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ゴルフは名言でうまくなる

2024.09.29 公開 ポスト

第310回

「われわれは人間である以上、すべてのミスを非難してはならない」――ボビー・ジョーンズ岡上貞夫

球聖からのアベレージゴルファーへの金言

球聖と呼ばれたボビー・ジョーンズは、多くの著作を残しており、文章力にも長けている。このため、残された名言も数多いが、表題の言葉もその中のひとつで、次のように続く。

われわれは人間である以上、すべてのミスを非難してはならない。それよりも自分の力をわきまえずに冒険をおかしたり、ちょっとした注意力さえあれば防げるミスを、性懲りもなく何度も繰り返して、その挙げ句自分のミスに腐って、プレーを投げるようなプレーヤーを、私は軽蔑せずにはおれない。

 

この言葉の中で、「ちょっとした注意力さえあれば防げるミスを、性懲りもなく何度も繰り返して」という部分に今回は注目してみたい。なかなか100が切れないないゴルファーも、90が切れそうで切れないゴルファーも、この「ちょっとした注意力さえあれば防げるミスを、性懲りもなく何度も繰り返して」いることで、スコアを落としているものだからだ。

これは、「ちょっとした注意力さえあれば防げる」のだから、筋力の強化や技術力の向上に努力する必要はなく、少しだけ注意力を働かせるだけでスコアアップにつながる。ジムへ行ってトレーニングすることも、打ちっ放しで多くの球数を打つこともしなくてよく、それでいてスコアがよくなるのだ。

それでは、アベレージゴルファーが「ちょっとした注意力」を働かせるべきラウンド中のシチュエーションとはどういうものだろうか。これを知り、そういう状況になったとき、どう注意力を働かせることがミスを防ぐのかを考えてみよう。

「ちょっとした注意力」が必要な場面

ショットを曲げてしまい、走ったとき

林や谷へ打ち込んだりすると、クラブを3本ほど持ち、走ってボールを探しに行く。プレイファストを心掛けているゴルファーなら、思わずそうしているもので、よく見る光景だ。

プレーを遅くしないようにするという、その心掛け自体はよいことだが、走ってしまうと息が上がり、「ゼーゼー、ハァハァ」しながら次のショットをすることになる。それに、普段トレーニングしていない人だと、存外に足の筋肉が疲労しているものだ。

その結果、更にミスショットを重ね、大たたきしてしまうのだ。これを防ぐには、なるべく走らないことが一番なのだが、前の組から離され気味なときなどは、そうも言っていられない。プロでも、スロープレーでペナルティを科せられそうなときには、走って時短しようとする。

このように走ってしまったときには、プレイファストも大事だが、少しだけ呼吸を整えることに注意を向けたい。少し冷静になって、残りの距離を確認したり、持ってきた3本のクラブの内のどのクラブを選択するのかを検討したりして、10秒でも20秒でもいいから息を整える時間を取ることだ。同時に、屈伸したりして疲労した大腿二頭筋などをほぐしてやると、更によいだろう。

プレイファストを心掛けることは、最も重要なマナーだが、ミスの連鎖を招いてしまっては、そのほうがプレーに時間をかけてしまうことになる。一旦落ち着いて、ミスを引きずらないほうが、速くプレーを進められると考え、そのために注意を払うことだ。

ドライバーでナイスショットを打てたとき

意外に思うかもしれないが、今日イチのドライバーをかっ飛ばしたあとの次のショットでは、大きなミスショットをしてしまうことが多いのだ。いいドライバーが打てたから、次のアイアンもナシスショットできるものと過信してしまう。または、フェァウェイのいいところからのショットだから、なんとしてもグリーンに乗せて、あわよくばバーディをと意気込んでしまう。

その結果、知らず知らずのうちに肩や腕に力が入ってしまい、大きなミスショットを打ってしまうのだ。ここで注意を向けるべきは、自分を過信してイケイケになっている心理状態だ。

そのようなハイテンションになってしまっていないかと、自重できればいいのだが、一度ハイになった心境はなかなか鎮められないものだ。これを防ぐには、ナイスショットが打てた直後のメンタル・マネジメントが大事だ。

ナイスショットが出たときは、「まぐれ当たりが出たな」と思うとよい。できれば、「おー、まぐれが出た」と口に出して言うと効果が高い。言葉にして声に出すと、強く意識に残るからだ。

冷静に考えてみれば、アベレージゴルファーのショットは、ほとんどが大なり小なりミスショットで、改心の当たりというのは10発に1発も出るかどうかなのだ。だから、「ナイスショットはすべてまぐれ当たり」と常に心得ていれば、いたずらにハイテンションにならないで済む。

何がなんでもパー(マイ・パー)にしたくなるとき

マイ・パーとは、自分のハンディを換算した上でのパーのことで、ハンディ18の人なら全ホールでボギーがマイ・パーとなる。マイ・パーなら、本当のパーとちがって1度のミスなら許容範囲と受け止め、あまり焦ったりしないで済む。マイ・パーを目標にプレーすることは、心を平穏に保つのに効果的なメンタル・マネジメントでもあるのだ。

しかし、ミスが続いたりすると、そのマイ・パーも危うくなってくる。それでも、何としてもマイ・パーを取ろうとこだわると、無理な攻め方や、強引な狙い方をしてしまいがちだ。林の中から、少しでもグリーンへ近づこうと狭いスキマを狙ったり、難しいアプローチになって練習場で打ったこともないようなロブショットを試みたり、10mもあるマイ・パー・パットを強引にねじ込もうとしたりだ。

このように、どんな状況なのかも判断できないほど冷静さを失っては、無駄なストロークを減らすことはできない。もちろん、ティーショットは本当のパーを取るつもりで打っていい。しかし、それがミスして曲がったら、1打のロスは覚悟する、セカンドでもミスしたら計2打のロスもやむなしと受け入れる。

ミスをしたら、何が何でもすぐ次のショットで取り返そうとせず、一旦はボギーでよし、あるいはダボでもよしと受け入れて、落ち着いたプレーに戻ることが優先なのだ。そうすれば、次のホールで、マイ・パーより1打少ないマイ・バーディとなるかもしれない。

コースで上手い人のマネをしたくなるとき

同伴プレーヤーの中に、シングルさんがいたりすると、低く抑えたショットを見たり、逆にアッパーに打って風に乗せたりするショットを見たりすることになる。すると、そのシングルさんは、ほとんどオナーで打つから、あとから打つ自分も同じようなショットをマネして打ってみたくなるものだ。

しかし、よく思い出してほしいのだが、そういう低く抑えたショットや、アッパースウィングなどはドライビングレンジで練習したことがあるのだろうか。それ以外にも、インテンショナルにスライスやフックを打つ練習、スリークォーターでラインを出す練習、ロブショットの練習などなど、普段ちゃんとやっているだろうか。

ほとんどのアベレージゴルファーは、普通に打ってもいい当たりをする確率は低く、そんな特殊なショットにまで練習が行き届いていないはずだ。練習場で打ったこともないようなショットを、上級者がやっているからといって、その場でマネして打てると思うのは、あまりにも楽観的すぎる。

アベレージゴルファーは、かたくなにひとつのスウィング、ひとつの持ち球、比較的やさしいアプローチショットでゲームを組み立てることにこだわったほうがいい。コントロールショットなども、必要不可欠な状況以外ではやらないで、フルショットで打てるクラブ選択にしたほうがいい。

少し冷静に注意力を働かせれば、節約できるストロークがある

いつも練習場で打っているスウィングで、大体スライスになっているのなら、そのスウィングとスライスの球筋だけでホールの攻略を考える。それで、グリーンの周辺までトラブルなく運んだら、転がしのアプローチか、せいぜいピッチ・エンド・ランで、ザックリやトップしての大オーバーのような大きなミスを回避する。特別なこと、特殊なこと、ほとんど練習したことのないことは一切やらない。

一緒に回った上手い人の技術を目で見て盗むのはいいことだが、その場ですぐにマネしてみたくなっても練習場へ持ち帰ることにして、自分の出来る範囲のゴルフに徹すれば無駄に大たたきすることはなくなるはずだ。

ボビー・ジョーンズは、こんな名言も残している。

どんなラウンドでも、あとから考えると、少なくとも1ストロークくらい節約できたと思えるストロークが必ずあるものだ。

このように、上級者になっても少し冷静に注意力を働かせれば、節約できたと思えるストロークが必ず何打かはあるものなのだ。ましてやアベレージゴルファーは、毎ホール1打ぐらい節約できる無駄なストロークがあるのではないだろうか。

これを半分に抑えるだけでも、スコアは9打もよくなる。上記した4つのNGシーン以外にも、「ちょっとした注意力さあれば防げるミス」はあるかもしれない。ラウンドから家に帰ったら、その日のラウンドを振り返り、そんなもったいないミスが、どのような心理で引き起こされたのかを、上記の例を参考に反省すると、次のラウンドにきっとつながるはずだ。

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岡上貞夫

1954年生まれ。千葉県在住。ゴルフエスプリ愛好家。フリーライター。鎌ヶ谷カントリークラブ会員。1977年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。大学入学時は学生運動による封鎖でキャンパスに入れず、時間を持て余して体育会ゴルフ部に入部。ゴルフの持つかすかな狂気にハマる。卒業後はサラリーマンになり、ほとんど練習できない月イチゴルファーだったが、レッスン書ではなくゴルフ名言集やゴルフの歴史、エスプリを書いたエッセイなどを好んで読んだことにより、40年以上シングルハンディを維持している。著書に『ゴルフは名言でうまくなる』『90を切るゴルフの名言33』(ともに幻冬舎新書)がある。

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