
斉藤由貴という抗えぬ存在
斉藤由貴について語るのは、ちょっと難しいな、と思う部分がある。
私は彼女の学年的にはひとつ下(いやもう学年って、と自分でも突っ込みたくなるけど、年齢でいうと私は早生まれなのでいろいろ説明が面倒臭いのだ。という説明が既に長くなってるけども!)で、斉藤由貴がミスマガジンのグランプリになったときから、特に熱心なファンとはいえないけど興味がないわけではない、くらいな感じでずっと見てきた。
いや「ずっと見てきた」、というか、正確に表現すると「ずっと見てきてしまっている」というニュアンスのような。
積極的に「わーい、斉藤由貴だ! 大好き! 見たい見たい!」といった完全ファンモードな気持ちではなく、歌番組やドラマやバラエティなどで見かけると「あ、斉藤由貴だ。……ふぅ」と、……の部分で凝視しちゃう、目を逸らせなくなってしまう、が連続している感覚。わりと珍しい存在だ。
昔は特に歌番組が顕著で、デビュー曲の『卒業』からして楽曲力が凄まじく、当時既に文科系こじらせ気味女子だった私的には、卒業式で泣かないと冷たい人といわれそうな感じ、が、まさにはぁー、それだ! とぶっ刺さり、そうだ、もっと悲しい瞬間に涙はとっておきたい、おくべき、おこう! と謎の三段活用を経て心に刻まれもした。
しかも斉藤由貴のあの声、あの眼がまた凄まじく、続く『白い炎』は、歌っている姿を見るたびに、たとえ自分勝手な女の子であってもこんな子に「あなたが好きです」なんて言われたら、抗えるはずがなかろうよ! と思わずにいられなかった。
好きよ好きです愛していますな『初戀』も、愛が燃えてる『情熱』も、見るたびに「逃げられない」気がした。逃げられない、抗えない、しょうがない。
そして極めつけは『MAY』。あの歌い出しの♪MAY♪だけで「負けました」、と思わされるあの魔力。いやそんな、斉藤由貴以外のどんなアイドルが相手でも勝てる要素なんてそうそうないのは分かってる。でも、そうしたアイドル力云々という部分とはまた全然違う意味で、勝てる気がしない。世の中には常識とか理性ではどうにもならない感情と衝動がほんとにあると斉藤由貴を見ていると思うのだ。
というわけで、長年恐れ&畏れをもって深入りしないようにしてきたのだけれど、今年はデビュー40周年ということで、歌番組で記念ツアーが行われていると知り、これは一歩踏み込んでみるチャンスではないか! とプレイガイドをチェックして、追加公演のチケットを無事獲得。36年ぶりという全国ホールツアー「斉藤由貴 40th Anniversary Tour“水辺の扉”~Single Best Collection~」の最終公演に行ってきました。
誰かを迂闊に誘い難いので今回もソロ参加だ。

会場は、昭和女子大学人見記念講堂。初めて足を運ぶ会場で、最寄りの三軒茶屋駅に着くと、あ、みなさん斉藤由貴ですね? な雰囲気を放った中高年諸兄の後を疑うことなくついて行き無事到着。圧倒的におひとり様客が多いものの、意外の女性客もいて男女比は体感7対3くらい。
事前にチェックしていた物販で、絶対欲しかったデビュー当時と現在のアクスタを購入し、(こんなに女子トイレが空いているライブに来たのはもしや初めてではなかろうか……)と思いつつ用を済ませ、開演10分前に着席。当日ギリ行きがかりでコンビニにて発券したチケットの席は2階の後ろから2列目で。席が全てではないとわかってるけど、ちょっと残念。でも座席の傾斜角度があってステージは見やすい。その分、階段一段一段の高さがあって、手摺りもないので膝の悪いアラ還としては少々辛かった。
すごい、こわい、うごけない、でもかわいい、やばい
周囲の観客もほぼほぼ50~60代。ステージ上にギター・ベース・ドラム、コーラス、ピアノ&キーボードふたりという構成で、ほどなくブルーグレーの肩出しドレスで斉藤由貴が登場。『初戀』『白い炎』『情熱』といきなり3曲好きです愛重い系で双眼鏡越しに目が合った(と思わされた)だけでため息が漏れてしまう。すごい、こわい、うごけない。

「本日は斉藤由貴 40th Anniversary Tour“水辺の扉”~Single Best Collection~にお越しいただき、ありがとうございます」という挨拶も、長いタイトルが呪文のように聞こえてくる。
今回のツアーはシングル曲をオリジナルアレンジで歌うことがコンセプトということで、一般客である私でも、知らない曲がほぼほぼなく(2曲だけあった。シングルコレクションといいながらアルバムの曲ですが~という説明も)、6曲目で早くも『MAY』。
直前のMCで『MAY』が主題歌になっていた映画『恋する女たち』のエピソードトークになり、「その時共演した高井麻巳子ちゃん……今は秋元麻巳子さんが今日は来てくれていて……」という話に、「おぉ~!」「まみまみ……」とどよめいていた客席も♪MAY~でまさに水を打ったようになる。
斉藤由貴は、とにかく歌っていても話していても、その声を聞き洩らしてはならぬ……! という気にさせられて、その姿を凝視してしまいがち。でもって、また感情表現が上手い、といというか憑依系なうえに気持ちが入るので、この日は何度か涙で声が詰まることがあった。あの大きな目から涙が溢れて、それでも懸命に歌い続ける姿は、双眼鏡で見ていても胸に迫るものがあり、何度も(これはやっぱり近付きすぎてはいけない。2階後列でむしろ良かった。危なかった……!)と思う。しかも茶目っ気まであって、『MAY』の歌い終わりには、「早いもので次の曲が~」と言い出し、「あ、いい忘れてましたがこのコンサートは2部構成です。このあと、15分の休憩が入ります。業務連絡ですけど!」的なMCで会場を笑わせたりもするのだ。こわい。もうどこまでもこわい!
コーラスは加藤いづみで、途中、デビュー当時からのアレンジャーでもあったピアノの武部聡志とふたりのコーナーもあり、本編ラストは『卒業』。
アンコールのそりゃ歌うよねーな『夢の中へ』は客席も立ち上がって、「拝聴」モードから一転、アイドルライブなノリで楽しく盛り上がったところで、みんなに着席を促し「次が最後の曲になります」。この後のMCがとても良かった。
「本当に大事なことは結局のところいつもつきなみです」「なので最後にもう一度皆様にお礼を申し上げさせてください。ずっと一緒にいてくださって、そして今日、2時間30分くらい一緒にいてくださって、曲を聴いてくださって、応援してくださって、ありがとうございます」みたいなことを(ニュアンス)、訥々と話していて、「これからみなさんもメンバーのみんなも私もそれぞれの場所に帰っていって、今度いつ会えるかなーって感じですけど、それぞれの人生を過ごせていったらいいとおもう。さよならだけどさよならじゃない、きっとまた。その気持ちを込めてこの歌を届けます」(かなりニュアンス)と締めていた。これ斉藤由貴の声で脳内再生して欲しい。魂持っていかれるから!
そして最後の曲は『さよなら』。
ツアーファイナルということで、武部聡志に花束を貰って斉藤由貴は顔をくしゃくしゃにして泣いていた。もうダメだ。次にライブがあったらまたきっと行ってしまう!
でも今度は、この魔力について語り合える誰かと一緒に参加したい。これ以上、はひとりで受け止めらぬ……!

だらしなオタヲタ見聞録の記事をもっと読む
だらしなオタヲタ見聞録

20年以上、毎日300~500歩程度しか歩いていなかった超絶インドアだらしな生活だったのに、突然フッ軽オタ道を走り出したこの数年。もう「いつかそのうち」なんて言ってられん! 見たいものは見ておきたい! 寄る年波を乗り越えて、進め! ヨタヨタオタヲタ見聞録。
- バックナンバー
-
- 畏れにも似た、抗えぬ斉藤由貴の魔力!
- 高齢オタクの遠征にはEX!
- まさかのチケット購入ミス!そこにまちゃあ...
- 人生に「先の愉しみ」がある幸せ
- ドラマを観たこともないのに新年早々『グラ...
- 九九以外はなんでも出来る!? 松田元太の...
- イヴにぼっちでアルフィーがとんでもない多...
- ヴェニスの商人を観に行ったら私の知ってる...
- 丁寧!美味しい!ゆったり!都会のオアシス...
- 遠くても見えなくても行って良かった み...
- 秋の京都がバカ高すぎて、必死で探したひと...
- 未だ柳葉敏郎=ジョニーの呪縛が解けないの...
- 女郎役の鞘師里保を観たい一心で『十一人の...
- 楽しすぎた奥田民生と吉井和哉とどぶろっく
- 布施明で人生初、生ブラボー! 体験!?