◆どんな惨事でもモノを止めない危機管理は可能か?
2015年8月、中国・天津の湾岸で爆発事故が起きた。危険物倉庫の爆発だった。爆発地点から2キロメートル離れた撮影者が衝撃を受けるほどだった。当初、「死亡者は16名」と報じられていた。たまたま翌朝のテレビワイドショーに出演していた私は、「そんな少人数のはずはなく、大影響のはずだ」と述べた。
現時点では死亡者が約170名、負傷者は約800人と発表されている。しかし、いまだに真の原因はわかっていない。この事件により、天津に生産拠点をもつ製造業者は一時的にマヒした。
私はサプライチェーン構築のコンサルティングに従業している。サプライチェーンとは、モノの生産から販売までの全体の流れと思ってもらったらいい。そのなかでも私は、物流を専業としている。
東日本大震災以降、日本で注目をあびたのが、サプライチェーンのリスク管理だ。つまり惨事を回避し、モノの流れを止めないよう危機管理を徹底することだ。BCP(事業継続計画)を策定したり、保険を活用して生産体制のバックアップを図ったりする。
東日本大震災のあとは、タイの大洪水も起きた。そのときさかんにサプライチェーンのリスク管理として喧伝された手段は、「自分たちのサプライチェーン全体を把握すること」だった。
補足しておく。通常であれば、企業は単独で商品を造れない。部品供給会社(ティア1サプライヤ)がいて、さらに下の部品供給会社(ティア2サプライヤ)がいて、さらに下の部品供給会社(ティア3サプライヤ)がいる。ティア3までで終わるかといえば、ティア5、ティア6などにいたる。
東日本大震災やタイの大洪水のとき問題になったのは、自分たちが知らぬ間につながっていた部品供給会社が惨事の影響をうけて供給をストップし、それによって自社サプライチェーン全体が機能不全に陥ったことだった。つまり、リスク管理の以前に、自分たちがかかわる企業群を、ティア5であれ、ティア6であれ把握せねばならない、というわけだ。それらの企業群情報(名称、所在地や保有設備等)を把握しておけば、災害が起きたときに、瞬時に状況を把握できる。
そして多くの会社はサプライチェーンを調査し尽くした、といっていた。
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