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15歳からのリーダー養成講座

2024.08.07 公開 ポスト

悪用厳禁!人を意図通りに動かす2つのテクニック工藤勇一(横浜創英中学・高等学校前校長)

「いいリーダー」には誰でもなれます。生まれつきの才能はいりません。人気者でなくても大丈夫です。でも、リーダーになる人が必ず知っておかなくてはならない、とても大切なことがあります。それは……。数々の大胆な学校改革を実現し、各界からその手腕が注目される工藤勇一さん。生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した特別授業を書籍化した『15歳からのリーダー養成講座』から一部を抜粋します。

小さな要求から入る「フット・イン・ザ・ドア」

最初に紹介するのは「フット・イン・ザ・ドア」という交渉術です。直訳すれば「ドアの中に足」。訪問販売の人が家にやってきて、開いたドアに片足だけ突っ込んで営業トークをしている状況をイメージしてもらえばわかりやすいと思います。

すでに足が入っているから家主もドアを閉めにくい。総じて「小さな要求から入って、大きな要求を勝ち取る方法」のことを言います。

イラスト:くにともゆかり

これは僕もよく使うし、部下を持っている人の多くが普通に使っている技術だと思います。

 

なぜこの技術が有効かというと、多くの人は「一貫した人間として見られたい」という欲求を持っているからです。

訪問販売の例でいうと、販売員が「1分でいいのでお話いいですか?」と最初に言ったとします。家主はそれに対して「1分ならいいか」と思ってドアを開けてしまった。つまり、ここで家主は販売員の要望に対して、さいなことではあるけれども「イエス」と言ってしまったことになります。

実はその時点で、販売員は物理的に足を玄関に突っ込まなくても、フット・イン・ザ・ドアの状況に持ち込んでいます。なぜなら「話を聞いてください」という要求に対して「イエス」と答えてしまったため、その10秒後に「やっぱりノー」と言うのは、一貫性のない人間のように見えて、言いにくいからです。

 

もちろん怪しい押し売りなら、「こんな人にどう思われてもいいや」と思って、10秒後に「やっぱりノー」と言えるかもしれません。でも、これがたとえば募金やボランティアのお願いだったらどうでしょうか。よいことへの協力のお願いというのは、なかなか断りにくいものです。

 

たとえば授業が終わったあとに、先生から「ちょっと片付け手伝ってくれないかな。この本を教員室に持っていくだけでいいから」と言われたら、「本だけならいいか」と思って手伝いますよね。でもその1週間後に、「前回は手伝ってくれてありがとう。ちょっと今回も荷物が多くてさ。この段ボール箱3個、運んでくれない?」と言われたらどうでしょう。

 

いきなり段ボール箱を運んでと頼まれたら、断ったかもしれません。ですが、一度本を片付ける手伝いをしたことで、自分のなかでつくられた「ちゃんと先生の手伝いをする人」という自己イメージを壊したくなくて、手伝ってしまう人は多いのです。

リーダーになると、どうしても人に動いてもらわないと困る場面はあります。当の本人が、自発的に動く状態に持っていくのが理想とはいえ、うまくいかないときもある。そんなときに使える技術のひとつです。

 

もちろんこの技術を悪用したらダメですよ。あくまでもチーム全体のためになる、前向きな目的のためだけに使ってください。

大きな要求から入る「ドア・イン・ザ・フェイス」

今度は「ドア・イン・ザ・フェイス」という交渉術です。直訳すれば「顔面にドア」。これは「フット・イン・ザ・ドア」の真逆で、最初に大きな要求を出すことで、小さな要求を飲んでもらいやすくする方法です。

「shut the door in somebody's face=門前払いする」というフレーズに由来する言い方で、相手に最初に大きな要求を出して、ドアを閉めて断られてしまうというイメージです。

これも僕はよく使います。しかもフット・イン・ザ・ドアより使いやすいです。

イラスト:くにともゆかり

やり方は簡単です。最初に相手が絶対に断るだろうなという要求を出すだけです。

たとえばみなさんがある日、お父さん、お母さんに向かって唐突に、「カリフォルニアにある本家のディズニーランドに行ってみたい」とお願いをするとします。そこで「いいね、行こう!」と言われたら儲け物ですが、普通は「あんた何言ってるの。無理だよ」と言われるだけでしょう。

そのタイミングで、「じゃあ浦安のディズニーランドでもいいけど」と、自分が本来お願いしたかった、より小さな要求を出すのです。するとこの2回目の要求は通る可能性が高くなります。

 

相手の要求を断るのは、誰でもストレスがかかるものです。

当然、もう一度断るのもストレスですし、前回断ったことに対して「申し訳ない」という気持ちもありますから、前回より小さな要求に対しては、断りづらくなるのです。

 

僕の場合、たとえばある先生に早めに資料を提出してほしいと思ったら、「例の資料なんだけど、今日中に出せないかな?」と聞きます。

そこで「ノー」と言われるのは、想定済みです。「いや、ちょっと今日は無理です」と言われたら、「そうだよね、ごめん、ごめん。じゃあ今週中なら大丈夫?」と僕の本来の要求を出します。すると「あ、今週中なら余裕です」と言ってくれることが多いのです。

最初に出す大きな要求があまりに無謀だと、「こいつ何を言い出すんだ」と不信感を持たれるリスクもあります。使い方には注意が必要ですが、知っておくと便利なテクニックです。

関連書籍

工藤勇一『改革のカリスマ直伝! 15歳からのリーダー養成講座』

結果を出せるリーダーになるための「基本の〈き〉」を身に付ける。 初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読! 数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業がついに本になりました。

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15歳からのリーダー養成講座

初めて部下を持つ人・チームを率いる人必読!
人はどうしたら動いてくれるのか。
迷ったときは、どう決断したらいいのか。
メンバーの対立はどう解消したらいいのか。
言いたいことはどうしたら伝わるのか。

数々の大胆な学校改革を実現し、教育関係者だけでなく、経営者やビジネスパーソンからもその手腕が注目されるカリスマ校長・工藤勇一氏。工藤校長が、生徒たちに自ら「リーダーシップの基本」を講義した全8回の特別授業を公開します!

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工藤勇一 横浜創英中学・高等学校前校長

横浜創英中学・高等学校前校長。1960年山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長(~2020年3月)。教育再生実行会議委員、内閣府規制改革推進会議専門委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員など公職を歴任。麹町中学校では、宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行し、教育関係者だけでなく、経営者・ビジネスパーソンの間でも注目を集める。初の著書『学校の「当たり前」をやめた。生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革』(時事通信社)は10万部を超えるベストセラーに。他に『麹町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)、『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』 (鴻上尚史氏との共著/講談社現代新書)、『子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む』(苫野一徳氏との共著/あさま社)など。

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