首都圏トップクラスの難関校合格率を誇る進学塾・VAMOS(バモス)代表で、新刊『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』を上梓した富永雄輔さん。日々、数多くの子どもたちと接している富永さんから見て、最近の子はメンタルがどんどん弱くなっているそうです。これからの時代、どんな子が伸びるのか? その条件を明かしてくれました。
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「歯を食いしばれる子」が伸びる時代に
──塾の先生をしていて、最近の子どもたちの変化は感じますか?
よく言われることですが、子どもたちを叱りにくくなっているのは確かです。叱られることへの耐性が、年々低くなっているように感じます。
その一方で、伸びるお子さんは、叱られることに対して耐性が高い傾向があります。ようするに、他の子どもたちに比べてメンタルが強いんです。昔の言葉でいえば、根性があるということですね。
最近の子は、歯を食いしばる経験をあまりしてきていません。だからこそ、歯を食いしばれる子は、勉強の世界でも、スポーツの世界でも、優位に立つことができるのではないでしょうか。
──これからの時代は、メンタルの強さが大きな武器になるということですね。
今の子どもたちは、本当に「いい子」が多いんです。それはもちろん、悪いことではありません。でも、勉強やスポーツといった勝負の場面では、「いい子」からもう一歩先に進んだ、強い気持ちを持った子のほうがいい結果を出すことができます。
ですから、強い気持ちを育てることは、僕らにとって大切な仕事です。たとえば、あえて競争をあおってみるとか、ちょっとした工夫が必要だと思っています。
──ここ数年で、子どもを叱ってはいけないという空気が一気に広まりました。先生はどうされているんですか?
叱るといっても二つの種類があると思うんです。一つは、人として絶対に叱らないといけない場面。たとえば、人のものを盗んだとか、試験でカンニングをしたとか、人に嫌がらせをしたとか。
僕は生徒に、「テストの点数の高いやつが、低いやつを馬鹿にしたら烈火のごとく怒る」とも伝えています。
子どもが間違ったことをしたときは、その場でちゃんと叱らなくてはいけません。それは、おそらく100年たっても、200年たっても変わらない価値観だと思います。
一方、子どもたちの気を引き締めるため、モチベーションを上げるために叱る場面もあります。こちらは昔より、受け入れられにくくなっています。ですから、いつどのタイミングで叱るかを1週間くらい前から決めて、親御さんにも共有したうえで叱るようにしています。
言ってみれば、パフォーマンスに近いかもしれません。でも、いつ叱られるかわかっていれば、親御さんも「今日はへこんで帰ってくるだろうから、励ましてあげよう」と準備できますよね。今の子たちには、そこまで計算して叱る必要があると思うんです。もちろん、感情のままに怒って手を出したりなんていうのは論外です。
指導者はポジティブな感情は出していいけれど、ネガティブな感情は出してはいけないと思っています。喜びを一緒に分かち合うときは何も隠さなくていいけれど、怒りと悲しみは表に出してはいけない。
僕らも人間なので簡単にはいきませんが、指導者として必要な態度だと思っています。
「自分が決めたルール」だけは守る
──ところで、先生は「毎日10キロ走る」ことを自分に課しているそうですね。嫌だなと思うときはありませんか?
毎日、嫌ですよ(笑)。明日、走りたくないなって、前の日から憂うつになります。でも、自分で決めたことですから。
最近は副業やリモートワークが認められたりと、年々、個人の自由度が高まっています。でも、組織からのコントロールが少なくなるということは、そのぶん自分で自分をコントロールする必要性が高くなるということです。
だからこそ、これからの時代を生きる人たちは、「自分が決めたルール」だけは守ったほうがいい。他人が決めたルールなら破っていいわけではありませんが、自分が決めたルールすら守れない人は厳しい時代になっていくと思います。
──自分が決めたルールを守るコツってありますか?
まわりの人に公言するといいかもしれません。僕は走っていることをみんなに隠していないので、人と会うと「明日も走るんでしょ」とか、「サボっちゃダメだよ」とか言われます。そうすると、みんなに言った手前、やらないとなって思うんです。やらなかったら、みっともないですからね。
──毎日走るようになって、どんないいことがありましたか?
「みんな勉強しよう。俺は走るから。おたがい頑張ろう!」。子どもたちにそう言えるようになったのは、よかったかもしれません。毎日の努力が大事だと口では言っているのに、自分は何も努力していなかったら、説得力がありませんから。
僕はサッカー選手を中心に、スポーツ選手のマネジメントも行なっているのですが、選手が暑い中、ピッチで汗をかいているなら、自分も日陰で休まないで汗をかこうと思っています。
子どもたちだけ頑張らせるのはよくないな、といつも思っています。子どもが一生懸命、勉強しているなら、親も一生懸命、何かを学んでいる姿を子どもに見せる。こうした姿勢が大事だと思います。
※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】富永雄輔と語る「AIに潰されない『頭のいい子』の育て方」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
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