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女80歳の壁

2025.02.05 公開 ポスト

和田秀樹流・美と元気の保ち方「いつまでも美しく、健康でいたいなら“性ホルモン”を補充するべし」和田秀樹

体力も気力も70代とは全然違う「80歳」の壁。その壁をラクして超えて、寿命をのばす――その秘訣がつまった『80歳の壁』は、2022年の年間ベストセラーにもなりました。そんな「壁シリーズ」の最新刊『女80歳の壁』が出版されました。

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」など、ぶ厚い障害を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説した一冊。本書から、一部をご紹介します。

*   *   *

性ホルモン 足して維持せよ 美と元気

ホルモンの話が出ていますが、そもそも「ホルモン」って何でしょう?

お肉屋さんで売っているホルモンは、牛や豚の内臓ですよね。一説では「放るもん」(=捨てる部位)、ということから「ホルモン」と呼ばれるようになったと言われます。ダジャレなんですね。

でも、男性ホルモンの"ホルモン”は「放るもん」ではありません。人間のホルモンは、人間が生きていくうえで欠かせないものなのです。

人間には100種類を超えるホルモンがあると言われます。ホルモンは脳や甲状腺、すい臓、生殖器を始め、多数の器官でつくられ、分泌されます。そして、血液を介して全身に運ばれていきます。臓器や器官が正常に働くために、調整する役割を持っているのです。女性ホルモンや男性ホルモンもそのひとつです。

女性ホルモンは別名「美人ホルモン」と呼ばれます。思春期には、女の子は胸がふくらみ、体も丸みを帯びてきます。生理が始まり、妊娠可能になってくる。女性ホルモンの働きです。20代が最も分泌量が多く、更年期になると減少します。とはいえ、20代でもドバドバ出るわけではありません。一生のうちに分泌する量はスプーン1杯ほど。ほんのわずかな量で大きな影響が出るのです。

男性ホルモンも、思春期に増えます。男の子の体が急にごつくなり、体毛も濃くなります。精通も始まります。性欲も高まり、女子の体操着姿にドキドキするようになります。「エッチホルモン」と呼ばれるのは性欲が関係しています。

でも、性欲だけではありません。意欲も上がります。「受験勉強に勝ち抜く」とか「甲子園に出よう」など、目標に向けて努力するようになるのです。

また、筋力や知的機能も高まってきます。中学生になると男子の運動能力や学力がグーンと伸びてくるのも、男性ホルモンの影響です。

先ほど、登山家の三浦雄一郎さんの話をしました。三浦さんにホルモン補充療法を施したのが熊本悦よしあき明先生です。94歳まで現役の医者を続けた「元気で長寿」の見本のような人物です。熊本先生は「男性ホルモンは名前がよくない。元気ホルモンと呼びましょう」と言っています。

性ホルモン 多い人ほど 情に厚い

男性ホルモンについて、近年、興味深い説が発表されました。『Nature』という有名な雑誌に掲載された学説です。ひと言で説明すると、こうなります。

男性ホルモンの多い人のほうが、人に優しい――。

男性ホルモンを女性に補充すると、寄付をしたい金額やボランティアをしたい割合が増える、というのです。

この記事を見て「あー、なるほどなー」と、思い当たることがありました。

パッと頭に浮かんだのが、歴史上の人物の伊藤博文や渋沢栄一です。「英雄色を好む」という諺がありますが、確かに女性関係は豊かだったとされています。同時に、性格的にも政策的にも、弱者に優しかったとされています。

男性ホルモンの多い人は、闘争的ではあるのですが"弱きを助け、強きをくじく”的なところがある。いわゆる"男気”という表現に近いかもしれませんね。

いつまでも 潤いたければ 女性ホルモン

医療に関して、私は前々から問題にしていることがあります。

それは、血圧や血統値は計測して「高いので下げてください」などと健康指導をするのに、ホルモンの値は計りもしないことです。血液検査で簡単にわかるのに、まったくスルーされています。

ここまでも何度か話してきましたが、ホルモンは大事なんですよ。

例えば、幸齢の女性に女性ホルモンを補充すると、驚くほど肌の艶がよくなります。閉経後は、腟が乾いて硬くなり、いざ性交をしようとしても「痛くてできない」と言う人がいますが、女性ホルモンを補充すると、潤い、軟らかくなります。セックスが可能になるんですね。

さらによいのは、骨粗鬆症の予防にもなることです。じつは、女性が骨粗鬆症になりやすいのは、女性ホルモンが減少することも、原因の一つです。そして、骨粗鬆症になると、腰痛などが起こるため、アクティブでいられなくなります。

つまり、ますます老化が進んでしまうのです。

欧米では、半分ぐらいの人が女性ホルモンの補充を行っています。このため、肌も若々しいし、腟も乾かないので、幸齢者もセックスを楽しめます。

これはとても大事なことで、いつまでも「女」でいることの、非常に大きな要因になっているのです。

ところが、日本の女性は逆で「もう年だから」と、早々に「女」であることをあきらめてしまっているように思います。おそらく本心では「一生きれいでいたい」「若々しくいたい」「潤っていたい」と思っているのに。

それを「はしたないこと」のように思ってしまうのは、本当にもったいないことだと思います。足りないものは足せばいいのです。

女性ホルモンを補充するだけでも、生活は大きく変わります。

関連書籍

和田秀樹『女80歳の壁』

「夫の世話・介護からくるストレスや負荷」「骨粗しょう症による骨折で歩けなくなる」「家族を亡くしたさみしさでうつになる」など、「女80歳の壁」はぶ厚い障害だ。 このような壁を、80歳以上でいきいきしている「幸齢女子」はどう乗り超えているのか? その最強の方法は、とにかく肉を食べること、好きなことだけをして生きること。 「夫と子供は無視していい」「女性・男性ホルモンの両方を補充する」「カツラもしわ取りもOK」等々、壁を乗り超え、高齢期を楽しみ尽くすための生活習慣を詳細に解説。 人生を最後まで充実させたい女性必読の一冊。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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