「私に触れてよ、お願い――。」
同世代の切実なリアルを歌い続ける加藤ミリヤによる、5つの恋愛小説
大好きな男の子は、あたしのピンクの小部屋に来てくれない。形が適さなくて、ひとつになれないんだって。彼が親友だって紹介してくれたかわいい男の子は、きっと彼のことを好き。あたしにはわかるんだよ。「ピンクトライアングル」
がりがりに痩せたい。彼が「かわいいよな」と言ったテレビのなかのタレントみたいに。私は23歳でこんなダイエット施設にきて、いったい何をやってるんだろう? でも彼の心を手に入れられるなら、何だってできるの。「シナモン・シュガー」
私って、異常なのかな? 自分の恐るべき欲に興ざめする。一緒に暮らす肌の奥底まで馴染んだ彼を捨ててでも、私の声を素敵だと言ったこの精悍な男に身を委ねたいと願うの?「今夜、一枚残らず脱ぐ準備をしている」
みんなはわたしのことを天使と呼ぶみたい。女の子たちはわたしに頼むの、「わたしの好きなこの彼の、ハートに矢をうって」って。じゃあわたしは? わたしはどうして彼に矢をうたないの? ぶっきらぼうで不器用な、わたしの王子様。「羽根のない天使、空を飛ぶ王子。」
退屈にも飽きて、いつもひとりぼっちだったあたしを、壊して新しくしてくれたあなた。あなたは私の神様。あなたがわたしを救ったように、きっとわたしもあなたを救えるよ。この想いを受け止めて、お願いだから――。「神様」
愛なんて知らなかった、いらなかった。君に出会っちゃうまでは。
加藤ミリヤ小説第三作は、すべて恋愛をテーマにした書き下ろし短編集。
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