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ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活

2025.02.23 公開 ポスト

音楽は、他のどんな生活必需品より“必需な”欲求だった――!藤岡みなみ(エッセイスト/タイムトラベラー)

なにもない部屋をひとつ借り、「1日にひとつだけものを増やしていい」というルールで始めた、100日間のチャレンジ。

少しずつ生活が「ちゃんと」しつつある中で、意外な(?)こんなものも入ってきました!

藤岡みなみさんの、文庫新刊『ふやすミニマリスト 所持品ゼロから1日1つだけモノをふやす生活』より。

*   *   *

19日目 掃除機

(イラスト:葉月)

生きていると、どうしたって汚れる。調理器具の前に掃除用具を手に入れたい人も多いだろう。でも私はまず何かを作ることのほうに重きを置いてしまう性格なので、こういう順番になった。

以前何かの雑誌のインタビューで、お片付けの専門家の方が「床にモノを置くくらいなら死んだほうがマシ」と言っているのを目にしたことがある。太文字で、大きい見出しになっていた。「じゃあ私もう死んでるじゃん」と思った。

でも今なら少しわかる(死んだほうがマシ、の部分は相変わらずわからない)。何もない部屋の掃除は1分で終わるのだ。ずぼらな私はこれまで床にモノを置きまくっていたが、ずぼらな私だからこそ何も置かないほうが身のためだった。

20日目 イヤホン

(イラスト:葉月)​​

秋の風があまりに心地よくて、今すぐこれを吸い込みながらイヤホンで音楽を聴かないといけない、という衝動に駆られた。それは他のどんな生活必需品より必需な欲求だった。

音楽は自分にとって欠かせないものだけど、この生活を始めてからしっかり音楽を聴くのは久々だ。AirPods Proはノイズキャンセリング効果で音への没入感がすごい。久しぶりだからより響くのだろうか。

音楽は自分に欠かせないものと言いつつも、思えばこれまで圧倒的に「ながら聴き」の時間が多かった。仕事をしながら、家事をしながら、散歩しながら、音楽を聴く。本当の意味で音楽を聴くことのみに集中しているのは、ライブを観に行った時だけ。そのライブにもこの1年ほど行けていない。ライブハウスや劇場は、音楽や作品にだけ集中できる最高の施設だとつくづく思う。集中という贅沢。マルチタスクに慣れすぎている現代人には、あの聖なる空間が必要なのだ。

受験生だった中学3年生の時、勉強のご褒美を音楽にしていたのを思い出した。30分集中したら1曲聴いていい、とか、このドリルが終わったらアルバム1枚聴いていい、とか。自分で決めたゴールに到達すると、ベランダに出てMDプレーヤーでうっとりと音楽を聴いた。

シンプルライフで久々にイヤホンを手に入れたら、あの時の感じが蘇った。イントロから胸がはずんで、たまらなくなるあの感じ。耳から入ってきたメロディがみぞおちや指先まで満ちていく心地。15歳の耳に戻れるなんて、シンプルライフの効能はすごい。

21日目  食器用洗剤

(イラスト:葉月)​​​​

調味料を使わずに料理しているといっても、洗剤なしに鍋や皿を洗うのは至難の技だった。食器用洗剤を手に入れたことで、いくら洗っても完全に洗えてないようなモヤモヤ感とおさらばできた。このモヤモヤは心にもくるやつだったので早めに解消できてよかった。水だと汚れが落ちにくいから洗う前に拭き取る習慣がついたけれど、そのほうがほんの少しエコだから続けたい。

また爪を切った。7日目に爪切りを手に入れて切って以来、14日ぶりということになる。これまでいちいち数えたことがなかったから「爪は伸びるもの」と漠然と理解していたけれど、今さら「爪ってに本当伸びる」と初めて知った気分になった。生きてる。

(つづく)

関連書籍

藤岡みなみ『ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活』

シンプルライフとはほど遠い生活をしていた著者が部屋を借り、所持品ほぼゼロの状態から、「1日1つ道具をふやす」という100日間のチャレンジを始める。1日目に敷布団、7日目に爪切り。スマホは果たして何日目!? 電子レンジは不要、タオルと毛布は心の必需品、大切なものの“普段使い”で幸福感が増す……など、生活の本質に迫る画期的な一冊。

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ふやすミニマリスト 所持品ゼロから、1日1つだけモノをふやす生活

シンプルライフとはほど遠い生活をしていた著者が部屋を借り、所持品ほぼゼロの状態から、「1日1つ道具をふやす」という100日間のチャレンジを始める。1日目に敷布団、7日目に爪切り。スマホは果たして何日目!? 電子レンジは不要、タオルと毛布は心の必需品、大切なものの“普段使い”で幸福感が増す……など、生活の本質に迫る画期的な一冊。

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藤岡みなみ エッセイスト/タイムトラベラー

1988年、兵庫県(淡路島)出身。上智大学総合人間科学部社会学科卒業。幼少期からインターネットでポエムを発表し、学生時代にZINEの制作を始める。時間SFと縄文時代が好きで、読書や遺跡巡りって現実にある時間旅行では? と思い、2019年にタイムトラベル専門書店utoutoを開始。文筆やラジオパーソナリティなどの活動のほか、ドキュメンタリー映画『タリナイ』(2018)、『keememej』(2021)のプロデューサーを務める。

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