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藤岡みなみさんが、コロナ禍のタイミングで、とっても面白いチャレンジをしました!
その時の記録が、文庫本に。タイトルは『ふやすミニマリスト 所持品ゼロから1日1つだけモノをふやす生活』。
「ミニマリスト」といえば、モノを減らして最小限のものでスッキリした生活をする人のことですよね。となると、タイトルにある「ふやすミニマリスト」ってどういうこと??ーー藤岡さんは、何もない部屋に、ひとつずつ「必要なもの(必要だと思われるもの)」を持ち込んで100日間暮らし、その中で、生活の本質、生きるために自分には本当に何が必要なのかを、見極めたのです!
ある意味、壮大な”冒険の記録”です。さっそく、試し読みを展開します。
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カバーイラスト 髙橋あゆみ
「はじめに」より
この本は、片付けの極意を伝授する本でも、ミニマリストになることを勧める本でもありません。たとえるなら、無人島で暮らして人間らしさを取り戻した100日間の記録、みたいなものです。いえ、無人島には行っていません。むしろずっと家にいました。
ずっと家にいながらにして、サバイバルな挑戦。所持品ほぼゼロでスタートし、1日1つだけ道具を取り出せるというルールで100日間生活してみました。きっかけは、『100日間のシンプルライフ』(配給:トランスフォーマー、フラッグ)という映画についてのコメント依頼をいただいたことです。
(中略)
もともと私の家はシンプルライフにはほど遠い状態でした。おたまだけで8つも持っているし、10年前のもう着ない服も捨てられないし、くだらないものであればあるほど集めたくなる性格で、変なお面だけをしまってある引き出しがあります。
冷静に考えると、そんな私が、モノのない暮らしに耐えられるとは思えませんでした。
チャレンジを始めたのは2020年の夏の終わり。新型コロナの影響で仕事はほとんどリモートに切り替わり、大好きな旅行も簡単にはできなくなっていました。閉塞感を感じることも多い日々。刺激を求めて外に出ていけない代わりに、関心事の矢印を家の中や自分の内面に向かわせるのもいいなと考えました。結果的に、その直感は正しかったと思っています。100日間のシンプルライフのチャレンジは、まさに内なる冒険といえる体験だったのです。
映画では、家じゅうのすべての道具を倉庫に預けて毎日取りに行くというシステムでしたが、私の場合は自宅とは別に新しく家を借りて挑戦しています。また、インターネットでリアルタイムで報告していく都合や、家族の他のメンバーへの影響を最小限にすることを考慮した結果、本当の所持品ゼロ――例えば裸でスタートすることは現実的ではないと思い、下着や最初の服、コンタクトレンズ、その他マスクや消毒液などは初期装備としてノーカウントにしました。
これでかなりハードルが下がるのですが、それでも布団や包丁など基本的な道具のない生活は困難の連続で、人生をリセットしてレベル0からやり直しているような強烈な新鮮さがありました。
〈ルール〉
・自宅から1日1つだけモノを取り出せる
・食料の購入はOK(調味料は毎回カウントする)
・電気・ガス・水道のライフラインは完備
・最低限必要な初期装備を設定
・期間は100日間
日常で当たり前のように感じていたことが覆(くつがえ)される場面もあれば、なぜこのことに気づかずに生きていたんだろうと思うこともあり、生まれて初めて「暮らす」ってどんなことなのか本気で考えました。それは、ただ生き延びるということとは違うものでした。例えば……
・冷蔵庫ってタイムマシンだった
・まだ必需品がそろっていないのに、9日目に本がほしくなった
・意外 に要らなかったものは、炊飯器や財布
・洗濯機で最も重要な機能は、「汚れの洗浄」よりも「脱水」だと思った
・何もない部屋で過ごすと1時間が4時間くらいに感じる
失われていた感性が蘇り、時間が本来の流れ方に戻っていった100日間の旅でした。
第1部は、1日目から100日目まで毎日どんなものを選んだのか、またどのように感じて過ごしていたかの記録です。
第2部では、100日間を通して気づいた100個のことについてまとめました。
なかなか気軽に「ぜひ皆さんもやってみて下さい!」とは言えませんが、この本を通して暮らしを再発見していく感覚を一緒に味わってもらえたら嬉しいです。
目次
ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活
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シンプルライフとはほど遠い生活をしていた著者が部屋を借り、所持品ほぼゼロの状態から、「1日1つ道具をふやす」という100日間のチャレンジを始める。1日目に敷布団、7日目に爪切り。スマホは果たして何日目!? 電子レンジは不要、タオルと毛布は心の必需品、大切なものの“普段使い”で幸福感が増す……など、生活の本質に迫る画期的な一冊。