どうすれば人の心を読み、つかむことができるのか。多くのビジネスパーソンが頭を悩ませている問いのヒントを教えてくれるのが、「日本一の人脈を持つサービスマン」として知られる萩原清澄さんの著書、『サービスマンという病い』。超一流レストランの統括支配人として、経営者から芸能人まで、名だたるVIPをもてなしてきた萩原さんにしか書けない本書から、とっておきの秘策をご紹介します。
「相手を知る」ことから始めよう
よくWakiyaを利用してくださる企業については、さまざまなメディアに掲載された情報をまとめてファイリングしています。
たまたま、ある有名な精密機械メーカーH社への就職を希望する学生さんと話をしていたときのことです。
「なかなか面接がうまくいかない」と悩む学生さんに、私はH社のファイルを渡しました。そこには、日本経済新聞に連載された創業者H社長の「私の履歴書」やH社長の考えが窺えるインタビュー記事、H社の社史などがすべてファイリングしてありました。これは脇屋が行っていることの1つです。
「それを全部読んで、面接にも持っていきなさい。私は、面接官が見ているのは『うちの会社に対してどれだけの愛があるのか』、つまりあなたの情熱、そしてあなたという人間の人柄だと思う。だからH社に入りたいと思うなら、それを全部読んでH社長の考えを頭にたたき込んでから面接に行くべきじゃないかな」
私が学生さんにこうアドバイスしたのは、結局のところ、面接も「相手の心をつかめるかどうか」が大きな鍵を握っているのではないかと思ったからです。
相手に“同化”し、相手の心の動きを読むには、まず相手のことを深く知らなければなりません。そう考えると、「相手を知る」ことが足りないままでは、面接の突破は難しいでしょう。
その学生さんは、無事に最終面接を突破してH社に入社しました。最終面接では、
「では、志望動機を話してください」
といわれて、まずファイルを机の上に出したところ、本来は1週間後に合否の結果が出るはずなのに、その場で内定が決まったのだそうです。
「同化」して気持ちを想像する
お客様に関する情報が集まってくると、
「あのお客様が来たらこんなサービスをしよう」
「次に来ていただいたときは、こんな冗談をいってみよう」
というように、いろいろなイメージがふくらんできます。
たとえば以前、Wakiyaによく来てくださる、私も大好きなタレントのIさんが出るテレビ番組を見ていたところ、Iさんがカレーについて、とてもユニークな話をしていたことがありました。
「ニンジンは苦手だけど、カレーには絶対にニンジンが入っていないと嫌だ」というのです。それに、カレーには必ず福神漬けがなくてはならず、福神漬けなしではカレーを食べないのだとか。
この話を聞きながら、私はIさんが次にいらっしゃったらどんな会話をしようかと、イメージをふくらませていました。
「Iさん、ぜひうちのカレーを食べてみてください。ニンジンを入れて、福神漬けをたっぷり添えてお出ししますから」
そんなふうにお話ししたら、面白がってくださるかもしれません。
私の頭の中は、常にこういった「あの人が来たら、次はこうしよう」というアイデアでいっぱいです。お客様になりきり、想像力を思いきり広げる時間は、私にとっては至福の時間でもあります。
もちろん、こうした想像がいつもその通りに実現するとは限りません。
しかし、私自身の経験から一ついえることがあります。
それは、こうして常にお客様と同化しようとし、その気持ちを想像していれば、「相手の心を読む力」を確実に伸ばしていける、ということです。
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この続きは書籍『サービスマンという病い』でお楽しみください。
サービスマンという病い
どうすれば人の心を読み、つかむことができるのか……。多くのビジネスパーソンが頭を悩ませている問いでしょう。そのヒントを教えてくれるのが、「日本一の人脈を持つサービスマン」として知られる萩原清澄さんの著書、『サービスマンという病い』。超一流レストランの統括支配人として、経営者から芸能人まで、名だたるVIPをもてなしてきた萩原さんにしか書けない本書から、とっておきの秘策をご紹介します。