親不孝なお雛様～百段雛祭り鈴木涼美

先月、勘三郎の十三回忌記念でもあった猿若祭二月大歌舞伎で義経千本桜すし屋なんて見たせいか、親孝行や親不孝について考えている。今回、親不孝かどうかは知らないが不倫夫ではある中村芝翫が好演していた権太は母親をだまくらかしてお金を奪うようなやつで、父親にはとっくに見放されているチンピラ男。しかし物語のラストでは父親の忠義心を支えるために自分の妻子を犠牲にし、しかも早とちりした父親によって自らも死んでしまうというなかなか暗いラストである。家族は当然、どうしてもっと早く改心しなかったのだと嘆くのだが、親不孝を続けて生きてきた自分が最後に親孝行をして愛する妻子ともども死んでいくこととなった男はどこか満足気にも見える、とかそういう話である。