誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽をモチーフに、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに言葉を綴っていただきます。
悲しいだけの記憶は塵となって季節風に絡め取られ、楽園への行き先を見失う
あらゆる痛みを水に流して、想像力の船に誰もが乗ることができたら、世界は上出来なのに
憎らしくも憧れのあの人が気まぐれに贈ったノートを日記がわりにして、長い月日はゆっくりと流れた
忘却の沼に沈めた人生の恥部は、いつもより奮発した賽銭に添えて金王八幡宮にでもお供えしてこよう
一日遅れの飛行機で約束の海を目指す旅を、君は夕暮れ時に、僕は昼過ぎに
始まるのは束の間の孤独と、向き合うべきそれぞれの新陳代謝、選択は二択でしか
雲の海を冷たい青空の中をワープするように揺れて、時空のねじれを感じさせぬまま目的地へと誘う
機内にこだまする誰かの噂話に耳を盗まれないように、自然の摂理を美しく描いた本を携えて
言い争いが絶えない君と僕の些細な甘えは、凍てつく寒さのせいで深刻さを増すばかり
理想の具現化を迅速に要求する君と、現実との着地点を要領悪く促す僕
本当は混じり合うはずの奇跡みたいな水と油、それが平凡な慣習の影響で封印されてしまいそう
振り払うのは春節の前に、あらゆる埃を心ごと振り払いたい
大切な宝物を海にかえす日、こんな日が来ることを考えもしなかった
生活とは舞台の上で役を演じるようなものなのか、一変する状況の中で問われるのは行動のインプロヴィゼーション
どんな波と戯れて、次は何が訪れて、いつか私たちも約束の海へと還ってゆく
あの場所に着いたら、いつもよりゆっくりとそんな話をしながら、あらゆるすべてに寄りかかりたい
冨田ラボ『M-P-C “Mentality, Physicality, Computer”』(2018年、ビクターエンタテインメント)収録
渋谷で君を待つ間に
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
- バックナンバー
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