『365日のほん』に素敵なイラストを添えてくれたのは、中山信一さんです。中山さんは企業の広告などを中心に活躍されているイラストレーターで、ユーモアと明るい色使いが魅力的な絵を描かれます。
イラストレーターという顔以外にも、中山さんには「中小企業」というグループでMCをつとめる、ラッパーとしてのクールな顔もあります。
そうした自分の文章とは違う要素が入ってくることで、この本は多くのものを含むことになり、より複雑に面白いものになると考えました。イラストがページに合わさるだけで、文章だけでは届くことのない奥行きがそこに生まれてきます。本文に添えられたカットは内容と直接関係がなくても、ページ全体を響かせるようでした。
本の表紙を中山さんに描いていただく前に、デザイナーの漆原悠一さんより、何案か表紙イメージの候補が届きました。
完成した本を想像してみると、どの案も捨てがたい部分がありましたが、Titleのお客さまではないかたにも広く手に取ってもらえそうで、絵の隅々まで細かく見ていくのが楽しそうな「B案」に決めました。出来上がった一枚の絵を見たときに、かわいさのなかにも野性味のある、他にはない世界感がそこにあって、感激しました。
これまでことあるごとに、「本屋の仕事の本質は、読者に本を紹介すること」と言い続けてきました。この『365日のほん』が出版されることは、本屋の行うべき仕事が本という一つのかたちとなったようで、嬉しいことです。
この『365日のほん』は、本のガイドブックという体裁を取ってはいますが、その中には本の内容に関してまったく触れていない文章もあれば、著者のことだけを2、3行でさらっと書いただけの文章もあります。そうした意味では純粋な本のガイドブックとは言えませんが、その本を読みたくなる気持ちに沿って書いたつもりです。本屋の店頭で本と出合うときのような感覚で、『365日のほん』を読んでいただければ幸いです。
最後に。こうした特集を4週にわたり書くことを許して下さった幻冬舎さん、ありがとうございました。
今回のおすすめ本
いよいよ全国発売になりました。早い店では本日から、今週末には全国の様々な書店に並び始めると思います(たぶん)。Titleでご予約、ご購入のお客さまには特典として「四季のカード」を差し上げます(4枚1セット。1枚はある写真家の作品が使われております)。
◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます
連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
○2024年11月15日(金)~ 2024年12月2日(月)Title2階ギャラリー
三好愛個展「ひとでなし」
『ひとでなし』(星野智幸著、文藝春秋刊)刊行記念
東京新聞ほかで連載された星野智幸さんの小説『ひとでなし』が、このたび、文藝春秋より単行本として刊行されました。鮮やかなカバーを飾るのは、新聞連載全416回の挿絵を担当された、三好愛さんの作品です。星野さんたってのご希望により、本書には、中面にも三好さんの挿絵がふんだんに収録されています。今回の展示では、単行本の装画、連載挿絵を多数展示のほか、描きおろしの作品も展示販売。また、本展のために三好さんが作成されたオリジナルグッズ(アクリルキーホルダー、ポストカード)も販売いたします。
※会期中、星野さんと三好さんのトークイベントも開催されます。
【店主・辻山による連載<日本の「地の塩」を巡る旅>が単行本になりました】
スタジオジブリの小冊子『熱風』(毎月10日頃発売)にて連載していた「日本の「地の塩」をめぐる旅」が待望の書籍化。 辻山良雄が日本各地の少し偏屈、でも愛すべき本屋を訪ね、生き方や仕事に対する考え方を訊いた、発見いっぱいの旅の記録。生きかたに仕事に迷える人、必読です。
『しぶとい十人の本屋 生きる手ごたえのある仕事をする』
著:辻山良雄 装丁:寄藤文平+垣内晴 出版社:朝日出版社
発売日:2024年6月4日 四六判ソフトカバー/360ページ
版元サイト /Titleサイト
◯【書評】
『決断 そごう・西武61年目のストライキ』寺岡泰博(講談社)ーー「百貨店人」としての誇り[評]辻山良雄
(東京新聞 2024.8.18 掲載)
◯【お知らせ】
我に返る /〈わたし〉になるための読書(3)
「MySCUE(マイスキュー)」
シニアケアの情報サイト「MySCUE(マイスキュー)」でスタートした店主・辻山の新連載・第3回が更新されました。今回は〈時間〉や〈世界〉、そして〈自然〉を捉える感覚を新たにさせてくれる3冊を紹介。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて毎月本を紹介します。
毎月第三日曜日、23時8分頃から約1時間、店主・辻山が毎月3冊、紹介します。コーナータイトルは「本の国から」。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
本屋の時間
東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。