幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
町田康『俺の文章修行』
一方こちらは文章の書き方について書かれた1冊。
『しらふで生きる』で断酒した著者が、今度は「文章修行」とは! とファンキーを地でいく著者を知るファンには驚く人もいるだろうが安心してほしい。
徹頭徹尾パンクがあふれる作品となっている。モノローグ形式で進み、時には読者に喧嘩を吹っ掛けるような口調で語ることもあり、それはまるで熱いライブのMCのようだ。
冒頭から、文章力を上げるたった一つのコツとして、本を読んで語彙力を高めることに限ると断言。とはいえ、多読はすすめない。これと思った本を何度も何度も読みこんで己の血肉にしていくというのだ。ちなみに著者は子供のころ、『ちからたろう』という童話を「千回くらい読んだ」そうだ。
他にも、文体の作り方、書きたい気持ちのスイッチの入れ方などを、著者でしかありえないエピソードを交えて披露。アパートのごみ置き場で偶然見つけた、かつての愛読書『ことわざ故事金言小辞典』を思わず拾って帰ってしまうくだりなど、ファンにはたまらないだろう。
むろん、本作で説かれるのは、小手先のテクニックではない。これは「小説作法」の名を借りた芥川賞作家の表現への向かい方であり、日常エッセイでもある。ああ、これは町田康にしか書けない、前代未聞の作品だ。
アルパカ通信 幻冬舎部
元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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