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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2025.02.07 公開 ポスト

ファッション文化論の第一人者が語る、故・坂本龍一さんから学んだ「人生で大切なこと」武器になる教養30min.編集部

話題のロングセラー『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』の著者で、甲南女子大学教授の米澤泉さんは、2023年3月に亡くなった音楽家、坂本龍一さんから人生を左右するような影響を受けたと語ります。それはいったい、どのような影響だったのでしょうか? 今、改めて米澤さんに振り返っていただきました。

*   *   *

異なる分野にも目を向ける

──ファッションを研究するには、流行をつかむことが重要だと思うのですが、情報収集はどのようにしているのでしょうか。

私はファッションだけでなく、今流行っているものに強い関心があるので、それほど苦にはなりません。

大切なのは、若い人が聴いている音楽などを、自分には関係ないと思わず、とりあえず一度聴いてみることです。今はサブスクがあるので、昔よりも聴きやすくなっています。

 

また、「観察すること」も大事だと思います。電車に乗ったときはまわりの人の様子を見るようにしていますし、カフェに行ったときは、隣にいるカップルが話をしていたら気になって聞いてしまうタイプです。こうした習慣が研究に結びついている気がします。

 

──そこから問いを立てて、分析していくときに意識していることはありますか。

異なる分野に目を向けることを、つねに意識しています。

私の研究対象はおもにファッションですが、ファッションだけ見ていても、一部しか見えてきません。ところが、ファッションと音楽を同時に見ていくと、今まで見えていなかったものが見えてくることがあります。

本を読むときも、ファッションとは関係ない社会学だったり、哲学書だったり、今話題になっている本だったりを読むことによって、違う視点が生まれてきます。

 

──別の補助線が必要になってくるわけですね。

私が大学院時代に出会った、ウンベルト・エーコの『開かれた作品』という本があります。この本でエーコは、テキストの解釈はさまざまに開かれている、簡単に言えば「好きなように読んでいい」ということを言っています。

ファッションもまた、デザイナーが自分の作品としてデザインした服を世に送り出すわけですが、それをどう解釈して着るかは、受け手に開かれていると思うんです。

 

ファッションも、テキストのように解釈できるのではないか。そう思ったのが、今の研究を始めるきっかけでした。

何がどのように使えるかはわかりません。とにかく、いろんなことに目を向けるのが一番だと思います。

坂本龍一さんから受けた影響とは

──米澤さんの「背骨」になっている本があれば教えてください。

『開かれた作品』も私にとって重要な本ですが、中学生のときに、タイトルがすごく衝撃的だった本に出会ったんです。音楽家の坂本龍一さんと、哲学者の大森荘蔵さんの対談本で、タイトルは『音を視る、時を聴くといいます。

ものすごく難しい内容なので、中学生だった私にはほとんど理解できなかったのですが、このタイトルにしびれたんです。

本来、音は視ることはできませんし、時は聴くことはできません。でも、そういうことをやらないといけないし、そういうことをすれば人と違うものの見方ができると思ったんです。

 

──では、そのころから研究者になろうと思っていたのですか?

そうですね。両親が研究者だったわけでもないので、身近な職業ではありませんでしたが、坂本龍一さんの影響が大きかったと思います。坂本さんは東京藝術大学の大学院を卒業されているので、自分も大学院に行ったら何かが見つかるかもしれないと、中学生だった私は漠然と思ったんです。

ちなみに今、東京都現代美術館で開催されている坂本龍一さんの展覧会のタイトルが、『音を視る、時を聴く』なんです。坂本さんも「音を視る、時を聴く」人生だったのかな、きっと坂本さんにとっても大事な言葉だったんだろうなと思えて、すごく嬉しかったですね。

 

──この世は目に見えるものだけ、聞こえるものだけではない。それを、米澤さんは解き明かしたいということでしょうか。

そうですね。ふつうの角度で、ふつうの視点だけで見ていては、見えないものがたくさんあると思うんです。ですから、少し角度を変えたり、反対側から見てみたり、人と違うところから見てみることを心がけています。

 

──流行に対する感性を鈍らせないために、意識的にやっていることはありますか。

私は学生とつねに接しているので、その部分は彼女たちに依っているところが大きいですね。世代が違う人と意識的に交流することは、やはり大事だと思います。

あとは、新しいものに対して億劫にならないことも大事です。ある程度の年齢になると、服にしても、食事にしても、「私の定番はこれ」というものが確立されていると思うんです。

でも、たまにはいつもと違う服を着てみる、違うものを食べてみる、違う場所に行ってみる。つねに新しいものを取り入れることを意識していると、感性は鈍らないのではないかと思います。

 

──最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

ユニクロは、どなたでもお持ちのブランドだと思います。そんなユニクロを通して時代を読むという体験を、ぜひみなさんにしていただければと思います。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【後編】米澤泉と語る「『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』から学ぶファッションの力」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

書籍『おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

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この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

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武器になる教養30min.編集部

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『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

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