
なにもない部屋をひとつ借り、「1日にひとつだけものを増やしていい」というルールで始めた、100日間のチャレンジ。
10日過ぎると、なにが手に入っても「幸せ」を感じるよように⁉
藤岡みなみさんの、文庫新刊『ふやすミニマリスト 所持品ゼロから1日1つだけモノをふやす生活』より。
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10日目 全身シャンプー

やっと水浴びを卒業できる。シャンプー、ボディソープ、フェイスソープの3役をも担ってくれる優秀なアイテムだ。
100日生活において少なくとも3日分の価値があるといっていい。本当にありがとう。
いざとなればコンディショナーもドライヤーもなくてもなんとかなるから、ショートヘアはやめられない。
お風呂上がり、水浴び時代とは違って「私は今ピカピカです!」という感覚がはっきりとある。泡で洗えて嬉しい。洗うということは、自分を大切にする毎日の儀式みたいなものなんだ。
11日目 洗濯機

手洗いでなんとかやりすごしていたけれど、パーカーとか厚手のものは何より水気を絞るのが大変だった。
洗濯機って洗う能力もさながら、脱水力が優れているなあと実感した。乾燥を終えて仕上がった洗濯物はホッカホカで、取り出す度に愛を感じる。私、洗濯機に愛されてる。汚れた服が祝福された服に生まれ変わる感じがして幸せだ。
この生活を始めてから、何かにつけて幸せだなあと思うことが増えた。それは「当たり前のことに感謝しよう」みたいな標語にありそうな感覚とはちょっと違っていて、こうあるべき、なんて思わなくても毎日が新しい喜びに満ちている。
生きる、暮らす、ということが上滑りしていない。とはいえ、まだ最低限のものもそろっていないので、だんぜん不便さが勝っている。本当はめちゃくちゃスマホがほしい(煩悩)。
12日目 鍋

ついに台所に到達。普段なら、食事を出来合いのもので済ますのは楽ちんで最高だけど、10日を過ぎるとむしろ料理がしたくなってくる。料理をしないと、どこか仮暮らし的な、地に足のつかなさを感じる。
宮崎製作所「ジオ・プロダクト」シリーズのステンレス片手鍋。これでスープを作ると、野菜のうまみがこの銀色の聖域から一歩も逃げ出さないという感じがする。鍋がひとつあればご飯もおいしく炊ける。早速炊いた。久しぶりの自炊で、湯気がいい匂いすぎて腰を抜かしそうになった。
「よおーし、いただきます」と勢いよく食べ始めようとしたら、しゃもじも箸(はし)もなかった。そうだった。食べるのにもおかずを作るのにも箸が必要だ。少し冷めるのを待って、おにぎりにしてわんぱくに食べた。
(つづく)
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ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活

シンプルライフとはほど遠い生活をしていた著者が部屋を借り、所持品ほぼゼロの状態から、「1日1つ道具をふやす」という100日間のチャレンジを始める。1日目に敷布団、7日目に爪切り。スマホは果たして何日目!? 電子レンジは不要、タオルと毛布は心の必需品、大切なものの“普段使い”で幸福感が増す……など、生活の本質に迫る画期的な一冊。