藤沢数希さんの小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』のドラマ化(2017年12月28日に放送)を記念して、各電子書店で「脱・草食系男子フェア」を開催しています!その中から日替わりで"脱・草食系男子本"をおすすめします。
『ヤクザに学ぶ恋愛交渉術』 山平重樹
ヤクザは交渉のプロ中のプロ。そして、その交渉術の真価は、女を口説く時にも有効に発揮されます。話術と教養、一途な純情、全身全霊の奉仕、ダンディズムと美学、胸のすくような男っぷり……。様々な実例からすぐに実践できる恋愛交渉術の秘訣を検証します
なぜヤクザがモテるのか。
昔ほどモテなくなったとはよく聞く話ではあるが、それでもヤクザが女にモテるというのはいまも変わらぬ事実である──といっても、異を唱える人はあまりいないだろう。
「銀座のクラブでもどこでもいいんだけど、こんないい女がいるのかって、信じられないくらいのいい女っているでしょ、どこにでも。そうすると、そういう女っていうのは、大概、ヤクザの女ですもんね」
とは、某ビジネスマン氏の弁だが、確かにヤクザの女は、びっくりするほどいい女と相場が決まっている。
では、なぜヤクザは女にモテるのだろうか。
当の親分衆や関係者はどう思っているのか、何人かの人に訊いてみると、
「うーん、どうしてでしょうね。確かにいまでも、ヤクザが大好きという女はいますからね。映画やビデオでしか観たことのない世界を、実際に覗のぞいてみたいとか知りたいといった、怖いもの見たさみたいな気持もあるのかな」
「そりゃ女はやっぱり強い男が好きなんですよ。メスの本能でね、強いオスを求める。それと、カネの力でしょ。経済力のある男。強くてカネを持ってて、何十何百という男たちの上に君臨する権力のある男となりゃ、女は寄ってきますよ。権力っていうものにも、女は弱いんだね」
「いやあ、いまはさっぱりモテないよ。昔はね、ヤクザがカッコいいと思われた時代もあったんだけど、いまじゃ、女の子からすれば、ヤクザなんてバカじゃないの、という反応でしょ(笑)。だから、若いヤツのヤクザのなりてもないしね。いい服着て、ベンツ乗って、いい女連れて歩ける──なんてヤクザドリームは、文字通り幻想だってわかってしまったんだね」
「ヤクザがなぜモテるかって? そりゃ、こんな平和ボケした日本で、唯一命のやりとりしてる連中だから、バカはバカでも超ド級のバカ、ひとけたスケールの違うバカだよ。先行きどうなるのか、計算さえできない。ただ、そういうバカに浪漫を感じる女もいるだろうし、だいたい親分というのは、大勢の男たちから、死ぬことも長い懲役も辞さないというほど惚ほれられてる男だからね。男たちをもそれほど惚れこませる男が、女にモテないわけないだろ」
「だいたいヤクザは、ある種の女の母性本能をくすぐるということもあるんじゃないですか。ヤンチャでね、どこか危なっかしくてね……。強さの固まりみたいでも、弱さも同居してますからね。そういう弱さやもろさ、寂しさといったものが、女と二人でいるときにフッと出てしまうんだね。傷つきやすさというか、男としての情緒不安定なところが……どうしても女の前では無防備になるからね。そうすると、女とすれば、何か手をさしのべたいという気になるんじゃないかな。……いや、私も多分にそういうところはありますよ」
──とまあ、いろんな答えが返ってきて、興味深かった。
ヤクザはなぜ女にモテるのか。
それは別にそれほど難しい命題ではないかも知れない。自分たちの子どものころや学生時代のことを振り返って考えてみれば、誰にでも思いあたるフシがあるであろう。
ビジネスマンも、少し不良っ気のある方がいい
真面目な優等生と不良少年とではいったいどちらが女の子にモテたか。
不良少年といっても、万引きやゆすりたかりばかりやっているような連中は問題外として、そうではなくて、子どもの目から見てもカッコいいシビれるような不良少年というのはいたはずだ。学校の規則などクソ食らえと権威に背を向け、喧嘩ばかり繰り返しているのだが、決して弱い者いじめはしないし、万引きや恐喝もしなければナンパもしないという徹底した硬派の不良少年。
そんな不良少年と、勉強が一番できて生徒会長もつとめているような優等生とでは、どっちが女の子にモテたかといえば、圧倒的に不良少年のほうだったではないか。
これをビジネスマンの世界に置きかえてもいい。真面目だけの社員より、不良っ気のある社員、ちょっと崩れた雰囲気を持っているヤツのほうが、どうも女子社員の興味をひくようなのだ。
やはり、〝ワル〟〝不良〟というものには、女を魅了してやまないいわくいいがたい何かがあるのだろう。
私自身、どちらかといえば不良少年とは程遠い、真面目な部類に入る少年であったから、昔から不良に対する思いというのは、歌人の春日井建が歌った、
われよりも
熱き血の子は許しがたく
少年院を妬みて見をり
と共通する心情がある。不良というのはどうにも気になる存在で、そうした思いはいまだに続いているようなのである。
不良が流行らす、最先端のファッション
組関係者がこういう。
「それとヤクザが女にモテるのは、昔から〝モロッコハット〟で、巷ちまたのファッションの最先端をいってるようなところがあるでしょ。それは姿格好だけじゃなくてね、精神的な面でもダンディズムというのかな、独特の美学というものを持ってますよ。そこが男にとってもたまらなく魅力を感じるし、女にしてもクラッときちゃうところじゃないですか」
なるほど、いわれてみればその通りで、たとえば、伝説のヤクザである〝ボンノ〟こと元山口組菅谷組組長の菅谷政雄という人のおシャレは有名で、彼のファッションは映画俳優にも影響を与えたといわれる。
かつての銀座の愚連隊のOBがこう語ってくれたことがあった。
「ボンちゃんは山口組へ行く前の愚連隊時代、よく神戸から東京こつちへ遊びに来てた。ラバーソールなんて靴が、銀座中の不良に流は行やったのも、ボンちゃんがこっちへ持ってきたからですよ」
横浜の伝説の愚連隊、モロッコの辰のダンディズムもよく知られている。
若い時分にモロッコの舎弟だったという人が、
「兄貴はものすごいオシャレだったね。着るものはむこうの洋服ばかり。進駐軍から手に入れたんだ。なりをくずしたら、遊んでいる人間はメシを食えないというのが兄貴の持論でね。懐ふところに一銭もなくても格好だけはちゃんとしていろ、という方針だったから、兄貴の一統はみんなオシャレだった」
モロッコと十七歳のとき結婚、二十三歳で別れるまで、七年ほど生活をともにした女性がいる。
おふじさんといったが、この人がモロッコと所帯を持ったとき、まず驚かされたのは、そのオシャレぶりだったという。おふじさんはモロッコの服にはアイロンさえかけさせてもらえなかった。モロッコ自らアイロンをかけるのがつねだったからだ。
出かけるとなると、モロッコはポマードで髪をオールバックに固め、服にあわせてネクタイを選んだ。当時流行のラバーソールの靴をはき、東京ハットと呼ばれたソフトをかぶった。
「不良は身だしなみが大事だ」
というモロッコにならって、モロッコの舎弟たちも皆ソフトをかぶり、それはいつか〝モロッコハット〟ともいわれるようになった。
「オシャレでしたね。むこうのもんばっかり着ていたし、着こなしが上手でした」
とおふじさん。
絶体絶命の時でも、命乞いしない
モロッコのダンディズムはファッションばかりではなかった。独特の愚連隊魂を持っており、死ぬまでそうした美学を貫いた男だった。
「死ぬまで、事業をやるとか、そんな生産的なことには何一つ手を染めなかった。根っからの愚連隊。格上の者からの恐喝一本だ。相手が博徒の大親分であろうと誰だろうと関係ない。《モロッコの辰》という名刺一枚で自在にカネをむしりとっちゃう」
「ただし、カタギや弱い者いじめはいっさいしない。舎弟たちが大手を振って道の真ん中を歩いていたりすると、怒るんだ。バカヤロー、不良は道の隅っこ、日陰を歩け、って」
とは、かつての横浜愚連隊のOBの弁だった。
また、十代のころ、横須賀のモロッコの辰のもとで部屋住みをした経験があるという人物は、こう語ってくれたものだ。
「私がモロッコから教えられたのは、男がギリギリに追いつめられたときの態度はどうあるべきかということでした。『いいか、オレたちは命乞いしたら終しまいなんだ。相手がいっぱいいてな、こっちは一人、どうもがいても勝てないとき、そりゃ当然、締められるだろう。そういうときには、痛いてえとか、助けてくれといっちゃ、終まいだ。そういうときの態度だけが他人に語られるんだ』って。実際、私自身、そんな場面にあったこともありますが、折につけ、モロッコのこの言葉を思いだしましたね」
こうした男のダンディズムにこそ、女はシビれるのである。
それはたとえば、〝愚連隊の元祖〟といわれた万年東一にも共通のものだった。
万年を「兄さん」と呼んで実の兄のように慕った治子という女性がいた。
戦後間もない時分、たまたま治子の懐具合が潤沢で、バッタリ銀座で万年と会ったときなど、
「兄さん、お茶御馳走するわ」
と、よく万年を誘ったのだが、万年が女にカネを払わせるわけがなかった。そんな誘いを受け、仮に自分の懐に一銭もないときは、
「せっかく治子が御馳走してくれるというのに、オレはいまお腹がガボガボなんだ。悪いなあ」
といって断るのがつねだった。どんなに自分がひもじくても、女に奢おごらせることを恥としたのだ。
逆にカネがあるときは、
「おい、治子、メシ食いに行こう」
と有無をいわせず引っ張っていった。
それはいままで治子がつきあった、どのカタギの男たちとも違っていたのである。かつて大恋愛した男など、すべて治子にカネを払わせても恬てんとして恥じないばかりか、当たり前のような顔をしていたという。
〈あの人には、男としての誇りもなかったんだわ。せめて彼に、万年の兄さんのひとかけらでも、男の意地やプライドのようなものがあったなら……〉
と治子は改めて思い、万年を通して、いまさらながら若き娘時分、あまりに本物の男を知らなさすぎた自分が思いやられたという。
どんなにカネがなくてもつねに最高のオシャレで身を飾り、飢えていてもそんな様子はみじんも人に見せず、絶体絶命の場に追いつめられても笑って肚はらをくくること──というのが、不良のダンディズムであり、美学であった。それが多くの女性のハートを射止めることにもなったわけである。
(「第一章 女はこう落とせ」より)
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『ヤクザに学ぶ恋愛交渉術』目次抜粋
女をオトす極意は、一押し、ニカネ、三オトコ──である
宝石が嫌いな女がいないように、花が嫌いな女はいない
ときにはストレートに攻めるのもいいかも知れない
女をその気にさせるのは、胸のすくような男っぷりである
何だかんだいっても女は押しの一手である
惚れる前に惚れさせろ ──女であれ安目を売るべからず
男気と機が熟するのを待つことが大事なのだ
男の強さと同居する弱さが女心をくすぐるときもある
女には仁義を通し、据え膳を我慢しなければならないときもある
女の喜ばせかたはテクニックにあらず、全身全霊をこめて奉仕すべし
家族を愛せない男が女を愛せるわけがない
女が男の〝純情〟に弱いのは万国共通である
女とはきれいに別れろ
男が伸びるも伸びないも女次第である
自分の色に染めてこその女である…など
◇今だけ20%引き!脱・草食系男子フェア対象タイトル一覧◇
『ぼくは愛を証明しようと思う。』 藤沢数希
『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』 湯山玲子/二村ヒトシ
『ルポ 中年童貞』 中村淳彦
『ヤクザに学ぶ恋愛交渉術』 山平重樹
『あの人は、なぜあなたをモヤモヤさせるのか 恋愛編』 宮崎智之
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『男と女がいつもすれ違う理由』 はあちゅう/藤沢数希
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脱・草食系男子フェア
藤沢数希さんの小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』のドラマ化を記念して、
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今回はその中から一部を紹介させていただきます。