僕の時給よりも高価なラーメン…岡本雄矢（ 主に“トホホ短歌”を詠む「日本に（たぶん）ただ1人の歌人芸人」）

世の中の #トホホ を拾い集めては披露してくれる、歌人芸人の岡本雄矢さん。隣の席の「もったいない！」という状態で美味しいものが残されていたら…食べたくなっちゃいますよね。『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』『センチメンタルに効くクスリ　トホホは短歌で成仏させるの』絶賛発売中！

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僕の時給よりも高価なラーメンを隣の人が残していった

10年ほど前になりますが、ラーメン屋さんに行った時のこと。

カウンター席に座りラーメンを頼み、ふと隣を見ると隣の男性がカニの足の乗っているラーメンを食べています。

北海道では観光客の方向けに、カニの足の乗っているラーメンを置いている店はたまにあるのですが、食べている人を見るのははじめてです。

どんな味がするんだろうと思いながらも、僕は頼んだ味噌ラーメンを食べはじめます。

それから少しして、隣の男性が席を立ち店を出ていきました。

カニのラーメンの中には、まだラーメンが半分ほど残っています。

え？　残したの？

カニのラーメンの値段を見てみると2000円と書かれています。

え？　2000円のラーメン残したの？

当時、僕はコンビニでアルバイトをしていたのですが、その時給が960円でした。

僕の時給より高いラーメン、残してったじゃん。

どんな味がするんだろう？　おいしくないのかな？

興味を持った僕の頭に、一口だけもらおうという考えが浮かびます。

でも待てよ。隣の人が残していったラーメンを食べるのは倫理的にいかがなものでしょう？　アウトのような気がします。

だけど、カニのラーメンなんて食べることないし、めちゃくちゃ興味あるんですけど。

いやでも、そんなことしたらダメだよな。

僕が右往左往悩んでいるうちに、店員さんがやってきてカニのラーメンを下げていきました。

よかった。

結果的にこれでよかったんだよ。

僕は味噌ラーメンを完食し、スープもすべて飲み干して店を出ました。

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読めば読むほど、なぜか幸せな気持ちにしてくれる短歌＆エッセイをお楽しみください。