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大人の読解力を鍛える

2023.04.24 公開 ポスト

会話の「俯瞰力」を鍛える3色ボールペン活用術齋藤孝

社会人にとって必須のスキルをひとつ挙げるなら、やはり「コミュニケーション力」ではないでしょうか。明治大学文学部教授で、テレビでもおなじみの齋藤孝さんの著書『大人の読解力を鍛える』は、行間を読む、感情を読む、場の空気を読む、想像力を働かせて相手の心情を察するといった、コミュニケーション全般のスキル向上をめざす社会人必読の一冊。その中から一部を抜粋してご紹介します。

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コミュニケーションに大切な「俯瞰力」 身につける方法は?

ものごとの本質を理解するには「全体を俯瞰で捉える」という視点が求められます。

その視点はコミュニケーションにおいても同様で、他者の真意を確実に読解するには、その人の発言全体の流れの把握が不可欠になります。

(写真:iStock.com/sidewaysdesign)

ただ、発言や会話の全体の流れを捉えなさいと言われても、それが意外に難しいもの。書かれた文章なら前にさかのぼって見直したり、文脈をたどり直したりできます。しかしリアルタイムで流れていく話し言葉の場合は、全体図を見失いやすくなってしまいます。

そうした発言や会話を全体図で捉える力=「俯瞰力」はどうやって身につければいいのでしょうか。

 

私自身が高校時代から今に至るまで、普段から実践しているのは「会話をしながら図を描いてみる」という方法です。

言葉による表現だけでは読解しにくい会話全体の構造を簡略な図式にして、話し手が言わんとしている真意や本質を、よりわかりやすく把握するための思考アプローチです。

図式化といってもあまり難しく考える必要はありません。会議や打ち合わせの際、発言されたさまざまな意見を整理するために、ホワイトボードに簡単な図表にして書きまとめることがあると思います。それと同じと考えてください。

慣れていない人がいきなり、話をしながら詳細で込み入った図を描けと言われても、それはさすがに無理な話。でも、ホワイトボードの板書くらいのものならばハードルはかなり低いはずです。

 

図式化の基本は、

  • ポイントとなる「キーワード」を書き出す。
  • それらを必要に応じてA、B、Cなどと「グループ化」する。
  • 線、矢印、等号(=)、不等号(< >)などでグループの「関係性」を示す。

これだけでも十分に、フローチャートやワークシート、相関マップとしての役割を果たす「図式」になり得ます。

「3色ボールペン」で色分けしてみよう

例えば、「あの若い女優さんは、私のいとこの結婚相手の姪っ子なんだ」と言われただけでは、何だか複雑で「要するに遠い親戚」ということくらいしか理解できません。でも、次のように図式化すれば、関係性は断然クリアになってきます。

会話というコミュニケーションでは、発せられた言葉はすぐに空気に溶けて流れていってしまいます。それをただ聞いているだけでは話がこんがらがってしまうけれど、簡単な図式にするだけで構造がはっきりし、論点が見えてくるのです。

 

私は普段から人の話を聞くときは、赤青緑の3色ボールペンを持って話を聞きながらメモを取り、図を描いて構造化することを常としています。

話のポイントとなるキーワードは青で囲み、なかでも「最重要」な言葉は赤で囲みます。さらに、関心を引かれた言葉、気になった言葉、おもしろいと思った言葉を緑で囲みます。そしてそれらを関係性(並列関係や因果関係、対立関係など)や展開に合わせて線でつないだり、矢印を描いたりしていくのです。

刻々と流れていく会話を聞きながらなので、決して美しい仕上がりになどなりません。他人が見たら何が書いてあるのかわからないような代物のときもよくあります。

でも、私が見てわかればそれで十分。なぜなら聞いている話をその場で整理するための作業だからです。

 

話の全体を見渡せる俯瞰力と、前後の言葉や発言の関係性を理解できる文脈力のある人なら、すべては頭のなかで行っていること。それを紙に書き出して可視化することで、よりわかりやすくしているわけです。

3色に色分けしないまでも、まずは紙とペンを手に、話を聞きながら構造を図式化してみる。サーッと聞き流してしまえば、何を言っているのかわからなくなるような話であっても、図式化し、可視化することで論点や真意を明確に理解できるようになります。

関連書籍

齋藤孝『大人の読解力を鍛える』

人間関係におけるトラブルの多くは、相手が「何を伝えたいか」「何を言いたいか」を正しく理解できていないことから発している。情報が複雑に飛び交う現代だからこそ、言葉を、言葉の集合体としての情報を、正確に読み解く力が不可欠なのである。本書では具体的なテキストを挙げながら、行間を読む、感情を読む、場の空気を読む、想像力を働かせて相手の心情を察するといったコミュニケーション全般のスキル向上を目指す。社会人必読の一冊。

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大人の読解力を鍛える

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齋藤孝

1960年、静岡県生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。『身体感覚を取り戻す』で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。『15分あれば喫茶店に入りなさい』『イライラしない本』など著書多数。累計発行部数は1000万部超。

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