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ライムスター宇多丸のお悩み相談室

2022.09.02 公開 ポスト

男性から「隙がない」と言われることが多く、結婚に至りません。「隙がない」って何?宇多丸(ラッパー、ラジオパーソナリティ)/小林奈巳(女子部JAPAN)

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男性から「隙がない」と言われることが多く、どうしても結婚に至りません。「隙がない」って何?(2020年6月6日)

私の悩みは、男性から「隙がない」と言われることです。今年でアラフィフに突入する年齢になり、一度も結婚したことがない独身です。今まで男性とのお付き合いはあります。というか、中学3年生から今まで、彼氏がいなかったことがほぼないくらいに、男性とのご縁はあります。今もお付き合いしている方はいますが、どの方とも「結婚」までは至らないのです。長い方は4年ほどお付き合いをしました。先方のご両親とも仲良くさせていただいたりもしたんですが、やはり、どうしても、「結婚」には至りませんでした。別れを切り出されたことも、切り出したこともあるんですが、必ずといっていいほど「隙がない」と言われます。男性の友人に相談しても「“隙がない”ってことだよ」としか言われず悩んでいます。男性の言う「隙がない」って、何なんでしょうか?「隙がある」って、何なんでしょうか?(更年期辛い・44歳・福岡県)

宇多丸   更年期辛いさんが何のことを言われてるのかわからないように、僕たちもこの文面だけだと判断しようがないところもあるけど、あくまで一般的に、「隙がない」という表現がマイナス強めなニュアンスで使われる局面、というのを考えてみると……すべてにおいてちゃんとしているがゆえに、こっちは緊張しちゃう、気が抜けない、安心できない、みたいな感じですかね。

こばなみ  気楽に付き合えない、ってことなのかなって私は思ってたんですけど。

宇多丸   こばなみも言われたりするの?

こばなみ  全然言われたことないです。で、さっき夫にも、「私って隙、ないかしら?」と聞いてみたんですけど、ポカンとしてました。あとたぶん、「隙がない」って言われる人って、賢そうに見える人なのかなって。

宇多丸   もちろん、頭の良さっていうのは絶対入ってくる条件でしょうね。あと、とくに男性側が女性にこれを言うときには、「自分のコントロール下に置けない女性」を脅威に感じてしまうっていう、ぶっちゃけ性差別的な心理が働いている可能性も、どうしたって疑ってしまいますよね。

もちろん男性が全員そういう考え方をしているわけではないと思うんだけど、残念ながら日本社会の現状として、そう思われてもしょうがない差別的な構造がドスンと居残っているというのは、事実なので。更年期辛いさんの語調にそこはかとなく怒気が漂ってるのも、ひとつにはそうした社会全体の理不尽さに憤っているという部分もあるからではないか、とお察ししますが。

ただまぁ同時に、これは男女問わず、対人関係に関しては最終的にやっぱり、「愛嬌」の有無が大きな分かれ目になるもんだよな、というのは、良い悪いではなく経験上確実に感じるあたりでもあって。じゃあその「愛嬌」って何なんだと改めて考えてみると、そりゃ見た目もあるけど、一番大事なのは、「自己開示が上手にできるかどうか」なんじゃないかという気が僕はするんです。人のチャーミングさというのが弱さやダメさ込みで成り立っているものなのだとしたら、そこを自然に、イヤミなくさらけ出せる人は、やはり愛されやすいと言える。まわりの人間も、じゃあこちらも胸を開こうかな、となりますしね。

その意味で更年期辛いさんは、少なくとも周囲の人たちには、心のガード固めな人、というふうに見られがちなのかもしれないですよね。そのことをもって「隙がない」と言っているのかもしれない。

でも、更年期辛いさんがいくら表面的にはそう見えていたとしても、実際にはこの相談にあるように、いろいろ人間的な悩みを内側には抱えていて当たり前なわけで、最低限パートナーとしてお付き合いしてる人は、そこまで理解しようと努力しろよ! とは思う。「隙がない」なんてあっさいレベルで止まってんじゃねーよ! って。

ちなみに更年期辛いさんは、「隙がない」というのを、はっきり「キミとは結婚できない」的な理由として言われたんですかね? あるいはそうじゃなくて、なんで結婚まで毎度至らないのかを考えてみるに、よく言われるアレか? みたいな感じなのか。だとしたら、ちょっとそこはいったん分けて考えたほうがいいかも。だって、みんなお互い欠点があるのなんかわかったうえで、結婚してるわけでしょう。

たとえば「隙がない」を飲み込んだうえで、それでも一生一緒にいてくれや、ってことだって当然あるわけで……てか、そもそも更年期辛いさんは、結婚したいって意思を、歴代パートナーに伝えてきたのかな?

「結婚しようよ」「隙がなさすぎるからキミとは嫌」って地獄みたいなやりとりが繰り返されてきたのなら、それはやはり明らかに「隙」問題がポイントということになるけど、実は単に、更年期辛いさん側に結婚への意思が強くあるってことが相手にうまく伝わっていなかっただけ、みたいなことはないかな? ひょっとしたらそれもやっぱり、「自己開示をあんまりしないタイプ」=「隙がない」っていう話なのかもしれないけど。

更年期辛いさん、間違いなくモテる方みたいだし、ひょっとしたら、周囲には勝手に「孤独とか感じないっしょ?」「結婚とか興味ないっしょ?」とか思われてたりするのかもしれない。

とにかく、恥ずかしながら僕自身がまさにそうだったんだけど、男は女性に比べてタイムリミット意識が希薄なぶん、結婚というものに対しても、放っておけばずーっとぼんやりした態度を取り続けたまま、という人は少なくないと思いますからね。更年期辛いさんが言い出さない限りはただただ時間が過ぎてくだけ、みたいな状況も、じゅうぶん想像できる。

こばなみ  ただ、そういう意思がなくても、両親と会ったりするものですか?

宇多丸   ある程度の年齢なら、まぁそこを視野に入れているのかな、とは思っちゃいますよね。

この文からだけではわからないんで、僕らもあんまり明確な結論は出しづらいですけど、ただそこで第三者に相談してもやはり「だから、隙ないからじゃん?」って答えが真っ先に返ってくるってことは、少なくともハタからは更年期辛いさんがそう見えがちなんでしょうね。

じゃあどうするかってことだけど、まずはやはりストレートに、「そういう更年期辛いさんに合う相手をこそ探す」っていうのはあると思うんですよね。絶対いっぱいいますもん、バッキバキにしっかりした相手にケツを叩かれてるほうがいいって人。そのうえで、さっき言ったように更年期辛いさんの普通に人間的な部分をしっかり汲み取ってくれるような人も、必ずいるはずだし。たとえば、ボケッとしてる男とビシバシ仕切る女の人とで結果ナイスコンビネーション、みたいなのとか、容易に思い浮かぶパターンでしょ。

こばなみ  よく見かける組み合わせですよね。

宇多丸   当たり前だけど、そういう「隙がない」、きちっとした人であること自体が悪いわけじゃないんだよな。更年期辛いさん側はなにも直す必要ないのかもしれない。あえて気をつけるべきことがあるとしたら……その「きちっと」が、感じ悪く発露してしまってはいないか、自分にその気はなくとも他人にはそう見えてしまってないか、というようなことじゃないですか? 言ってることやってることは正しくとも、それがたとえば説教がましかったり、相手をバカにしたような感じになってしまっていたりしないか、とか。

人にナイスにされたくばこちらもナイスに接するしかない、というのはコミュニケーション全般の基本ルールみたいなもんなので、もし仮に万が一、こちらの物言いなどに問題があるのかもしれない、というような心当たりがあるのならば、そこはあるいは改善の余地があるポイント、と言えるかもしれない。

こばなみ  あと、結婚は結婚で、したいなら、そう切り出そうってことですかね? それこそ、隙なく仕切ってかためちゃえばいいのにとは思いましたが。

宇多丸   それもそうだし、さらに根本の話としてやっぱり、少なくともパートナーに対しては、普段からもうちょい自己開示を積極的にしてゆく姿勢、みたいなのも必要かもしれないし。それこそさ、その男性の友人に相談したってときも、「“隙がない”ってことだよ」とだけ返されて釈然としないなら、具体的にはどういうこと? とか、納得できるまでもっとグイグイ食い下がればいいのにな、と僕は思ったけど。「こっちはそれ言われるたびに、傷ついているうえにどうしていいかわからないんだから、口にした責任上、ちゃんと教えてよ!」って、こちらの気持ちや立場、その切実さもしっかり伝えてさ。

こばなみ  友人にだったら、これからまた聞いてみてもいいのでは?

宇多丸   そうだね。とにかく現段階の情報ではなにが真の問題なのかは推測の域を出ないので、そうやって近しい第三者の意見を聞いてみるというのはひとつの手だろうし……。

そのうえで、自分に落ち度はないと確信できるようなら、さっき僕が言ったように「隙がない」上等! 精神で、そのままの更年期辛いさんを受け入れてくれる人と出会えるまでまたトライ&エラーを繰り返してゆく、ってことで、とりあえずは全然いいんじゃないですかね。

こばなみ「隙がない」というのは別に悪いことじゃないし、隙に付け入られたり、隙だらけで事件に巻き込まれたりするほうが怖いんじゃないですかね。それに隙がなくはない私としては、「隙がない」ってのは、なんかきちんとしたご自身のベースがあるような感じがしていいなぁとは思いましたよ。悩む気持ちもわかりますが、あまり固執せずに悩みの本質を明確にできるといいですね。

この隙がない問題、まわりの女子たちともさまざまな角度で意見や経験談が飛び出したので、悩んでいる人も多いのだなと改めて実感しました。

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宇多丸 ラッパー、ラジオパーソナリティ

1969年東京都生まれ。早稲田大学在学中にMummy-Dと出会いヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」を結成。ジャパニーズ・ヒップホップシーンを開拓/牽引し、結成30年をこえた現在も、アーティストとして驚異的な活躍を続けている。2007年にはTBSラジオで『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』がスタート。09年に「ギャラクシー賞」ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞するなど、ラジオパーソナリティとしても活躍。同番組内の映画批評コーナーなどが人気を博す。18年4月からは、同局で月~金曜日18~21時の生放送ワイド番組『アフター6ジャンクション』でメインパーソナリティをつとめている。著書に『ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門』『森田芳光全映画』『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』などがある。

小林奈巳(女子部JAPAN)

愛称・こばなみ。株式会社都恋堂・代表取締役。出版物や広告コンテンツの編集業務を経て、2010年に「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ・メディア「女子部JAPAN」として、全国2万3千人の30~40代女性を対象に、ココロとカラダを元気にするためのコンテンツ&イベントを企画・実施中。仕事は好きだが、PCのデスクトップと部屋がどうしても片付けられないのが長年の悩み。

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