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いつまで自分でせいいっぱい?

2025.02.04 公開 ポスト

#74

あの頃すきだったもの佐津川愛美

たまごっちが欲しい。ここ数年ずーっと密かに思い続けている。けれど、なかなか手が出ない。

小学生の頃に大流行したたまごっち。
あの頃は入手困難すぎて、抽選に当たらなければ買うことすら出来なかった。イトーヨーカドーに行って、ドキドキしながら結果を待った。当たったときの嬉しさと言ったら‼︎イトーヨーカドー内で歓喜した自分の様子がいまだに頭に残っている。

 

そもそもテレビゲームというものとは無縁の家で、
ファミコンもプレステもない家だったからか、友人の家に行ってたまにやらせてもらっても、ちっともうまく出来なくて、楽しめなかったという記憶。

唯一、白黒時代のゲームボーイは1つあったけれど、4人兄妹のため、順番が回ってくるのには時間がかかった。主に兄の手に渡ってしまったときには、ルールが守られることが少なく、自分の番にならないことに何度ヤキモキしただろうか。でも兄達には逆らえないという気持ちがうっすらあったから、なかなか言い出せずに気持ちを押し殺していた。そして、自分が手に出来たときには、いかに兄たちに見つからないようにやるか、なるべく長くやりたくて、隠れたりズルをしていたので、お互い様である。

たまごっちも同様。
寿命を迎えたら交代制度。なかなか回ってこないと思ったら兄が飽きていて、放置されていたとき、どれだけ腹がたっただろうか。

いっときハマりはするけれど、どっぷりゲームに浸かれなかったからか、いまだにゲームというものとは距離がある。本当は家に帰ったらゲームやろう!とか、新しいゲームの発売日を心待ちにするとか、そういったことに憧れている。
憧れているといえば、ジャンプをずーっと読んでいる人が羨ましい。毎週楽しみがあるって、羨ましすぎる。

私には、そういう瞬間と出会える趣味みたいなものがないのだ。

家で何をしているのかとか、休みの日は何をしているのかと聞かれることがよくある。初めましての人と共に作品を作り上げる仲間になっていく職業柄、コミュニケーションの一環として聞かれるのだろう。

で、そのたびに、私って何をしているのだろう?と考える。そして、特に何にもしていない。と毎回思うのだ。

映画は好きだけれど、見方が完全に職業病だし。
次の作品に向けた資料的な見方だったり、無意識に研究っぽいところもあるし。
おそらく旅行が私の趣味と言えるとは思うけれど、たまにのスペシャルなものではなく、家で毎日のように頻繁に触れられる趣味に憧れるのだ。

でもなかなか出会えずにここまできてしまった。
で、ストレス発散やリラックスする為の趣味を見つけるのには、6歳くらいまでの頃に好きだったもの、ハマっていたものをやるのがいい、とラジオで聞いたことがあり、再ブームとなっている「たまごっち」に行き着いたという訳だ。

【楽】あけおめさんぽ。きれい。

実は私は、小さい頃の記憶があまりない。小学校低学年くらいまでの記憶が極端に少ない。特に、妹との記憶が全くない。妹は「私の真似しないで!」と、よく愛ちゃんに言われていたと言うけれど、私は本当にそんな記憶が1つもない。妹と一緒に遊んでいた記憶も1つもない。兄のサッカーに連れていかれて、河川敷で遊んでいた記憶はあるけれど、恐らく妹も一緒に居たはずだけれど、全く覚えていない。

今の私にとって、妹は唯一の理解者で、唯一の心友だと思っているけれど、昔の私にとっては恐らく違ったのだと思う。きっと、姉になったことを受け入れられなかったのだと予想する。もっと甘えたかったのだろう。色々あったのね、幼いわたし。

不思議なくらい、妹との記憶がないので、多分記憶を消してしまったのかなと思っている。もしかしたら本当はその頃に夢中になっていた遊びがあったのではないかと思う。そう、本当はそれが知りたいのだ。

本当は小学校に上がる前のあの頃に夢中になっていたことを思い出したいのだけれど、しっかりとした古い記憶が9歳10歳あたりだから、たまごっちだけが私の幼い頃のハマったもの認定。

でも、なかなか手を出せないのは、本当はもっと昔に好きだったもの、ハマっていたものに出会いたい、思い出したいという、エゴなのである。

あの頃の記憶ちゃん。
そろそろ戻ってきてくれないかしら。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

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佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

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