海の近くに住みたい。
海辺のホテルに一人で泊まった夜から、ずっとそれを夢みている。
もう随分前のことだ。ベランダから海までほんの数メートルしか離れていないホテルだった。その日は台風が近づいてきていて、海がすごく荒れていた。
雨は降っていなかったけれど、早々にベッドに入った。
他にほとんどお客のいない静かな日だった。瞼を閉じると、波の音はより強く耳に届く。台風前だからいつもより波の音は強かったろう。少しだけ不穏な感じもした。波の音に包まれて、わたしは眠りの中に落ちていった。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。