久しぶりにジムに行き、体組成測定をしてみると、体脂肪率が3%も増えていた!さらに、水分量、筋肉量、骨量のどれもが減っていて、数字上は明らかに宮田さんの肉体”衰えている”⁉
* * *
凹んで帰ってきた私に、息子と娘は、ああ、だめだめ、そんな数値鵜呑みにしちゃ、あんなのいい加減だから、と慰めてくれた。体脂肪率なんて食事の前後で全然違うし、水を飲んだだけでぐっと下がるし、それどころが足の裏が湿っているだけで数値が変わる、そういうものだからと。
だが、たとえ誤差はあったとしても、3%も増えていたのだから、悪化していることは間違いないように思える。
面白くない。
食生活もバター浸み浸みパンをやめたり、低カロリー食中心にしたりと改善し、サステナブル筋トレも3カ月続いているのに、体脂肪が3%も増えるんじゃアホらしい。中性脂肪が激減してうきうきしていた気分は一転し、もう筋トレなんか全部やめたい気分だった。
中性脂肪が激減したのに体脂肪率がアップするとはどういうことだ。何かが矛盾していないか。
仮に検査結果が正しいとした場合、字面からまず導き出されるのは、中性脂肪は減ったが、中性じゃない脂肪が増えたという理屈である。
中性じゃない脂肪とは何か。
酸性脂肪とかアルカリ性脂肪というようなものがあるのか。脂肪酸というのは聞いたことがあるが、アルカリは聞いたことがない。検索してみても、そんなものはなく、中性脂肪とは脂肪のことだと書かれていた。
謎だ。
中性脂肪は血液中の脂肪を測ったものであり、体脂肪率は体についた脂肪を測ったという考え方だろうか。肉には脂肪がまとわりついてるけど、血液にまでは流れ出していないとか……いや、そんな話じゃない気がする。
いったい何が起こっているのであろう。
きっと世のダイエッターたちも、普段からこんなふうに数字に裏切られては打ちのめされ、悲嘆に暮れながら日々過ごしているにちがいない。なんとなく想像がついた。何事もそううまくはいかないのである。
現状、考えられる原因は、ふたつ。
ひとつは検査結果がいい加減だった説。息子たちの言うようにMRIやCTで調べない限り正しい結果は得られず、体重計で測った数値はさっぱり当てにならないという立場だ。
もうひとつは中性脂肪と体脂肪率が、何らかの理由により、もともとリンクしていないという説。
実は健康診断の血液検査では、中性脂肪以外にコレステロールの値も調べており、そのなかで悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの値が基準値を超えていた。本来119以下であるべき数値が148もあった。実は私は昔から悪玉コレステロール値が高い。そして、148という数値は、今より中性脂肪が倍あった前回計測時よりも増えているのである。つまり血液検査でも、中性脂肪と悪玉コレステロールの値が逆の動きをしている。そして聞くところによれば、この悪玉コレステロールと内臓脂肪には相関関係があるらしいのだ。
こんがらがってきたが、とにかく、仮に体脂肪率が本当に増えたかどうかわからないにしても、少なくとも内臓脂肪は減っていない可能性があると言えそうだ。
私はどうすればいいのか。
中性脂肪の次は、悪玉コレステロールを減らすべきだろう。あやふやな体脂肪率のことはいったん忘れ、次なる健康診断に向け、悪玉コレステロール打破を目指す。何しろ悪玉というぐらいだから、打倒すべき相手であることは明白であろう。
と思ってネットで調べていくと、今度は、悪玉コレステロールは必ずしも悪じゃない、という動画が出てきた。コレステロール値を無理に下げる必要はないとかなんとか。
なんでも近年、コレステロールの基準値が見直されて緩くなったうえ、基準値を出している団体も日本臨床検査標準協議会だの、日本人間ドック学会だのと、ひとつでなくてそれぞれ数値がちがっているなど、コレステロール界隈はいろいろと見解が変動しているようだった。
どんどんわからなくなってきた。中性脂肪であれ悪玉コレステロールであれ、それらを減らすには、適度な運動と禁酒禁煙、そして野菜を多く取り、糖分や脂質の取り過ぎに注意することなどと書かれてあり、やることは同じである。つまり、これまで通り体にいいものを食べるしかないわけだけど、これまで通りでは悪玉は減らない。これ以上何を食べ、何を食べないようにすればいいのか。 いや、そりゃあ、たまにアイスとか食べるし、トンカツや、天ぷらもごくまれに食べている。ラーメンだって月に1杯ぐらいは食べている。それもダメなのだろうか。
ある動画は、脂質ではなく、糖質を控えよ、と主張していた。炭水化物を減らせ、なかでもパンをやめよと。
パンもだめなのか。
私は去年、毎朝バター浸み浸みパンを2枚食べていたのを家族に注意され、ハチミツきな粉パンにあらためた。さらにそれもほどほどにと言われたので、今では低カロリージャムとチーズをのせて食べるようにしている。でも朝食がパンであるのは変わらない。パンがよくなかったのであろうか。
なんか腹が立ってきた。
パンぐらい食ったっていいではないか。いったいどこまで我慢すればいいのか。ストレスが果てしないぞ。
原点に返って今一度考えてみたい。私は何がしたいのか。
発端は、筋トレによって自分を活性化し、運気をあげようと思ったことだった。ただそれだけのシンプルな願いだったのだ。
それがいつしか体脂肪率だの中性脂肪だの内臓脂肪だの、泥濘のようないわゆるダイエット界に引きずり込まれ、食事を制限するはめになってしまっている。それで体が整うならいいが、数字にとらわれるばかりで、肝腎の筋力はむしろ衰えが加速しているらしい。
衰えを最小限にとどめ、元気に生きること。
究極の目的はそこだ。パワーの出る肉食わせろっての。
だいたい酒も煙草もやらないってだけで優秀ではあるまいか。スナック類も炭酸飲料も最近はさっぱり口にしていない。野菜も食ってるし、豆類は大好物だし、もうそれで十分じゃないか。たまにケーキを食べるし、鯛焼きには目がない私だけども、これ以上我慢して生きる必要が果たしてあるのか。
そして私は見つけてしまった。内臓脂肪レベルは、60代だと12.0ぐらいが標準というデータを。10以上は要注意だそうだが、私は9.6。問題ないのではないか。
もう脂肪で悩むのはやめよう。それより問題は筋肉だ。こんなに歩いているのに筋肉が増えていない。散歩には実はたいした効果はないのではあるまいか。
そんなわけで目下、途方に暮れている。
(連載は「小説幻冬」でも掲載中です。次号もお楽しみに!)
衰えません、死ぬまでは。
旅好きで世界中、日本中をてくてく歩いてきた還暦前の中年(もと陸上部!)が、老いを感じ、なんだか悶々。まじめに老化と向き合おうと一念発起。……したものの、自分でやろうと決めた筋トレも、始めてみれば愚痴ばかり。
怠け者作家が、老化にささやかな反抗を続ける日々を綴るエッセイ。
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