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ライムスター宇多丸のお悩み相談室

2022.09.16 公開 ポスト

責めたりイヤミになったり、怒りにまかせて夫に言い過ぎてしまう自分をなんとかしたいです。宇多丸(ラッパー、ラジオパーソナリティ)/小林奈巳(女子部JAPAN)

ラッパー、ラジオパーソナリティとして縦横無尽に活躍し続けているライムスター・宇多丸さんの人生相談本『ライムスター宇多丸のお悩み相談室』がついに刊行です!女子部JAPANで長年続けてきた連載からぎゅっと厳選&加筆修正してお届けする1冊。仕事や恋愛、人間関係のお悩みから女性差別まで、とことん考え答え続けた名回答の数々、ぜひお楽しみください!

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責めたりイヤミになったり……、怒りにまかせて夫に言い過ぎてしまう自分をなんとかしたい!(2019年8月3日)

結婚して7年目。家庭でのコミュニケーションの取り方が主人とお互いに違っていて、ついつい言葉数が多くなってしまい、自分のコントロールができなくなってきました。普段の夫婦仲は良く、たわいない話をしているときはなんともないのですが……。話し合いや言い合いになったとき、主人は自分の考えを話すのが苦手で、黙り込んでしまったり、先送りにするところがあります。4歳年下の私からの指摘を受けるのは嫌なようなので、当初は言いたいことを言えず我慢していましたが、気持ちを察してもらえないことにイライラして雰囲気が悪くなるうえに、私も怒ると本当に言いたいことを見失いやすいので、感じたことをできるだけその場で話すように変えました。

改善したところもあるのですが、図星を突くと主人は、ふてくされたように「俺が悪かったです」と言って自己完結させて終わらせようとします。私はその態度に逆上して、主人を責めてしまいます。主人のようなタイプの人には責め立てるのは一番ダメだと頭ではわかっているので、主人の気持ちを察して、寄り添った物言いをしなければと思うのですが、頭に血がのぼると、「なんで私の気持ちを察そうとしないヤツの気持ちを察しないといけないんだー!」と、また違うところで怒ってしまいます。そうなるとどんどん加速して、責めたり、言い過ぎたり、イヤミになっていったりしてしまいます。主人のことを大事に思っているのに、怒りにまかせて言い過ぎてしまう自分をなんとかしたいです。どうしたら感情に負けず、円滑で有意義な話し合いができるでしょうか?(にくづめ小僧・31歳・奈良県)

マネージャーおさない  やばいですよ、これは!

宇多丸   おっと、離婚歴アリのおさないさん。経験上、これはやばいですか?

マネージャーおさない  私、結婚8年目で離婚したんですけど、これ、全体的にわかるなと思って。私も普段は仲が良かったし、うまくいってると思ってたし……、でもしかし! 何かモメたときにはこんな感じで。だから、急にダンナさんが「離婚する」とか言い出すかもしれないなって。

宇多丸   にくづめ小僧さんも、こんなことしちゃダメだってわかっているのに、やっちゃうってことなんだよね。ダンナさん側はダンナさん側で、なんとかしようがあるのかな?

マネージャーおさない  こういう人だと思うしかないんじゃないかな。

宇多丸   ダンナさん、考えをオモテに出すのが不得手というのもあるんだろうけど、僕が想像するに、要は面倒なことをできるだけ避けてゆきたいタイプ、ってことなんじゃないかな。お恥ずかしい話、僕がまさにそうなもんで……。とにかく話し合いとか面倒くさいから、すぐ「ワタシが悪うござんした」的な感じで終わらせようとしちゃう、みたいな。ま、夫婦ってもっとも近いところにいる「他者」なわけだから、こういう人と思うしかないっていうおさないさんのスタンスもひとつの知恵だとは思うけど……。とはいえやっぱり、友人知人レベルとは違う「パートナー」でもあるはずなんだから、なんとかして、ちょっとは歩み寄れないのかね。そもそも論として、本来はこの内容をそのまんまダンナさんに直接相談するべき、ではあるはずなんだよね。「こういう話が面倒くさいのはわかるけども、今日だけは我慢して聞いてくれませんか」って、努めて穏やか~な切り出し方をしてもダメかな。

マネージャーおさない  でも、怒らずには言えないんでしょうね。私は「謝んないよね」って言われてたんですよ。友達とかにはすぐ謝るんですけど、元ダンナには絶対謝らなかったですね。

宇多丸   まさに「謝らない、謝れない女」だったわけだ(笑)。つまり逆に言えばやっぱり、「まずは謝る効果」はあるってことだよね。「私も悪いとは思っているの」と伝えるだけで全然違うというか。あとは、「私が今度こんなふうに怒っちゃってたら、そのときは言って」っていうのはどうですか? それですぐハッと我に返れるかが勝負だけど……。

マネージャーおさない  たぶん、にくづめ小僧さんは、図星っぽいことを正論でストレートで投げるから、ダンナさんとしては、逃げられない、みたいなのはあるんだと思います。

宇多丸   やっぱ、こっちが正しいときほど相手の逃げ道をなくすような怒り方しちゃうのはよくないんだよね。勝ち負けの問題じゃなくて、お互いが歩み寄って仲良くする、というのが大目的なんだから、仮に途中でうっかりムカついてバッドバイブス出しちゃったとしても、すぐ謝るなりなんなりして、ちょっとでもまた歩を戻していけばいいじゃん、ってことだよね。ちなみにさ、「感じたことをできるだけその場で話すように変えました」って、これ自体はとてもいい心がけだと思うんだけど、そういう方針転換をしたこと、ダンナさんには話したのかな? ひょっとしたら、自分は改善してるつもりなのにあっちが察してくれないから余計に腹立っちゃう、みたいな独り相撲状態になってはいないかな、と。でもまぁ、他の部分では仲良いなら、糸口はつかめるんじゃない?

マネージャーおさない  たぶん、こういうときって、にくづめ小僧さんのペースになってるんですよ。で、ダンナさんが黙り込んでいることに対してガーッて言って、ペースがますます固定されちゃう。

宇多丸   ダンナさんからしたら、今日は仕事のことで頭がいっぱいだからやめてほしいのに……みたいなときもあるでしょうしね。そこで「じゃあ、いつならいいのよ!」とかってキレちゃったりしたら、ダンナさんのほうもまた、余計に「なんでもいいからとにかくその場を終わらせたい」というほうに気持ちがいっちゃうでしょうからね。こばなみ家はどうなんだっけ?

こばなみ  夫は怒ったりはしないですけど、正論できっかり言ってくるタイプです。だから私は疲れてるし、面倒くさいので、「ごめんねごめんね、もう、いーじゃん、謝るからさ!」って言ってます。完全ににくづめ小僧さんのダンナさん側ですよ。あと、話が長い&繰り返しが多いので「今日は疲れておりますので、明日にしていただけると幸い」とかなんとか言って寝床に逃げたりします。宇多丸家は?

宇多丸   強く怒られるとかはまずないけど、僕が面倒な話題を嫌がる傾向は確かにあって、露骨に「今、その話するの?」って感じを出しちゃってるみたいで。「だから結局なにも話せなくなる」って悲しげに言われたことはある。そうなるとさすがにこっちも、心底申し訳なくなりますよね。

マネージャーおさない  じゃあ、悲しそうに言えばいいんですか?

宇多丸   こういうケースに限らず、人情に訴えるのに「悲しそう」は有効ですよ。人間関係も、物理法則と同じで、作用反作用ってことですね。攻撃的にこられたら当然、防衛本能が働いちゃうし……。逆に、人から優しくされたいなら、こっちから優しくする以外に方法はない!

マネージャーおさない  身内だと思うからこうなっちゃうんですよね。

宇多丸   そうそう。近しい仲すぎて他者性を忘れてしまいがち、という問題はきっとあるよね。何かミーティング開こうってときにさ、こっちのペースだけで「はい、今から集合~! グズグズしないで~!」とか、普通の人間関係だったらありえないわけじゃん?

こばなみ  嫌だし、怖い~! でも、にくづめ小僧さんのところ、そういうことですもんね。

宇多丸   あとさ、たとえば運動部の話し合いで、コーチが「お前のプレー、あそこよくねぇぞ」とかって言うのは、より良い成果をあげるための、あくまで前向きな提案であって、感情的に「怒ってる」わけじゃないはずじゃん。そこで、思いどおりにならないからってイライラして怒鳴ったりするのは、本来の目的を若干見失ってるわけですよ。ただ、にくづめ小僧さんは、そういう自分の傾向について、すでにかなり自覚的でもあるわけだから、解決まであと一歩のところまでは来てるんじゃないですか?

マネージャーおさない  早めに話したほうがいいですよ!

宇多丸「お前、謝ったことねぇよな」ってならないうちにね! ま、男だって、そういう人、むしろ多いかもしれないしね。僕こそ気をつけなきゃだよ。

こばなみ  私は「ごめんねごめんね」って謝ってさっさと終わらそうとしすぎに注意だな、と思いました。とにかく、まずはダンナさんに相談を! にくづめ小僧家が良き話し合いができるように祈っております。

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関連書籍

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宇多丸 ラッパー、ラジオパーソナリティ

1969年東京都生まれ。早稲田大学在学中にMummy-Dと出会いヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」を結成。ジャパニーズ・ヒップホップシーンを開拓/牽引し、結成30年をこえた現在も、アーティストとして驚異的な活躍を続けている。2007年にはTBSラジオで『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』がスタート。09年に「ギャラクシー賞」ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞するなど、ラジオパーソナリティとしても活躍。同番組内の映画批評コーナーなどが人気を博す。18年4月からは、同局で月~金曜日18~21時の生放送ワイド番組『アフター6ジャンクション』でメインパーソナリティをつとめている。著書に『ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門』『森田芳光全映画』『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』などがある。

小林奈巳(女子部JAPAN)

愛称・こばなみ。株式会社都恋堂・代表取締役。出版物や広告コンテンツの編集業務を経て、2010年に「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ・メディア「女子部JAPAN」として、全国2万3千人の30~40代女性を対象に、ココロとカラダを元気にするためのコンテンツ&イベントを企画・実施中。仕事は好きだが、PCのデスクトップと部屋がどうしても片付けられないのが長年の悩み。

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