「一年3セットの服で生きる」スタイリスト、あきやあさみさんの新刊『「一セットの服」で自分を好きになる』は、自信をもって生きるために、心を満たす服をまず「一セット」つくりましょう、という提案。9月7日(土)には、服を人生の味方にする実践的な講座を開催します。あきやさんの提案する服で人生を切り拓く方法とは? 講座にもぜひご参加ください。
ブランドバッグは〝演歌〟である
みなさんは「ブランドバッグ」と聞くとどんな印象がありますか?
私が自身のnote(メディアプラットフォーム)で「ブランドバッグは〝演歌〟である」というタイトルの記事を書いたとき、読者のみなさんから今までで一番大きな反響がありました。
「私がブランドバッグを買った理由、友達に上手く説明できなかったから、言語化してくれて嬉しかった!」というお声や、「街中でブランド品を持っている人を見かけると、なんであんなに高価なものを買う人がいるんだろう? とちょっとモヤモヤしていたけれど、この記事を読んでみたらそういうことか! と視野が広がった」というご感想をいただいたのです。
長年ファッション関係の仕事をしている私の実体験を、お伝えしたいと思います。
私は百貨店に勤めていたとき、お客さまの特別なお買い物に何百回も立ち会ってきました。そして「いいバッグを買うとき」って他人からは想像もつかないようなドラマティックなストーリーが必ずあるものだな。と毎回感じていました。購入されるときに感極まって涙を流している方もたくさんいらっしゃったのです。
高価なものとなると、「かわいいから」「きれいだから」という理由だけではなかなか買えないもの。みんなが「人に見せるため」「見栄を張るため」に持っているわけではありません。それぞれに個人的な深い事情があって、哀愁や憂いを秘めたケースがとても多いのです。
こぶしを握って買う「演歌バッグ」
仕事やプライベートで身を尽くしたとき、自分を労うためにこぶしを握って歌を歌いたくなることがあります。そう、「高価なバッグを買う方」はだいたい心の中で〝演歌〟を歌っているのです。
相手の浮気で離婚が決まりました、それでは買います
「シャネル、マトラッセ」
最愛の人が亡くなりました、それでは買います
「エルメス、バーキン」
介護で疲れ果てました、それでは買います
「ロエベ、パズルバッグ」
自分の芸術表現に限界を感じました、それでは買います
「グッチ、ダイアナ」
ここで注意してほしいのは、みなさん「絶望、失望、悲しみを埋める代償行為」で購入しているわけではありません。こんな困難があった、受け止められない。そんなとき、「これからの人生を楽しく生き抜くためにいいバッグを買おう!」というネガティブの先にあるとてもポジティブな気持ちが作用しているのです。
自分で覚悟を決めて好きなバッグを買った方々は、「あのときはしんどかったけど、いい相棒(バッグ)を手に入れたことでこれからも頑張ろうと思えた」とおっしゃいます。
個人的な話になりますが、私は31歳のときに左目のほとんどの視力を失いました(今現在は薄く見えている程度です)。
そのとき、「ああ、この不安と苦しみを乗り越えるためにグッチのバッグを買うしかない!」と思ったのです。我ながら突飛な発想でしたが、こういった行動に走る方が、実はたくさんいらっしゃいます。
それまでは私もブランドのバッグを買うのは「生活に余裕があるお金持ちのすることだ」と思い込んでいました。しかし、自分の身に起こった不運に心が対応しきれず、何かで自分を奮い立たせたい! という気持ちになったのです。そんな理由で、「それでは買います、グッチバッグ」そう言って、マイクを握りました。
思い切って大好きなバッグを買ったら、すべてが上手くいき始めました。会社を辞めて独立し、仕事は楽しいし、性格も前向きになって友達も増えていきました。いい曲(いいバッグ)を引っ提げて全国ツアーをしている気分です。まるで人生を次に進めるためのピカピカのチケットを手に入れたような出来事でした。
ブランドバッグは〝鎮魂歌(レクイエム)〟でもある
もしくは「頑張った自分への〝鎮魂歌(レクイエム)〟パターン」もあります。
仕事を死に物狂いでやり遂げました、それでは買います
「フェンディ、ピーカブー」
つらかった学校を這いつくばって卒業しました、それでは買います
「サンローラン、カバス」
退職日まで勤め上げました、それでは買います
「ディオール、レディディオール」
裁判で勝訴しました、それでは買います
「メゾン マルジェラ、ファイブエーシー」
生きることに真剣に向き合っていると、自分の荒ぶる心を鎮魂しなければいけないときがあります。自分へのご褒美というものを超えて、「買うことでしか収まらない」という気持ち。
もちろん「いいもの」を買うときに、悲しいエピソードやつらい思いが必ず必要なわけではありません。また、「どんなに悲しいことがあっても、お財布事情で購入が難しい……」という方も気にすることはありません。
ただ「自分が歌うならこの曲だな(買うならこのバッグだな)」というのを〝真剣に決めておく〟だけで、かなり日々の生活にハリが出ます。
街でブランドバッグを持っている人を見たら「いい演歌を歌っているんだな」と思ってください。きっと人の数だけ個性的なストーリーがあるのを感じていただけると思います。
なぜ「ブランドバッグ」を選ぶのか
「ブランドバッグは〝演歌〟である」と言ってはいますが、「私には必要ないわ」という方もたくさんいらっしゃいます。心から気に入ったバッグがブランドものでないこともありますし、バッグは高価なものより、日常で使いやすいものが最高! という方も。誰もが買わなければいけないものではありません。
ちなみになぜ私がブランドバッグを愛しているのかというと、小さな頃からの憧れがあったからです。幼い頃テレビで見た、目が眩くらむようなファッションショー、雑誌で見ていた煌きらびやかな世界。
大好きなアーティストが身につけていた衣装、ミュージシャンが私服紹介で持っていたバッグの厳かな美しさ……。ブランドの持つ力は、私にパッと広い世界を見せてくれました。
ファッション関係の仕事に就いてからは、ラグジュアリーブランドの店舗に立つ年上の店員さんの立ち居振る舞いにも憧れを抱くようになりました。あんな風に凜とした立ち姿で対応ができるようになりたい。丁寧な仕草をお手本にさせてもらったり、サービススキルを学ばせてもらったり、仕事での成長に繫がりました。
みなさんにも小さな頃、ドキドキワクワクの刺激や、生きる希望を与えてくれた漫画や小説、音楽や映画などがあったかと思います。私の場合はそのひとつが「ファッション」でした。
私にとってブランドバッグを買うことは、子供の頃好きだった漫画やアニメの「原画」を大人になって買うようなもの。長年、気持ちを支えてきてくれたコンテンツへの恩返しの気持ちなのです。
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つづきは、『「一セットの服」で自分を好きになる」をご覧ください。
9月7日(土)開催のあきやあさみさん「“なりたい自分”でどう生きる? 服で人生を動かそう!」講座のアーカイブ販売中です!
詳細は幻冬舎カルチャーのページをご覧ください。
「一セットの服」で自分を好きになる
「一年3セットの服で生きる」スタイリスト、あきやあさみさんの2冊目の本『「一セットの服」で自分を好きになる』について
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