
4月20日(日)、塩谷歩波さん『純喫茶図解』と、古賀及子さん『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』の発売を記念して、対談トークイベントが開催されました。
過度な演出はしない。忠実な視点で描かれる絵と文章
編集者時代、小杉湯の番台をしていた塩谷さんを取材したことがあるという古賀さん。奇しくも同じ日に幻冬舎から本を発売することとなり、今回のトークイベントでお二人は6年ぶりの再会を果たしました。
最初の話題は、お互いの本を読んだ感想から。
『純喫茶図解』を読んだ古賀さんは、「(6年前の塩谷さんの著書である)『銭湯図解』のときと目線は同じまま、同じ切り取り方で純喫茶を描いていると感じた」と話します。
塩谷さんの絵の手法であるアイソメトリックについて、「家をぶっ壊している最中の切なさと、これから新しい家が建つような希望」を同時に感じたという古賀さん。
「歴史が続いていく力強さと、どこか儚さが共存する塩谷さんの作品。失われる景色を保存しようとする眼差しを感じた」と独自の感想を述べられました。
銭湯に行った後に、純喫茶で一服するのがマイブームだったという塩谷さん。なぜ銭湯の後に純喫茶をテーマに描くことになったのか、その経緯を問われると「他にも描きたいものはありましたが、いつか建物がなくなるかもしれないという文化的な背景を考えたときに“純喫茶”が銭湯の次にすごくいい流れだと思った」と話します。
一方で、『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』を読んだ塩谷さんは、「私が一番好きなのが、『田無、夏、恋人の家でひとりでエヴァンゲリオンを観る』というお話でした。昔、付き合っていた恋人の家をなんとなく見てみるってすごいエモいなって……。これを読んで、私も昔の恋人の家を調べちゃったんです」と振り返ります。
「古賀さんのエッセイは、自分の思い出と重ねてノスタルジーを感じられる面白さがある。エッセイは演出もできるのに、古賀さんはちょうどいい距離感を保って描かれている。お風呂で例えると、39度くらい!ちょうどいい(笑)」と塩谷さん。
「昔の思い出を描写するにあたって気を付けていることはありますか?」と質問された古賀さんは、「まずは自分の記憶を思い出し、その後に頭の中に景色を浮かべ、その景色をじっくり観察する」ことを心掛けていると話します。
また、トークが進む中でお二人の意外な共通点が浮かび上がります。
「塩谷さんの絵はどえらい観察眼じゃないですか。細密な景色を頭に思い描き、それを絵にするか文にするか。その違いだと思います」と古賀さん。
記憶の中の景色を客観視する古賀さんと、目で見た建物や人物を俯瞰で描く塩谷さん。独りよがりではない冷静な視点がお二人の作品に共通していることが発覚しました。
トークの後半では、「お二人のクリエイティブな情熱や才能はどこから湧いてきますか?」「もしもお二人が犯罪に巻き込まれて、『犯人のモンタージュを書きなさい』と言われたら、できると思いますか?」など参加者の方から寄せられた質問にもお答えいただきました。
画家として活躍する塩谷さんと、エッセイストとして才能を発揮する古賀さん。お二人のトークは白熱し、あっという間の1時間となりました。
アーカイブは、5月19日(月)17時まで視聴可能です。ぜひご利用ください。
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