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あの人の食日記

2014.10.06 公開 ポスト

体の知性を取り戻す食尹雄大

9月に『体の知性を取り戻す』を刊行したばかりの尹雄大さん。10代で陽明学の「知行合一」の考えに触れ、柔道や空手、キックボクシングを始めて、心とからだの一致を探っていました。どうやら、子供時代から「小さく前にならえ」や「よく考えてからものを言いなさい」というものに違和感があったよう。そんな尹さん、ふだんはどんな食事を摂られているのでしょうか?

9月22日 

 博多でバランストレーナー、小関勲さんを迎えた講習会を行うことになり、その幹事を務めました。

 小関さんは日本女子サッカー代表をはじめ、卓球選手や力士、格闘家などなど、一流のアスリートに指導を行っている方です。

 博多でボディワークや武術の講師を招き、積極的に会を主催するようになったのは、東京で僕が受けていた内容を九州でも紹介したいと思ってのことです。

 そもそも東京に住んでいた僕が博多に来たのは3.11がきっかけです。2年あまりは東京と博多に拠点を設けて移動生活を行い、昨年9月に完全に福岡に移住。はやいもので、あれから一年が経ち、おまけに節目の月に拙著『体の知性を取り戻す』が刊行されたわけで、なんとも感慨深いものがあります。

 さて、この日は前乗りで来福された小関さんと、ベタながら博多名物モツ鍋を食べました。いつもはゆず味噌仕立てを食べているので、醤油味のモツ鍋は僕も初めて。

 

9月23日

 小関勲さんによるバランス講習会は盛況のうちに終了。大人たちがキャッキャ言いながら楽しそうに体を動かしてました。

 バランスは「保つもの」だと思いがちですが、考えて保とうとするとあっけなく崩れてしまう。ただ、自然にしておくと保たれる。不思議ですが、頭よりも体のほうが体について知っているものなんですね。

 福岡空港で小関さんとスイーツを食べつつしばし歓談。
 

9月24日

 僕は甘いものに目がなく、東京にいた頃は吉祥寺のアテスウェイとか西荻窪のエイミーズ・ベイクショップによく通っていました。

 甘党の僕が血眼になって探したのがLOVE ALLという薬院にあるパイ屋さん。ここのパイ生地はめちゃくちゃバターが濃い。オーナーに「バターを使う量が多いのですか?」と尋ねると「普通はマーガリンを交ぜちゃうから濃く感じるだけ」と言われました。なるほど! ブルーベリーとクリームチーズのパイが絶品です。

 コーヒーは府中にある焙煎店「南方郵便機」から取り寄せているグァテマラフレンチ。通い始めてもう20年。手頃な値段でしかもおいしい。

9月25日

 ミシュランに載っている店など行ったことがないのだけど、よく通る道沿いにある蕎麦屋「ひら川」が高評価と知り、一度食べてみようと出かけました。洒落た店構えだけど、スカした感じでもない。雰囲気のいいお店。

 せいろの大盛りを注文。店員さんに「すぐ食べてくださいね」と言われ、慌てたため写真がうまく撮れなかった。十割の蕎麦は喉越しもよく、うまかった。


9月26日

 実は子供の頃、年中股ずれしてたくらいの超肥満体で、いまでも油断していると太ってしまいます。僕が身体性というものに目覚めたのは、あんがい肥満がきっかけなのかもしれません。好きな子に「百貫デブ」と言われたのですから、嫌でも自分の体と向き合わざるを得なかったのです。

 このところ過食気味だったので、この日の夕飯は玄米と玉ねぎと揚げの味噌汁、エゴマの醤油漬けにしました。

 醤油はときおり足して一年くらい経ちますが、唐辛子や生姜、大蒜のエキスも加わり、こってり甘くて美味しい。玄米なのについおかわりして食べ過ぎてしまう。粗食の意味がない。


9月29日

 博多に越してびっくりしたのは魚のうまさ。しかも肉厚!

 魚が食べたい時に行く店のひとつ「五鉄」で夕飯。この日はおつくりのほかに鯛めしも食べて大満足。

9月30日

 この日は人吉高校に呼ばれて生徒さんを前に「頭よりもかしこい体」をテーマに講演。『体の知性を取り戻す』のエッセンスも加味し、認識とは頭の中で完結するものではない。把握という言葉が示すように触れる、掴む体験であり、そのためには自ら移動しなくてはならない。それが人間の知性の根幹にあり、体を伴う行為なのだ。そういうことについて話しました。

 始まる前は緊張で「もう帰りたい」とナーバスになっていたけれど、いざ始まるとみんなの熱気にあおられて、あっという間に2時間が過ぎました。

 先生によれば、ふだんの授業では質問もしない子らが積極的に意見を述べていたので驚いたそうな。お昼に人吉名物のうなぎをいただきました。
 


(お知らせ)
10月9日(木) リブロ池袋本店にて、坂口恭平&尹雄大トークイベント 「新しい知覚をつくる」が開催されます。

 

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みんな、ふだんどんなものを食べているのだろう? 似ているような似ていない、それぞれの食生活を公開! 

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尹雄大

1970年、神戸生まれ。テレビ番組制作会社、出版社を経てライターに。インタビュー原稿やルポルタージュを主に手がける。10代で陽明学の「知行合一」の考えに触れ、心と体の一致をさぐるために柔道や空手、キックボクシングを始める。1999年、武術研究家の甲野善紀氏に出会い、松聲館に入門。2003年、光岡英稔氏に出会い、韓氏意拳を学び始める。主な著書に『FLOW韓氏意拳の哲学』(冬弓舎)、『子どもが語る施設の暮らし』(共著、明石書店)、『体の知性を取り戻す』(講談社現代新書)などがある。公式サイト:http://nonsavoir.com/

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