ほとんどの本屋には取次と呼ばれる問屋から、(1)店で売れた本や、後から気が付いて注文した本、(2)その日に発売になった新刊が毎朝届きます。荷物の量は店の大きさや売上により様々ですが、Titleは小さな店ですので、本が入っている箱は平均すれば一日に4~5箱くらい、雑誌が入っているビニール包みが2~3個くらいというところです。
一つ一つの箱を開けていく時は、何年この仕事をしていてもドキドキするものです。その日に発売になった新刊の箱を開けると、はじめて目にする本がピカピカ光って出できます。その本の装丁や持っている雰囲気をそこで確かめ、「Titleで売れる本かどうか」を判断しながら、置き場所を決めていくのです。
その時には今日入ってきた本と、今まで発売になったそれに類似する本(著者や出版社、内容から思い浮かべます)とを比べます。A:「どう考えてもこれは売れるよね」という本は、入ってすぐの目立つ平台のところ、B:「それほど冊数は売れないかもしれないが、少なくともあの2人は買うかもしれない。店でも大事にしたい本である(将来は棚にずっと1冊は置いておきたい)」という場合は、平台の裏かその本のジャンルの前に平積み、C:「自分にはその本の価値はよくわからないが、誰かほしがる人はいるかもしれない」という場合は棚に1冊入れます。入ってきた本が、自分が思っていたよりも出来が良かった場合には、すぐにその場で追加注文をします。AやBの商品は、開店後にツイッターで本の紹介をすることも多いので、箱を開けた時に紹介用として、1冊抜き取っておきます。
追加注文した本も他に入ってくるので、それらを置くべき本棚の前に山積みして、箱からまずはすべての本を出し終えます。Titleであれば、一人でそこまでの作業を行って大体15分くらい。そこから、「この本をどこに並べるか」「その本を置くために、どの本を外すのか」ということを考えていくわけですが、その話も長くなりますので、後編でその実際を語りたいと思います。
今回のおすすめ本
『本の未来を探す旅 ソウル』内沼晋太郎+綾女欣伸・編著(朝日出版社)
お隣の国・韓国には「まず、やってみよう」という精神が、何にでも見られる。それが数多くの独立系の書店を生み、独自のブックカルチャーを発展させている。日本ではあまり知られることのなかったソウルのブックシーンをレポートした一冊。
◯連載「本屋の時間」は単行本でもお楽しみいただけます
連載「本屋の時間」に大きく手を加え、再構成したエッセイ集『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』は、引き続き絶賛発売中。店が開店して5年のあいだ、その場に立ち会い考えた定点観測的エッセイ。お求めは全国の書店にて。Title WEBS
◯2024年12月6日(金)~ 2024年12月23日(月) Title2階ギャラリー
2023年に絵本雑誌『さがるまーた』創刊号が刊行されて約1年。新たにVol.2が刊行されたことを記念して、原画展を開催します。vol.2のテーマは「わからない と あそぶ きもちいい と まざる」。創刊号以上にチャレンジのつまった一冊となっています。23人の作家たちが織り成す多種多様な世界を、迫力ある原画や複製原画などとともにお楽しみください。
◯2025年1月10日(金)19時30分スタート Title1階特設スペース
ポストトゥルースに向き合う
青木真兵×光嶋裕介『ぼくらの「アメリカ論」』刊行記念トークイベント
アメリカ大統領選ではドナルド・トランプが圧勝、国内でも選挙のかたちに変化が現れるなど、2024年はまさに「真実」が揺さぶられる1年でした。これからますます顕在化しそうなポストトゥルースに、私たちはどう向き合えばいいのか。大統領選直前に刊行された『ぼくらの「アメリカ論」』(青木真兵、光嶋裕介、白岩英樹著、夕書房)を媒介に、危機感を共有する著者のお2人が、本書のその先を熱く語り合う1時間半です。
【店主・辻山による連載<日本の「地の塩」を巡る旅>が単行本になりました】
スタジオジブリの小冊子『熱風』(毎月10日頃発売)にて連載していた「日本の「地の塩」をめぐる旅」が待望の書籍化。 辻山良雄が日本各地の少し偏屈、でも愛すべき本屋を訪ね、生き方や仕事に対する考え方を訊いた、発見いっぱいの旅の記録。生きかたに仕事に迷える人、必読です。
『しぶとい十人の本屋 生きる手ごたえのある仕事をする』
著:辻山良雄 装丁:寄藤文平+垣内晴 出版社:朝日出版社
発売日:2024年6月4日 四六判ソフトカバー/360ページ
版元サイト /Titleサイト
◯【書評】
『決断 そごう・西武61年目のストライキ』寺岡泰博(講談社)ーー「百貨店人」としての誇り[評]辻山良雄
(東京新聞 2024.8.18 掲載)
◯【お知らせ】
我に返る /〈わたし〉になるための読書(3)
「MySCUE(マイスキュー)」
シニアケアの情報サイト「MySCUE(マイスキュー)」でスタートした店主・辻山の新連載・第3回が更新されました。今回は〈時間〉や〈世界〉、そして〈自然〉を捉える感覚を新たにさせてくれる3冊を紹介。
NHKラジオ第1で放送中の「ラジオ深夜便」にて毎月本を紹介します。
毎月第三日曜日、23時8分頃から約1時間、店主・辻山が毎月3冊、紹介します。コーナータイトルは「本の国から」。1週間の聴き逃し配信もございますので、ぜひお聞きくださいませ。
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本屋の時間
東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。