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本当は嘘つきな統計数字

2019.08.08 公開 ポスト

グー、チョキ、パー…ジャンケンで勝つ確率が高いのは?門倉貴史

ある調査によると、日本人の「年間セックス回数」は世界最下位だそう。しかし、それは真実なのでしょうか? こうした統計データ、アンケート調査、世論調査などにひそむ「嘘」をあばくのは、テレビでもおなじみのエコノミスト、門倉貴史さんの『本当は嘘つきな統計数字』。だまされないために、ぜひ読んでおきたい本書の一部をご紹介します。

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統計でわかった意外な事実

私たちは確率という言葉を頻繁に耳にするが、一口に確率と言っても、そこには様々なタイプの確率が存在する。

(写真:iStock.com/Evgeny_D)

初等教育や中等教育で習う確率は一般に「数学的確率(古典的確率)」と呼ばれる。数学的確率とは、ある実験や観察(試行)で、起こりうる全ての結果がどれも同じ程度に起こると期待されるとき、そこから導き出される確率のことを指す。

たとえば、サイコロを1回振って5の目が出る確率を考えてみると、(サイコロが歪んでいたりしない限り)1の目が出る事象から6の目が出る事象までは全て同程度に起こると期待できるので、5の目が出る確率は6分の1になる

もうひとつ、「統計的確率(頻度論的確率)」と呼ばれる確率がある。これは実際に観察や実験を何度も繰り返すことによって、確率を計算していくというものだ。「数学的確率」と「統計的確率」は「大数の法則」によって、究極的には一致する。

たとえば、サイコロを振って5の目が出る確率を考えてみると、「統計的確率」を使った数回の試行では誤差があるので「数学的確率」のように6分の1にはならない。サイコロを無限に近い回数振り続けていくと、やがて5の目が出る確率は「数学的確率」において想定される6分の1へと収束していく

ただし、「統計的確率」において試行回数を増やしていっても、究極的に「統計的確率」が「数学的確率」と一致しないようなケースもある。具体例を挙げると、ジャンケンのゲームがそれにあたる。

「数学的確率」では、ジャンケンをするとき、グー、チョキ、パーを出す確率はそれぞれ3分の1(33.3%)となる。

しかし、「統計的確率」では、試行回数を増やしていっても、なぜかグー、チョキ、パーを出す確率は3分の1に収束しないのだ。

では「グー」が出る確率は?

たとえば、数学者である芳沢光雄氏が学生725人を集めて延べ1万1567回のジャンケンをしてもらったところ、グーが出る確率は35.0%、パーが出る確率は33.3%、チョキが出る確率は31.7%という結果が得られたという。

(写真:iStock.com/tylim)

つまり、ジャンケンのゲームにおいてはグーを出す確率が一番高いということになる。では、なぜグーを出す確率が高くなるのか。

これは、人間がジャンケンをするときには、手の構造上、グーが一番出しやすいという特徴があるからだ。ジャンケンをするときに緊張していたり、意気込んでいたりすると、余計に握りこぶしのグーを出しやすくなるという。

逆に、チョキを出す確率が低いのは、手の構造上、グーやパーに比べてチョキを出しにくいという特徴があるからだ。

したがって、「統計的確率」から判断すれば、ジャンケンのゲームで勝ちやすい手は、パーということになる(ただし、ジャンケンをする相手もこの「統計的確率」の話を知っている場合にはパーを出しても勝率は高まらない)。

「数学的確率」や「統計的確率」は、理論的考察や実験・観察などを通じて実際に存在する客観的なデータと比較ができるので「客観確率」と呼ばれるが、それとは別に「主観確率」と呼ばれる確率が存在する。主観確率というのは、様々な事象について、人間が考える信頼の度合いのことを指す。

たとえば、今日の降水確率が30%であるとか、かつて火星に生命体が存在した確率が何%であるとかいうのは、人間が信じる度合い、主観的なもっともらしさのことを言っているので主観確率である。

 

※本文中のデータは、すべて、2010年の刊行時のものです。

関連書籍

門倉貴史『本当は嘘つきな統計数字』

年間セックス回数が世界最下位なのは日本――英国コンドームメーカーによる調査で驚きの結果が出た。男も女も世界中が気になるセックス問題。だが日本人は回 数を実際より少なく申告しがちだし、ラテンの国はその逆だ。性に関する調査は、協力者が本当のことを言わない確率がきわめて高いのだ。その他、協力者の選 び方次第で結果が正反対になる世論調査、初めに結論ありきで試算される経済統計等々、統計数字にひそむ嘘を即座に見抜けるようになる一冊。

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門倉貴史

エコノミスト、経済評論家。1971年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、(株)浜銀総合研究所に入社。(株)第一生命経済研究所主任エコノミストなどを経て、2005年、BRICs経済研究所代表就任。2007年より、同志社大学大学院非常勤講師。専門は、日米経済、アジア経済、BRICs経済、地下経済と多岐にわたる。

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