どのツラ下げて迫ればいいってのよ？（笑）

こばなみ  だからですよ！　あひゃひゃひゃ～ってやってたんだけど、6回目くらいに隙を見せてみたのですよ。酔っ払って店を出たところで、相手の袖を引っ張ってみたのです。酔っ払っちゃったなぁって。そうしたら手をつなぐことになり、エヘヘ。で、ちょいっとチューとかしてラッキー！　……だったのですが、後日、「きちんとお付き合いなどどうすか？」って聞いたら、「友達のままで」って言われた。ガックシ……。

宇多丸   ちょっと待て！「袖を引っ張る」って新技が有効なことはわかったんだから、その人と結局うまくいかなかったからって、全部ダメだったってことにしてリセットしちゃう必要もないんじゃない？

今後のデートでもガンガン袖引っ張りまくってけばいいだけじゃん（笑）。

ただ、文面からなんとなく、ちょ～っとだけ感じるのは、チャーシュー先輩、ホントはそんなに恋愛したくもないのかな？　って。チャーシュー先輩が見るからに温度低めだったりしたなら、相手だって「勝手にテンション上げるのは避けなきゃ！」って決意を固くするのは当たり前だと思いますよ。

こばなみ  チャーシュー先輩、ニックネーム面白すぎだし、私と同じタイプの「あひゃひゃひゃ～」なのかな。

宇多丸   ふざけながらだってスキンシップを多めに取ってくとか、手はいくらでもあるはずでしょ。男側もね、さしあたって「生理的に嫌われてるわけじゃないっぽい」ってことが確認できるだけでもだいぶ気がラクになるので。ベタ中のベタではあるけど、ボディタッチを積極的にしてくのとかって、やっぱり本当にムチャクチャ効果的ですよ。「◯◯さんって、いい匂いがしますよね」なんて言葉も、100％、相手を勘違いさせちゃうほどの必殺ワードだと思いますね。

こばなみ  なるほどね～。ちなみに私、振られるにあたり、何が悪かったのかなと思いながら歯医者に行きました。口が臭かったのかなぁと思って。

宇多丸   どんだけ厳しい反省の仕方してるんだよ！（笑） そんなことないから大丈夫だよ！！　そんなに気になるなら、いっそのこと彼に、「チューはしたのにお付き合いはダメだった件、よろしければ後学のために、その判断の理由、忌憚なきご意見をお聞かせくださいませんか？」って、真正面から聞いてみるといいかもしれない。

チャーシュー先輩もさ、今からでも相手に直接聞いてみたら、思いがけない真相が判明したりするかもしれないよ。実は向こうも、ホントはもっとお付き合いを深めたいと望んでいたのに、うまくそういう方向に持っていくことができず、「自分の何がいけなかったのか」と悩んでるとかさ。全然ありえない話じゃないと思うけどね。とにかくチャーシュー先輩もこばなみも、彼らとの関係で今さら失うものも別にないんだから、マジで「忌憚なき」作戦、やってみればいいじゃん！　それに、そこでしっかりこっちのことも考えて、親身に何か言ってくれるような人とは、恋愛はダメでも、なんかしら友情的なものが芽生えてゆくんじゃないかって気がするけど。

こばなみ  無視されたら……！？

宇多丸   それはもう、そこまでのヤツって思うしかないじゃん。そいつとは結局、なにをどうしようとうまくいくわけなかったんだよ。それがはっきりするのも収穫のうちって思えばいいよ。

＊　　　＊　　　＊

ライムスター宇多丸さんの人生相談本『ライムスター宇多丸のお悩み相談室』も併せてお楽しみください。