1日に2万回も空気を出し入れしているのに、当たり前すぎて普段意識することが少ない「呼吸」。呼吸は老化や衰えのスピードといった体調に影響しているだけではなく、人間の感情にも影響しているとおっしゃるのは、書籍『すべての不調は呼吸が原因』の著者・本間生夫さん。普段見過ごしがちな呼吸に注目し呼吸の力を鍛えることで、体と心をより良い方向へコントロールしていく方法を解説している本書から、抜粋してご紹介します。
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Q. COPDは非喫煙者でも発症するの?
A. 非喫煙者でも発症します。
第1章でも紹介したように、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は肺に慢性的な炎症が起こり、肺が気腫化して、息切れ、呼吸困難、咳や痰など、非常につらい呼吸器症状が現れる病気です。
COPDは、一般の方々には「喫煙が原因で起こる肺の病気」と誤解されていることが多いようです。実際、原因のほとんどは喫煙が占めていると言っていいでしょう。ただし、非喫煙者であっても、まわりにたばこを吸う人が多く、受動喫煙で煙を吸い込んでいればCOPDになる可能性があります。それに、本人はもちろん吸わないし、家族もまわりの人もまったくたばこを吸わないのにもかかわらず、COPDになる人もけっこういます。
では、どうしてたばこの煙を吸い込んでいないのにCOPDになるのか。
たばこ以外の原因として、大気汚染や車の排気ガス、職場や工場から出る煤煙(ばいえん)や煤塵(ばいじん)などが関係している可能性もあるのですが、忘れてならないのは、COPDの肺の変化が「呼吸年齢の老化によっても起こる」という点です。
先にも述べたように、呼吸器が老朽化して、肺の気腫化が起こったり、肺がかたくなったり呼吸筋がかたくなったりしてくると、息を出し入れする力が極端に落ちてくるようになります。すると、機能的残気量が増えて、ちょっと動いただけで息切れをしたり、四六時中、咳や痰、息苦しさに悩まされたりするようになってくる。すなわち、COPDと同じ症状に見舞われるようになるわけです。
ですから、非喫煙者でもCOPDになるし、肺や呼吸筋を衰えさせてしまおうものなら、どんな人にもCOPDになる可能性があるのです。
COPDになると息をすること自体がつらくなり、心身が疲弊して通常の日常生活を営めなくなることも少なくありません。QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)も著しく低下してしまうことになります。そんな事態に陥るのを防ぐためにも、いまのうちから呼吸の健康をしっかりキープしていくようにしましょう。
Q. 呼吸が衰えると「飲み込む力」も落ちて誤嚥性肺炎になりやすい?
A. 本当です。誤嚥や誤嚥性肺炎に注意してください。
最近、「誤嚥性肺炎」に注目が集まっています。
これは、食べ物や飲み物が誤って気道に入り、その誤嚥物が原因で肺に炎症が起きてしまう病気です。
肺炎は日本人の死亡原因の第3位ですが、そのうち誤嚥性肺炎が占める割合はなんと7割以上。誤嚥性肺炎で肺がやられてしまうとガス交換ができなくなるため、呼吸ができずに亡くなってしまう方が非常に多いのです。
そもそも、「空気の出し入れ」と「飲み込み」は、のどを共有して常に協力し合いながら働いているシステム。わたしたちののどは、喉頭という部分で「肺へ行く気道」と「胃へ行く食道」とに分かれています。
分岐点で振り分けをしているのは喉頭蓋(こうとうがい)という「のどのフタ」。このフタが通常時は気道を開いて空気を通し、飲食物を飲み込むときは、瞬時に気道を塞いで内容物を食道へ通しているのです。また、呼吸もこの動きと連動していて、飲み込むときには息を止め、飲み込んだ後には息を吐いて、飲食物を間違った道に入れないように協力するシステムになっています。
ところが、高齢になってのどの筋肉が弱ってくると、この「のどのフタ」がうまく閉まらなくなり、飲食物が気道に入りやすくなってきます。しかも、のどの筋肉が落ちているとなれば、呼吸の力も落ちている可能性大。呼吸機能が落ちると、“ごっくん”に合わせてタイミングよく息を止めたり息を吐いたりする力も落ちてくるし、誤嚥しそうになったときに咳で吐き出そうとする力も落ちてきます。こうした要因が重なると、のどの交通整理がきかなくなって、誤嚥をするようになっていってしまうわけです。
つまり、「空気を出し入れする力」と「飲み込む力」は運命共同体。飲み込みの衰えは呼吸の衰えにつながり、呼吸の衰えは飲み込みの衰えにつながっていくものなのです。ですから、もし呼吸機能が低下してきてしまったなら、「飲み込む機能」も落ちてきたと考えて、誤嚥や誤嚥性肺炎に十分注意を払うようにしていくべきでしょう。
そして、だからこそわたしたちは、「飲み込む力」を落とさないためにも、いまのうちから呼吸を鍛え、「空気を出し入れする力」をしっかりキープしていく必要があるわけです。
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すべての不調は呼吸が原因
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