『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』(鈴木綾さん著)の発売前にゲラを読んで感想を送ってくださる方を募集しました。感想の文字数を(100字以上)としていましたが、届いたのは、しっかりとした分量の文章ばかり。少しずつご紹介します。今日は、瀬谷薫子さんの感想です。
綾さんは飲み仲間のよう
鈴木綾さんが綴る、女性が生きる上でのハンディ。同じ性を生きながら、私はそれに無知だった。たぶん“慣れて”しまっていたからだ。けれどそれは確かにずっとここにあり、彼女の文章を通じて、悔しさやモヤモヤや、塞いでいた感情が久しぶりに湧いてきた。
イギリスならもっと状況は良いのだろうかと淡い期待を抱いたけれど、残念ながらひとすじ縄にはいかないよう。どの国に暮らしても、きっと悩みは尽きない。
それでも、彼女の文章には光がある。それは綾さんが、どこまでも明るい人柄であるから。何かを諦めた上での開き直りや、無知であるがゆえの明るさではなくて、現実を見据えた上で、今の自分にできることを冷静に見つけていく、強さを感じるからだ。
現実はそう簡単に変わらない。けれどならば今日を悲劇のヒロインのような気分で終えるより、居酒屋でビールを飲みながら、今直面する物事にちゃんと怒って、そして笑って、明日も頑張ろうと帰路につきたい。
このエッセイを読むとそう思う。だからか、会ったこともないが同世代の綾さんは、私にとって飲み仲間のような存在に思えてくる。
今すぐ何かは変わらなくても、同じ疑問や悩みを抱いているのはひとりじゃない。当たり前だけれど、そのことを認識するだけで湧いてくるパワーもあるのだと思う。
――瀬谷薫子
ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた
大学卒業後、母国を離れ、日本に6年間働いた。そしてロンドンへ――。鈴木綾さんの初めての本『ロンドンならすぐに恋人ができると思っていた』について
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