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いつまで自分でせいいっぱい?

2024.10.19 公開 ポスト

#67

映画の撮影現場ワークショップ佐津川愛美

「いつか」と思っていたことが、「そういえば」叶っている人生だと思う。

写真を自分で撮るのが好きだから、いつか写真集を出したいな。いつか写真展もやってみたいな。
40歳くらいになったら、映像の監督をやってみたいな。この3つはいつの間にか叶っていた。

 

そして新たに、本を出してみたいな。
お子さん向けの現場体験をやりたいな。
とまたしても「いつか」と思っていたことが、気が付けば自身の映画祭を通して叶うことになった。

この「撮影現場体験」があまりにも素晴らしく楽しかったので、私の人生史に残る最高の体験となった。
デビュー20周年企画「佐津川愛美映画祭」なるものを後輩のまおちゃんが企画してくれて、東京、高崎、名古屋、静岡と4箇所で行なっていることは以前にも書いた通り。

8月の名古屋は台風の影響で延期というかたちにはなってしまったけれど、本来は10月の静岡がラストの予定だった。映画祭が決まった1年前からそこで上映したいと思っていた作品が、1番最初に願ったことが、色んな都合によりまさかの上映出来ないという判断になってしまった。舞台でいう大千秋楽。地元で開催という特別な気持ちも相まって、この時の私はショックを受け、ガーンとお先真っ暗な気持ち。これ以上にベストな作品はないだろうと一瞬落ち込んだが「人生すべてベスト」をモットーに生きているので、「もっといい案があるはず!」と即持ち直した。
なければ作るしかない。作るならみんなが楽しめることがいい。あ、いつかやりたいと思っていたふわっとしていたあれ、もしかしたら出来るかもしれない‼︎
こんなに早く実現出来るとは思っていなかったため急にビビビと電気が通った気分。これぞ、ピンチはチャンス!
「お子さんたちに撮影現場を体験してもらいたい。体験だけじゃなく作品にしたい。みんなで短編映画をつくりたい。メイキングも絶対つくる。それを映画館で観てほしい!」2つ返事で「それいいですね!」と言ってくれたまおちゃん。

この時、5月。実質3ヶ月ほどでまおちゃんと2人で準備。後々周りからは、2人でやれる量の仕事じゃない、そんなことまでやってたの?!と凄く驚かれたけれどまおちゃんも私もやるとなったら猪突猛進タイプのようで、冷静に考えたら無謀と思われるようなことにもチャレンジしていたようだ。でも好きなことで楽しければ走り抜けられるんだなぁと実感出来る体験だった。
コラボというかたちでやらせて頂いた、「駿府の工房 匠宿」チームのおかげで、本当に開催させてもらえてよかった、よかったすぎる企画となった。

【楽】沢山チャレンジしてくれたAチーム
【楽】狭い空間で頑張ってくれましたBチーム
【楽】みんな仲良く撮影してくれたCチーム
【楽】暑い中でも頑張ってくれましたDチーム

演出部は、監督、助監督両方の体験。俳優に演出をつける。カメラで捉えてほしい部分を伝える。カチンコをたたく。カチンコやよーい、スタート、カットの掛け声は、現場の空気をつくる大切なお仕事。
カチンコを興味津々に打ち、緊張しながら自分で考えた演出を俳優に伝える。
中高生になってくると、明確な演出アイデアがあり、我々が感心するような演出を考えてくれた。

撮影部は指導の高橋さんが、とっても貴重なカメラを用意してくれた。なんと1000万円のカメラ。子どもたちより、親御さんのほうが驚いていた。
芝居をしている俳優をどう切り取るか、カメラを動かしたり、操作したり。カメラを覗く姿はみんな真剣で輝いていた。私が1番最初に泣きそうになったのは、そんな眼差しを間近で見かけた瞬間だった。小学生が現場のプロのように三脚を足で捌いている姿にも度肝を抜かれた。あっという間に操作が出来るようになり、どうやったら俳優の感情が伝わるか考えてくれたり、とにかくかっこよかった。

照明部は光で空間を作るだけでなく、レフ板を使って俳優の顔を明るくしたり、みんなで機材を運んだり。光を的確にあてるのは難しかったり、とにかく照明機材が重たくて驚いている子も多かった。
レフ板をあてた瞬間に「盛れる〜!」と言ってくれたガールズにそうそう!そうでしょ!っと伝わったことが嬉しくなる大人チーム。終わった後にみんなでテンションが上がった。光量を調整する姿はみんな真剣で、私もレフ板をあててみたいなぁと羨ましかった。今まで映画を観る時に、照明を気にしたことがなかったけど、これからは色んな部分を気にして観てみようと思いますと伝えてくれた子がいて、すごくすごく嬉しかった。

録音部はヘッドフォンをして、長いガンマイクを持って、みんなとにかく面白そうだった。音という目には見えないからこそ想像が難しい世界。あんなに遠くにいる人の声が、ヘッドフォンから聞こえる!マイクの種類で音が全然ちがう!という驚きに、別部署の子も興味津々。とにかく参加してくれたみんなの反応がとってもよかった録音部。私もヘッドフォンをして音を聴かせてもらったけれど、初めての世界に足を踏み入れたような感覚だった。奥深い音の世界を、小さな頃に体験出来て、羨ましい。

メイク部は今回「よごし」がメイン。映像のメイクはただ綺麗にするのではなく、役に合わせたメイクが重要。今回は弥生時代からタイムスリップしてきた弥生人が主人公なので、1番初めに茶色いドーランを腕や足まで塗り、汚れているように見せるのを手伝ってもらった。撮影が始まると、俳優部を扇子であおいでくれたり、髪型を整えたり、汗をつけたり。
メイクさんはただメイクをするだけではなく、周りの状況を把握して俳優さんがいいお芝居が出来るように声かけのタイミングを考えたり、常にサポートしているというのが印象的だったと感想をもらい、そこまで伝えてくれた指導の有路さんも流石だし、しっかり読み取ってくれたのも本当に凄くて、嬉しくなった。

俳優部は事前にキャラクターの性格を自分で決めてもらいたかった。少し宿題を出し、当日は初めましての共演者といきなり一緒にお芝居をする為、2人の関係性をお互いに意見を出して決めてもらった。一緒に歩いているからきっとお友達だろうね。友達ならどんな友達?学校?習いごと?近所?家族ぐるみ?それぞれが設定を共有して、覚えてきた台詞を言うだけでなく、演出された動きにも対応して演技をする。
台詞を言うだけじゃなく考えることが沢山あるんだ、動きながらやるの難しい、相手の気持ちをしっかり受け取るんだ、緊張するーと言いつつ何度も重ねるカットにもめげずにお芝居をしてくれたみんな。確実にみんな素敵。みんなすごい。愛美先生ただただ感動。よく頑張ってくれました。

ここには書ききれないくらい沢山の思いがあるけれど、とにかくやってよかった。そして私は現場が好きと改めて。
そして、計り知れないポテンシャルを持つ子どもたちのパワーに、大人チームの方が学ばせてもらえることも多く、目まぐるしいくらいに色んなことを吸収させてもらった気持ち。こんな経験初めて。

初めて触る機材を楽しんだり、何度も同じお芝居を撮ることに驚いたり、疲れたけど最後まで頑張ったり。みんなみんな素晴らしい勇姿でした。
みんなや親御さんからも素敵な感想をいただけて、本当に本当に私自身が幸せでした。

好きなら、楽しければ、どこまでも走り続けられる。
最高の企画を成功させてくださったお世話になった皆さんに感謝いたします。

短編映画「arigato2000」という作品を総勢100人を超えるチームで完成させました。映画は沢山の人の力でつくられています。お互いがお互いの仕事をリスペクトして、自分のアイデアも大切にします。どんな現場でもかけがえのない仲間との化学反応です。最高です。
10/27 静岡東宝会館にて上映。よかったら観にいらしてくださいね!

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

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佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

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