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神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること

2024.09.13 公開 ポスト

【九月】月にあやかる幸せ その1

「お月見」をすると運気が上がる理由を、神主さんに聞いた!桃虚(神職/ライター)

9月はどんなふうに神様とお付き合いしたらいいでしょう。現役の神職・桃虚が指南します。

※こちらは、連載時の記事です。

*   *   *​​​​​​

月見だんごは、お月様へのお供え。完全体としての満月にあやかる、仲秋の名月

秋といえば「仲秋の名月」

月見だんごを連想する方も多いでしょう。月見だんごは、かならず木の台にのせられていますね。これは、三方【さんぼう】と呼ばれるもので、神様へのお供えものをのせる台です。

 

ということは、月見だんごはお供え物なのです。誰にお供えしているのかというと、「お月さま」です。

 

神社では、神様にお供えした食べものを下げてきていただくことは、「ご神威(しんい)をいただく」ことを意味します。平たく言うと、お供えした食べ物には、神様の威力がそなわっているので、それを体に取り込むという行為なのです。お祭りのあとの直会(なおらい)で、お供え物を下げてきてみんなでいただくことには、そういう意味があります。

いやあ、ご神威と言われると、すこしハードルが高いなあ。と思われる方も、いったんこちらを想像してみてください。

三方にのせられ、名月の月光を浴びただんごと、そうでないだんご。

正直、だんごの成分が変わるわけではないけれど、名月の月光を浴びただんごのほうが、なんかいい気がしませんか?

私は、この「なんかいい気がする」という感覚がとても大事な気がしています。

同様に、空の澄んだ秋に満月を眺める、ということも、「なんかすごくいい」気がしますよね。根拠はないけれど、なんだか自分の心身にいい作用をおよぼして、運が拓かれる感じがします。ただ眺めるだけなのに。

この感じをあえて言語化してみると、ちかいところで日本語には「あやかる」という言葉がありますよね。漢字で書くと「肖る」、肖像画の肖です。

辞書で調べてみると、「めでたいもの、幸福な人に似て自分も幸福に恵まれる、またはそうなるように願うこと」とあります。

「あやかる」の語源は「あや(形、模様)を借る」だと考えらえていますが、形や模様とは、視認するもの、つまり光ですよね。ある物体が反射している光が、目を通して、私たちの脳で形や模様として認識されているわけです。私は美術館に行くのが好きなのですが、絵や作品を見るということも、つまりはその物体が反射する光を、目を通して体に入れている感覚です。だから、美しいものを見ると、自分が美しくなる気がするのです。

そう考えると、「満月を見る」ということは、「円のかたちをした光」を見ている、摂取していることになりますよね。

円のかたちをした光。

いかにも、福徳のごりやくがありそう。と感じますよね。名月のように、しずかであかるく、まるく美しくなれる気がします。

 

神社の拝殿に、丸い鏡があるのをごらんになられたことがあるでしょうか。鏡そのものは、ご神体ではありません。ご神体は、本殿の御扉(みとびら)の中に鎮座されています。あの丸い鏡はとてもいろいろなことを示しているのですが、そのひとつは「鏡に映し出されるものすべて(自然界のあらゆるもの)は神であるということ」だと言われています。

また、仏教では「円」は空、風、火、地を含んだ世界全体を表し、悟りや真理の象徴であり、見た人の心を映し出すものでもある、とされています。

満月を見上げ、円のかたちをした光を見るということは、これらのことを体感し、「満ちた状態、完全体としての満月にあやかる」ということのように思われます。

月見だんごは、満月に似せた丸い形をしていますよね。満月を眺め、月見団子をお供えして、月光をあびた月見だんごをいただくことによっても、月の力をいただく。そんな意味があるように思うのです。

 

ああ。ここまではシンプルにまとまったのですが、そうはいかないのが季節のお話です。

私は大阪に引っ越してきて、「月見だんごが丸くない」ということに衝撃を受けました。関西の月見だんごは、楕円形をしていて、こしあんのお布団をかぶっているのです。

関西の月見だんご

実はこれ、里芋のかたちを模しただんご、と言われています。秋に収穫した里芋をお供えした、古来の「十五夜」の名残りと言われています。里芋は、お米より前から食べられていて、縄文時代後期以前から日本に入っていたとされていますから、古くは芋と言えば里芋のこと。「仲秋の名月」は別名「芋名月」とも呼ばれますが、この芋は、里芋のこと。だんごの上にあんこをかぶせるのは、昭和に入ってから京都で考案されたそうです。

そもそもお月見は、秋の収穫を月に感謝するお祭りでした。すすきは稲の穂に見立てた、神様の依り代。依り代とは、神様が降りてくるもののことです。その他に、土地でとれた里芋、栗、豆などの収穫物をお供えしていたのです。

関西の月見だんごは、里芋に見立てただんごを月にお供えして収穫に感謝し、月の力をいただく、というもので、「見立てる」と「あやかる」の二段がまえになっているわけですね。

 

そこで、関西以外の月見だんごも調べてみました。

名古屋はしずくの形をした、ういろう素材で三色(白、桃、茶)。これも里芋の形を模したものだそうです。

静岡県の中・西部地方は、白い団子を平たくして中央をへこませた「へそもち」。

北南部と神奈川県はあんこの入った白丸だんご。

沖縄は、小判形もしくは俵形のもちに、ゆであずきがまぶしてある「ふちゃぎ」。

もはやだんごの域を越えたものもありますが、どの月見だんごも、その地域の方が「小さなころに家のみんなで作った」「おばあちゃんと一緒に作った」という思い出とともにブログなどで紹介されていて、見ているだけでたいへんほっこりします。

月見だんごは、お腹のなかにおさまって消えるけれど、家で季節の行事を楽しんだ記憶は私たちの脳に刻まれて、大人になってからふと思い出したり、傷ついた心を癒してくれたりしますよね。

食べ物には、成分表には上がってこない要素があります。形(光)、色、触感(手触り、歯触り、舌触り)、匂い。これらを、「時」と結びつけて、記憶という栄養にするのが、月見だんごのような「行事食」なのかもしれませんね。

関連書籍

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桃虚 神職/ライター

1970年インド(ムンバイ)生まれ、東京育ち。 ライター業を経て、大阪府枚方市の片埜神社にて神職歴20年。 「神社新報」で連載など。筆名の「虚(とうきょ)」の、「桃」は無邪気の象徴、「虚」は素直な心を表す

最新刊に『神様と暮らす12カ月 運のいい人が四季折々にやっていること』。

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