2021年の第18回ショパンコンクールで日本人歴代最高に並ぶ2位入賞を果たしたピアニスト・反田恭平は昨年『終止符のない人生』を上梓し、今世界で最も注目を集めるピアニストの一人となった。霜降り明星の粗品は2018年にコンビでM-1グランプリ、翌19年にはピンでR-1グランプリを制覇し、史上初の“二冠”を達成した。異なるジャンルの第一線で活躍する2人は「音楽」という共通点で結ばれ、2020年には大阪城ホールで開催された「サントリー1万人の大九」で初共演を果たしている。反田が感じる“音楽家”粗品の魅力とは。同世代の2人がお互いの音楽観を語り合いました。
* * *
反田 “音楽家”粗品としてお話しできたなと思います。2021年1月にご自身のレーベルを作られたんですよね。
粗品 そうなんですよ。「soshina」っていうレーベルを作りました。
反田 どういった作品を出しているんですか?
粗品 自分の作ったボーカロイド楽曲とか、どこの方に歌っていただいきたい楽曲を持って女性声優さんの方が歌ってくださいってお願いした楽曲とかを出してますね。
反田 僕全然詳しくないんですけど、パソコンで入力する形なんですか?
粗品 そうですね。ボーカロイドの楽曲はパソコンで入力して音源を鳴らしてやっています。人に歌ってもらうものは、自分で演奏に参加してレコーディングしたりとか、スタジオミュージシャンの方に叩いてもらったり、演奏してもらったりっていう感じですね。
反田 そうなんですね。僕は本当にクラシック1本でやってきたんで、ボカロとかもあんまり詳しくなくて。ご自宅にもキーボードとかあるんですか。
粗品 ありますあります。パソコンに繋がってるキーボードがあって、そのパソコンの画面に自分が弾いた鍵盤が出てくるソフトを使っています。
反田 そうやって声色なんかも変えられたり。
粗品 そうですね。つまみをいじってみたいな作業をしてますね。
反田 2歳からピアノやられてたんですよね。
粗品 そうですね。
反田 何歳ぐらいまで続けていたんですか?
粗品 2歳から、小学四年生ぐらいなので10歳とか。でもなんか思い返すと全然……。言うたら8年ぐらいやってたんですけど、8年って結構じゃないですか。でもね、周りの8年やってる人よりは下手でしたね。
反田 そうなんですね。クラシックの曲を?
粗品 クラシックの曲は全然やってこなかったんですよ。俺、何してたんやっけ?(笑)。教則本みたいなのはあって、なんかJ-?POPを楽しく弾こうみたいな教室だったんかもしれないです。
反田 ギターはクラシックギターから始めたんですか?
粗品 最初はアコースティックギターから始まって、3年ぐらいしてエレキギターになりましたね。どっちかいうと自分の中ではギターの方が上手ですね。
反田 ギターは今でも弾かれてますもんね。
粗品 そうですね。
反田 僕が好きな曲も。
粗品 父ちゃんが死んだ曲ね。
反田 もうぜひ皆さん聞いて欲しい。あの曲は本当に素晴らしいです。何て言うんすかね。粗品さんは歌声がいいですよね。
粗品 ホンマっすか。
反田 的確な音程もあるけれども、絶妙な音と音とのインターバルを自由に行き来されているというか。
粗品 うわーなんかすごい意見。
反田 ピアノってみんなが同じ楽器を弾いていて基本的に同じ調律がされていますけど、やっぱり人の個性だったり、癖があって、アーティストらしさみたいなものがあったりする。歌なんかはやっぱりそれが顕著に出てくる。粗品さんの声は、やっぱり粗品さんだけしか出せないと思います。本当にまた聞きたくなる歌声。
粗品 うわ、めっちゃ嬉しいです。
「指の管理してますか?」
粗品 めっちゃ気になるんですけど、超一流ピアニストの指の管理というか、手タレを目指す人は幼少期から手袋をずっとしてて、傷つけないように育てられたみたいな逸話があると思うんですけど、反田さんもやっぱり指に負担かかるような、例えば荷物も持たへん、リュックサックにしてるとかそういうのってあったりするんですか。
反田 特にないですね。僕は昔からサッカーとか、木登りとかよくやってた人間なので。たしかに僕の周りもサスペンダーをつけて、短パン履いて、革靴履いてレッスンに行くみたいな感じが多かったですけど、僕はビーサン、タンクトップ、金髪みたいな感じでした。
粗品 激ヤバやん。ビーサン、タンクトップ金髪。変すね。
反田 そんな感じでレッスンに行ってましたし、留学先でスポーツジムに通うと単位がもらえるというのがあったんですけど、その時はボクシングもやってました。
粗品 えー! マジすか!
反田 しかもグローブが売ってなかったんで、素手でサンドバックとか(叩いていた)。なのでちょっと血が出ちゃったり……。でも中国では指の第3関節を削ったり、潰すことによって強度な手を作るっていうのは10年、20年くらい前には本当にあったことなんですよ。
粗品 ピアニストですか?
反田 そう、そうです。ちゃんと鍵盤をつかめるようにって。
粗品 なるほど。
反田 それはオーバーでいきすぎですけど、ある程度は痛めてもいいもんなんだなって。
粗品 いやちょっとびっくりやな。指の長さとか、人差し指と薬指の長さが均等になっていくとかよく言うじゃないですか。。
反田 僕、ここは腱切れちゃってるんですよ。
粗品 え、小指と薬指の間?
反田 そうです。だからすごく開くようになっちゃってて。ドアに挟んだんですけど(指を見せる)。
粗品 めっちゃ開くやん。
反田 これはピアノじゃなく、怪我で。
粗品 でも、それはいいことなんですか?
反田 いいことですね。ラフマニノフ2番の冒頭、『のだめカンタービレ』でも出てきた曲ですけど、手を怪我するまでは指が届かなかくて弾けなかったですから。骨折して、手術したんですけど、ギプスしていたから小指が1ミリか2ミリぐらい伸びてたんです。でもその1ミリ2ミリが結構大きくて、腱も切れて届くようになった。
粗品 こわぁ。もうなんかアウトローっすね(笑)。
反田 僕は手の保険とかもまだ入ってないんです。
粗品 ええ~。
反田 そろそろ考えようと思ってるけど、いつも先延ばしにしちゃいます。
粗品 いやいや、入ったほうがいいですよ。
反田 でも粗品さんも入った方がいいんじゃないですか? ツモするから……。
粗品 いや、ええわ、麻雀。僕、強打で骨折しないですよ。
「クラシック以外の曲、聴きますか?」
粗品 もう一つ別の質問をいいですか。クラシック以外の曲って聴かれるんですか。
反田 聴きますよ。
粗品 何を聴くんですか?
反田 まず一番聞くのは粗品さん。お父さんの(笑)
粗品 ちゃうちゃう、もうええねん(笑)
反田 あれ、J-POPですよね。
粗品 J-POPちゃうわ。アレうんこです。ジャンルは。
反田 (笑)。最近よく車に乗るんですけど、もちろん自分が練習している曲とかを聞いたりはするんですけど、ラジオも結構聴きます。
粗品 あ、ラジオ聴くんですか。
反田 そうなんです。そこからいいなって思った曲とかを聴きますし、今個人的に好きなのはアメリカ系のユニットなんですけど、ジンジャールート。
粗品 ジンジャールート。
反田 1990年代テイストで、これから来るだろうなと思っています。
粗品 洋楽ですか?
反田 それが日本語でも歌っているんです。彼が日系アメリカ人か何かなのかな。わかんないですけど、日本語でも歌詞が書いてあったり、英語の歌詞があったり。日本のアーティストだと、僕はTERIYAKI BOYZが大好き。NIGOさんやRIP SLYMEのILMARIさん、RYO-Zさんといったレジェンドたちが集まったグループ。
粗品 めっちゃ意外。
反田 TERIYAKI BOYZだと『Tokyo Drift』なんかがすごく有名ですけど、それ以外の曲もすごく好きです。
粗品 そういうのを聴いて、ピアノでちょっと弾こうとかあるんですか。
反田 ピアノで弾こうとはならないんですよね。
粗品 ならんか。
反田 弾けたらいいなとは思いますよ。楽譜があればいいんですけど、僕はポップスとかジャズとかのアレンジは練習しなきゃできないですね。何か頭が合理的主義者みたいな感じなのかな。
粗品 へえ。意外っすね。そういうのを聴くんですね。
反田 もちろん民謡歌謡曲とかも全然聴きます。ジャニーズも聴くし。
粗品 ジャニーズ聴くんや。ジャニーズだと誰を聴くんですか。
反田 SMAPとか、王道ですけど嵐とか。高校生の時によく聴いてました。
粗品 ええ、ちょっと意外です。
反田 坂道グループとかも全部聴いてますね。
粗品 すごい。やっぱり結構広く聴いてますね。
反田 そうですね。詳しくはないですけど、演歌も聴きますし。
粗品 逆にこのジャンルは聴いたことないな、みたいなのはあるんですか。
反田 逆に声が入ってないBGM的なジャンルはあんまり聞かないですね。
粗品 逆っすね~。
反田 自分が言葉のない音楽を弾いてたりするんで、逆に聴かないかもしれないです。
粗品 うーわ、おもろ。ちなみに(ピアノの)練習ってどれぐらいやられてるんですか。
反田 いやあ、まちまちですね。
粗品 毎日何時間って決まってやってるとかではないんですか。
反田 中学生の頃が一番やってたかもしれないです。
粗品 ちょっともうアウトローっすね。
反田 もちろんコンサート前とかはめちゃくちゃやったりします。
粗品 はいはいはい。
反田 もう3日前、4日前から。基本的に追い込まれスタンスなんです。
粗品 3日前、4日前? 全然やってへんやん。じゃあ毎日絶対家に帰ったらピアノを何時間もやるっていうのはない。
反田 4時間5時間6時間っていうのはないですね。
粗品 天才やん。
反田 車の移動中とかリビングでクラシック流したりして、それで覚えていくっていう。
粗品 なるほどね。それはやってる。でもそれで感覚が鈍るとかはないですか?
反田 もちろん多少はあったりしますよ。でも3日ぐらい練習すれば。
粗品 うわっ、すげえな。3日前とかは1日どのぐらいやるんすか。
反田 いやもう、やばいなと思ったらもう10時間ぐらいやりますよ。
粗品 ああ~やりすぎや。やば。極端やな。
反田 「もう人生詰む」って思いながらやったりします。でも全く弾かないって日も全然ざらにある。
「何の仕事してる時が楽しいですか」
粗品 何の仕事してる時が一番楽しいですか。コンサートなのか、コンクールなのか。
反田 今は指揮してるときが一番楽しいですね。最近指揮もやり始めて。
粗品 すげえ。コンダクター。
反田 はい。モーツァルトとかベートーヴェンとか古典の小編成のものもやったりしますけど、この前はマーラーって言って、Theロマン派黄金期のものをやったんですけど、それはもう初めての体験だったんで、終わった時にはもう絶頂みたいな感じですよね。
粗品 うわーすげえな。
反田 ピアノでコンチェルトを弾くのも楽しいし、好きなんですけど、やっぱりソロは1人じゃないすか。ちょっと寂しさもあったり、全責任が1人だけど。コンチェルトはもうみんなと顔を合わせながらキャッチボールができて、シンフォニーはシンフォニーで右向けって言ったら、みんなが右を向いてくれる。ここで作ろうぜって僕の意思もあるし、メンバーの一人一人の意思もあるし、それがうまくかみ合ったときの演奏というのはすごい楽しいですね。
粗品 いいなあ。それも楽しいんですね。めっちゃいいっす。
反田 逆に粗品さんはどんなジャンルのお仕事が楽しいですか。
粗品 そうっすねえ。いろんなお笑いやったんすけど、お笑いではねちょっと楽しいと思うことが少なくて。自分で1人でやってる何か面白いこと、単独ライブとかは楽しいですけど、他は結構楽しくなくて。
反田 いや、行きたいな、単独ライブ。
粗品 あ、マジすか。
反田 行きたいです。
粗品 来てくださいよ。招待しますよ。
反田 いやいや、買いますわ。
粗品 いや、買いますわって。招待しますし、なんなら出てください。
反田 スパチャ投げたことないのに、手挙げて。
粗品 いや、ええわ。単独のノリ。スパチャ投げた人に挙手してもらう。反田恭平やん、何してんねん言うて。
反田 350円って。
粗品 安いな。細客~って。いや、でもお笑いはそうなんですけど、音楽の仕事はのべつ幕なし全部楽しいっすね。
反田 なるほど。
粗品 やっぱ楽しいっすね、今めっちゃ。
「曲はどうやって作りますか?」
反田 最近だとNHKのアニメの『青のオーケストラ』のエンディング曲「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」。聴きました。
粗品 ああ、ホントですか。ありがとうございます。
反田 本当に素敵だし、フレーズの作り方、組み方っていうのが新しくて新鮮ですよね。
粗品 嬉しい。
反田 あと、覚えてるかわかんないんですけど、アニメの記者発表があったと思うんですけど、あそこでヴァイオリンを持ってた3人、みんなうちのメンバーだったんです。
粗品 あ、そうなんですか。
反田 一緒にオーケストラをやってるメンバーで、中でも今回主役の演奏してる東(ひがし)さんがうちの会社の社員です。
粗品 ええ、そうなんや。
反田 昨日も一昨日もスマホのサッカーゲームで朝5時ころまで一緒に遊んでました(笑)
粗品 何してんねん。
反田 もうどっちかが海外にいようが、構わずやったりするくらいで。
粗品 ああ、オンラインでね。いいですよね。
反田 それで粗品さんが東と会っていて、びっくりして。「粗品さんと会っとる」って。
粗品 ははは、そうですよね。東さんにはなんやったらソロも弾いてもらってますから。
反田 この曲はどういうふうに作られたのかすごく気になります。作詞、作曲を両方やられているじゃないですか。詞からなのか、曲からなのか、それともメロディからなのか。ギターもピアノもやられてるからどこからでも作れると思うんですけど、どうだったんですか。
粗品 最初にNHKの方とかアニメの方と打ち合わせをさせてもらって、こんな曲にしたいっていう要望があって。僕自身タイアップものはそんなに経験がなかったんで、ちょっとびびっていました。満足いってもらえるかなって。歌詞は後で、コードが先でしたね。コードを先につけました。ヴァイオリンの作品なので、ヴァイオリンの開放弦だけで演奏できる曲にしようと思って。なのでAとEとDだけで作ったんですよ。AとEとDだけやからメロディがおもんななくなったら嫌やなと思って、サビは10パターンぐらい、Bメロは4パターンのAメロや6パターンぐらいを提出して、選んでもらって作った感じです。
反田 なるほど。
粗品 めっちゃビビってました。
反田 でもそうですよね。本業はだってお笑いじゃないですか。
粗品 そうですね。
反田 音楽の世界でタイアップのお話がきてって、すごいですよね。
粗品 多分NHKさんも苦渋の選択というか。僕に任せることは大変不安やったと思うんですよ。だからちょっと誠意は見せないとなりましたね。
反田 正直にいうと、本当に作ってるのかなって(笑)。あれだけふざけてやってる方がこんな曲を作れるのかと。
粗品 (笑)。
反田 いい意味で、ですけど。
粗品 そうですね。意外に好きなんですよ。
反田 テレビに出られている方の中でも本当に音楽が好きな方なんだなって。
粗品 ありがとうございます。でも、この「夕さりのカノン」っていう曲に関しては、今まで以上にみんなで作ったという感覚が強い曲で、編曲のsyudouさんにも仕上げてもらいましたし、それこそ東さんをはじめとしたN響の皆さんにストリングスを担当してもらって、それがエグすぎましたね。
反田 N響を率いるお笑い芸人、他にいないっすよ。
粗品 うわははは(笑)。いや、そうなんですよ。恐縮ながら、すごいメンバーの方々にやってもらって。
反田 僕もクレジット見て、ソリストたちは全員友だちでした。かつN響のメンバーには先輩方もいるので、「マジか。粗品いかつ」って感じでした(笑)
粗品 (笑)。本当にそうなんですよね。
反田 だってクラシックの人間はみんなN響と弾きたいから頑張るっていうステータスがあるんですよ。それを易易と。
粗品 最高峰ですよね。
反田 だからこれは本当に粗品さんの実力が認められて作られた曲と言うことですよね。
粗品 ホンマに恐縮です。
反田 だから格好いいですよ。もちろん全てを見てきたわけではないですけど、お笑いをやられていて、YouTubeだったり色々やられていて、見てくれている人が好きそうなものを取り上げて、それをやりつつも自分が本当に好きな音楽というのをブレずにやっているっていうのが僕がすごく好きです。
粗品 うわぁ、ありがとうございます。
反田 以前、初めてお会いした時にも話させてもらいましたけど、ピアニストのラン・ランと共演もされていますよね。どういうことですか。
粗品 どういうこと(笑)。
反田 僕も会ったことないですよ。
粗品 ラン・ランってやっぱりすごい方ですか?
反田 すごいですよ。ラン・ランというブランドですから。
粗品 なるほど。もうそこまで言っている方なんですね。
反田 そのブランドを確立させるまでがすごいと思います。
粗品 確かにラン・ランと一緒にピアノを弾いたのは嬉しかったですね。それに誕生日のときとかにラン・ランが自撮りで、僕下の名前ナオトって言うんですけど、「ナオト、ハッピーバースデー」って言いながらハッピーバースデーの曲をピアノで弾いてくれる動画を送ってくれて。めっちゃ気さくでいい人です。
反田 デビューしたころから技術が桁違いですよ。アメリカの有名な何人かしか門下をとらないような学校に入って、その先生もすごく有名で、どういうふうにピアノをコントロールするかっていうのを教えるのに長けている。ラン・ランはそういったとこエッセンスを取り入れていて、彼がミスタッチをするみたいなことはもうほぼほぼない。
粗品 ああ、マジすか。
反田 そこの門下生も基本的にそういうスタンスなんですけど、。中でもランランはもう人間を逸脱しているような存在。(粗品は)そんな人と共演している。
粗品 めちゃくちゃやな。この間、ラン・ランの大阪のコンサートにも行きました。いや、すごかったです。
それに反田さんのコンサートにも行きたいですよ。招待してくださいよ。
反田 いやいや、もちろん。大変ですよ僕、弾いたり振ったり弾き振りしたりもしているんで。
粗品 ええ。一回のコンサートで。
反田 やります。ピアノ、コンチェルト。それにオーケストラの方を見て振りながら、弾くっていう二刀流みたいなのがあるんですよ。
粗品 ええ、何それ。
反田 後半はオーケストラに向けてシンフォニーの指揮者としてやったり。
粗品 すごいっすね。全部やるんですね。
反田 大変ですけどね。
粗品 それこそ漫才やってコントやって的なね。
反田 でもやっぱり指揮者になりたいと思ったから、ピアノはそのための一つのツールというか。
粗品 あ、そうなんですね。
反田 逆なんですよ。本当は。指揮者が格好いいっていう本当に純粋なところからスタートしているんです。
粗品 元々指揮者志望だったんですか?
反田 もっと言えば、最初はサッカー選手になりたかった。それを断念して、ピアノを始めましたけど、ワークショップで指揮を振らせてもらう体験をして、こんな世界があるんだって。そのときの先生に「指揮者になりたいんですけど、どうすればいいですか」と聞いたら、まずは何らかの楽器を極めてみなさいと言われて、ピアノを始めました。
粗品 極めすぎやろ。(指揮者になるまでの)過程にしては極め過ぎですって。
反田 気づいたら、色々な縁もあってデビューさせてもらって、ピアニストになっていた。
粗品 やりすぎですって。
反田 でももうはたから見てもある程度ピアノ弾けるようになったので。
粗品 ある程度どころか、とんでもないですよ。
反田 ちょっと弾けるようになったので。
粗品 いや、めちゃくちゃ弾ける。
反田 指揮も勉強し始めてもいいかなっていう感じですかね。
粗品 いや、(コンサート)行きたいです。
反田 もはや僕が企画するコンサートで、何かいつかMCもやっていただきたいです。
粗品 ぜひぜひ、いつか呼んでください。何でもしますから。
反田 何か一緒に連弾とか。
粗品 いやいや、できるかあ。反田恭平と連弾。死んでまうわ。
反田 ラン・ランと共演されてますから。
粗品 いやいや、ラン・ランと共演してるだけの男ですから。
「終止符のない人生とは」
反田 この番組毎回聞いているんですけど、粗品さんにとって「終止符のない人生とは」。音楽って本当に答えのない世界なので、僕がこれが正解って言ってもBさんにとっては違うだろうということはよくあります。だけど、楽曲というものにはダブルバー、終止線というものがあって、人生はどういうことが正解がなのかなとと考えることがよくあります。生きる上で心がけていることなどがあれば教えてください。
粗品 確かに1月に30歳になって人生どんな感じにかってなっていくんやろって考えるようになりましたね。30年生きたんかって。散々言ってますけど、僕は父ちゃんがはよ死んだんで。余命巻いたんですよ。1年って聞いてたのに、次の月に死んで。
反田 色々企画していたのに。
粗品 そうそう。夏はプール行って、とかユニバ行ってとか。なのに次の月に死んで裏切られた気分なんですけど。
反田 (笑)
粗品 俺の父ちゃん、60歳ぐらいで死んだんですよ。で、父ちゃんの父ちゃん、おじいちゃんも57歳とかで死んでいる。だから僕は、60歳で死ぬんですよ、多分。家系的に。それで今30歳なんで、もう半分経ってもうて。もう半分かってなったときに『終止符のない人生』じゃないすけど、やっぱりもっと創作をしていきたいなと思いました。
反田 うん。
粗品 何かを作って、形に残したいなと思いました。それはお笑いもそうやし、音楽もそう、どっちもしたいなと思ったんすけど。見たことないお笑いもしたいし、音楽は今はまだ駆け出しなんで自分の好きな音楽をいっぱいやりたいっていう気持ちですね。たくさん作りたい。
反田 いやでも、それこそNFTとかいいんじゃないですか。
粗品 ああ、ねえ。あれどうなんすか、NFT。
反田 僕もちょっと実感湧かないし、よく知らないんですけど、坂本龍一さんとかもやってましたよね。何か有名な曲で1個の音符をいくらで売ってました。
粗品 やば。マジで。
反田 このNHKの「『夕さりのカノン feat.『ユイカ』」はできないかもしれないけど、今後作詞作曲したときには、四分休符1個5000円みたいな感じで(笑)
粗品 いや、休符いらんやろ。休符買いたい人います?
反田 四分音符2000円みたいな感じで。
粗品 NFTって金やねんな。いいっすよね。うわ、どうしよう。アリですね。
反田 いや、ちょっともニヤけてるじゃないですか。
粗品 そういう芸術系は金になるもんな。音楽とか絵画とか。絵もええなあ。
反田 こんだけ頭(髪の毛)上手にセットできるなら絵も絶対うまいですよ。
粗品 ホンマや。器用ですもん。こんだけセットできたら。音符売ろかな。
反田 僕が知恵を出させていただいたので、今後NFTが売れたら僕に1%ですよ。
粗品 何でやねん。え、マージン? いやいや、1%良心的やけど。ダメっすよ。
反田 2%でもいいです。
粗品 何で増えんねん。倍やないかい。嫌っすよ。
反田 嫌ですか(笑)いや、でも作られたら僕買いますよ。
粗品 マジっすか(笑)
反田 四分休符買います。
粗品 何で四分休符買うねん。一番いらんでしょ。休符買う人いないですよ。
* * *
※本記事は、Amazonオーディブル『反田恭平のLIFE without END』より、〈#2 ゲスト:霜降り明星・粗品さん」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。
Amazonオーディブル『反田恭平のLIFE without END』はこちら
オーディオブック『終止符のない人生』はこちら
終止符のない人生
「夢を叶えた瞬間からすべてが始まる」
日本人として51年ぶりのショパン国際ピアノコンクール2位の快挙、自身のレーベル設立、日本初“株式会社"オーケストラの結成、クラシック界のDX化。次代の革命家とも言われるピアニスト、反田恭平さんが7月に上梓した初エッセイ『終止符のない人生』では、それら数々の偉業の裏にあった意外な思いが赤裸々に描かれています。若き天才の素顔に迫るこの一冊より、一部を特別公開いたします。