自律神経の名医・小林弘幸教授の新刊『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』から、心身に与えるスクワットの効果をお教えします。また、本書には、「朝晩5回から」の簡単で何歳からでもできる「ゆるスクワット」の6週間プログラムも掲載。
その6 自律神経のバランスが整う
本来、運動をすると、自律神経のバランスは崩れやすくなります。
特に、ハードな運動の場合、酸素を取りこむ量が減るため、交感神経が過剰に働きます。交感神経が過剰に働くと、血管が収縮し、水の流れているホースを指でギュッと押さえたときのように、ピューッと勢いよく血液が流れるようになります。すると、細くなった血管内を赤血球や白血球、血小板などがものすごいスピードで流れることになるため、血管の内側を構成している細胞が傷つき、その傷に血小板などが引っかかって血栓になります。その結果、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。
しかし、スクワットをすると自律神経のバランスが整います。その最大のポイントは、「深い呼吸」にあります。息が切れるような運動に対して、スクワットは、ゆっくり深く呼吸をしながら行うことができるからです。
もちろん、「深い呼吸」をしながら行う運動はスクワットだけではありません。
たとえばヨガは、呼吸を大切にする運動として知られています。健康効果の高い素晴らしいものですが、実はポーズによっては、取りこむ酸素量が減ってしまうこともあります。なぜなら、深い呼吸をするためには、まずはしっかり息を吐いて肺を空っぽにしてから、たっぷり酸素を吸う必要があるのですが、体が前傾していると、肺が圧迫されるため、息を吐き切れなくなるからです。
その点、本書でご紹介しているスクワットは、常に上半身をまっすぐに保つので、深く吐き、たっぷり吸うことが可能です。
余談になりますが、背筋を伸ばした状態と、前傾した状態で、呼吸の仕方がいかに変化するか、簡単な方法で確認できるのでご紹介しましょう
(1) ハンカチを顔から30センチほど離して持つ
(2) 背筋を伸ばして、顔の前のハンカチに息を「フーッ!」と吹きかける
(3) 今度は体を前傾させて、(2)と同様に息を思いっきり吹きかける
いかがでしょう。背筋を伸ばして息を吹きかけたときは、ハンカチは勢いよくたなびいたはずです。いっぽう、前傾した状態では、かすかに揺れる程度だったのではないでしょうか。ちょっとした姿勢の違いで、呼吸はこれほど変わるのです。