人気スタイリスト大草直子さんの文庫最新刊『「おしゃれな人」はおしゃれになろうとする人』(2月9日発売)より、試し読みをお届けします。春に向けて、「おしゃれ心」を高めませんか。
「デニム」 流行を映すアイテム
私にとって、デニムは制服のようなもの。1週間に5回は着てしまう。肌になじむその素材感も好きだし、着るごとに自分の体温となじんでいく風情も、シャネルのバッグやツイードのジャケットをきちんと「わたし風」にしてくれる表情もお気に入り。あ、ノーアイロンで着られる気楽さも! 付け加えますね。デニムは、私にとってこんなふうに、最大の味方であるのですが、それは、きっと私がいつも緊張感をもって、デニムとある一定の距離をとるようにしているからだと思います。「楽だから」と穿くことはないし、必ずジュエリーなのか、ブランドのバッグなのか、セクシーな靴なのかーーとコーディネートするように心がけているのです。
だからこそ気をつけなくてはいけないこと。それは、「デニムの顔」。例えば、その素材の加工の技術、ダメージの入れ方、リベット(鋲)の位置や大きさや素材。そしてもちろんラインやステッチの入れ方。顔の「古い・新しい」は、「時代を語ってしまうもの」。だから、5年同じデニムを穿きつづけている人は、5年ファッションが進まない人に見えてしまう可能性もあるのです。
ほとんどモードに興味のない私が、1年ごとにデニムを買い替えるのは、それが理由。そのシーズン流行しているブランド(西海岸のリラックスしたブランドなのか、イタリアのセクシーなラインなのかーーは意外と重要)、そしてシルエット(これは実は、そのときに流行っている靴のフォルムやトップのバランスで変わる)をアップデートすることで、他のアイテムが昨年からの持ち越しでも、着こなしがうんと新しく、そしてエキサイティングに見えるから不思議。
もし、予算が限られているのであれば、バッグを新調するより、デニムの新作を!ーーとおすすめしています。そして「今」買うなら、太もものわたりがタイトすぎない、ストレート気味のデニムがBEST。ロールアップしても、裾をおろしてシンプルに穿いても、ブーツにINしてもバランスがいい、汎用性の高い1本です。