呪われた「いぼ痔」が謎の占い師の助言により… 宮古島の月と自然の神秘スギム（クリトリック・リス）

12月末に宮古島でライブがあった。「離島最高、やっほー！」と休みを取ってもちろん前乗り。真冬なのに気温は20度もあって、昼間ならロンT1枚でも大丈夫。シーズンオフで観光客はほとんどおらず、郊外に出ると野良犬が群れをなして走り回っており、羽を広げると1mぐらいあるオオコウモリもバッサバッサ。同じ沖縄県なのに、本島とは空気も匂いも街の雰囲気も違って新鮮だ。

夕方になると今回呼んでくれたライブハウスのコヤちゃんが飲みに誘ってくれた。はしごして4軒目の居酒屋を出たのが午前2時半。まだ飲み足りなくて「もう一軒行きましょう！」と誘うが、この時間に開いてる店はもうないらしい。ガッカリだ。

諦めてホテルに戻ろうとしていた時、前の建物から微かに音楽が聞こえてきた。地下へ続く暗い階段を降りたら怪しげな店が。どうやらバーのようで、まだ営業してそう。「入りましょう！」と振り向くとコヤちゃんの姿がない。「もう付き合い切れない」と逃げられた。

シラフだったらビビって1人では入れなかったと思う。この時は酒と旅行に来た開放感で、恐怖心や警戒心が薄れていた。

躊躇なくドアを開けると、薄暗い部屋の壁にいくつものお面が飾られていた。何かの儀式に使われるような木彫りのお面で不気味だ。ヤバい店に入ってしまったのかも？　酒でふやけていた脳が一瞬でシャンとなって鳥肌が立った。けど後悔してももう遅い。佐村河内守氏似のマスターと目が合い、「あ、いらっしゃい、こちらへどうぞ」。カウンター席に案内された。

深夜に一人で入店してくる一見客も珍しいんでしょう。「大阪から来ました」と告げるとマスターは我が注文した泡盛の水割りを作りながら「それはそれは、遠い所からご苦労さんです」と笑顔を見せてくれた。

暫くたわいもない雑談をして意外と普通そうだと安心していたところ、「宮古島に来てパワーを感じることができましたか？」と突然、意味不明なことをマスターが言い出した。

「えっ！ パワー？ 何のことです？」聞き返すと、

「元々陸地だった内地や本島と違って、宮古島は珊瑚礁が隆起してできた島なんですよ。珊瑚砂からは炭酸カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの天然成分が溶け出してアルカリ性の海水を作ります。そのためここの海は疲労で酸性度が増した身体を中和させることができるんですよ。自然のエネルギーに満ち溢れていて島がまるごとパワースポットなのです。」

はぁ？？？ やっぱり怪しい～。もしかして……ここはスピリチュアルを売り物にしているバーなのか？ それはそれで面白そうなので興味本位で「宮古島のパワーって具体的にどんな効果があるんですか？」と聞いてみた。

「それでは、私の実体験をお話ししましょう‥‥」マスターは飲みかけのウイスキーをグイッと飲み干し、神妙なトーンで話し出した。

バーを始めたばかりの頃、夜に店を開けて明け方に閉めるという不規則な生活に慣れずストレスが溜まって、400gのカップ入り激辛キムチを毎日イッキ食いしていたらしい。

すると1ヶ月程して体に異変が……。肛門が燃えるように熱い。ホースから水をダイレクトに当てて冷やすがおさまらない。一時的ではなく慢性的なもので排便の度に激痛が走り、歩くだけでズキズキする。「その痛みは、まるで肛門にヘラクレスオオカブトムシが刺さって抜けないような状態だ」とマスターは表現した。

日常生活や仕事にも支障をきたすので病院に行ったらやはり原因はキムチで「いぼ痔」と診断された。キムチに含まれるカプサイシンは過剰摂取すると免疫細胞や粘膜に悪影響を与えるらしい。

薬を処方してもらいキムチの爆食いも止めたのに一向に治る気配がなく、いぼ痔は親指大のサイズにまで成長し熱も出るようになった。

そんな時、偶然 店に占い師だというお爺さんが来店し、初対面のマスターに向かって「下半身に邪悪な物を抱えてませんか？」と見事に言い当てた。驚いて、すっかり占い師のことを信じ、いぼ痔で悩んでいることを相談すると、「それは病気というより呪いです。薬では治らない。自然のパワーで治しなさい」と告げられたらしい。

「月の満ち欠けは人体のバイオリズムとリンクしている。女性の生理も月経周期で訪れ、体に関係する漢字に月偏が使われているのもその事を証明している。胃、脳、膣、胸、腰、肺、腸、……　そして肛門の【肛】もだ！ 新月から満月に至るまでの1ヶ月間、毎日海に入りなさい。そうすれば完治するでしょう。」

それから毎日マスターは海に通った。深夜、誰も居ない砂浜で全裸になり海に入ってお尻を広げて肛門を洗う。人に見られたらどうしょう？ 本当に治るのか？ 最初は半信半疑だったが、熱が下がり体調は日増しに良くなっていったらしい。

そしていよいよ大潮となる満月がやってきた。生命のエネルギーがピークを迎える日。森にいた大量のミナミオカガニが産卵のために道路を渡って海を目指す。ウミガメは海から上がって真っ白な砂浜に産卵のための穴を掘る。月明かりで宝石のようにキラキラ輝く水面。マスターはいつものように粛々と服を脱ぎ、身を清めるが如く全裸で入水する。

お尻まで浸かり周りをよく見ると、海中に雪が降っていた。なんと珊瑚までもが産卵を始めたのだ。月明かりの元で繰り広げられる自然の壮大で美しいスペクタルショーに涙が溢れ、泣きながら肛門を洗ったらしい。

そこで更に奇跡が訪れる。なんと小魚達がマスターの周りに集まりだし、いぼ痔を優しく愛撫するように突つき始めたのだ。神秘的で優しいオーラに包まれ、身体がみるみる浄化されていくのを感じることができたらしい。海から上がると不思議なことにいぼ痔は跡形もなく消えていた。

翌朝、すっかり完治したマスターは宮古島の自然にお礼を言うべく再び海を訪れてみると、砂浜に大量の小魚が打ち上がっていたそうだ。

嘘みたいな話だけど我は信じます。話をしている時のマスターの目は宮古島の海のように澄んでいたから。3杯目の泡盛を飲み干して店を出ると薄明るくなった西の空に月が浮かんでいた。いい夜だった。月に向かって「今日はライブなので、二日酔いになりませんように」と祈り、千鳥足でホテルに戻り眠りについたのでした。

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ライブ情報

◯ 1/8(水) 大阪・梅田BANGBOO
◯ 1/9(木) 東京・渋谷ロフト9「クリトリック・リス新年会」
◯ 1/10(金・深夜) 東京・新宿ロフトバー
◯ 1/12(日) 北海道・札幌UNION FIELD
◯ 1/13(月・祝) 北海道・札幌アローネア【※クリトリック・リス ワンマン】
◯ 1/15(水) 東京・新宿レッドクロス「どついたるねんツーマン」
◯ 1/17(金) 東京・池袋adm
◯ 1/19(日) 東京・東高円寺二万電圧
◯ 1/24(金) 沖縄・那覇アウトプット
◯ 1/31(金) 大阪・難波mele
◯ 2/4(火) 渋谷ロフトヘブン
◯ 2/7(金) 埼玉・熊谷ヘブンス
◯ 2/15(土) 東京・吉祥寺・武蔵野音楽祭
◯ 2/16(日) 東京・渋谷BYG
◯ 2/22(土) 名古屋・今池ハックフィン
◯ 2/23(日) 大阪・梅田ムジカジャポニカ
◯ 3/1(土) 東京・新宿サーキットフェス見放題東京
◯ 3/2(日) 大阪・難波Yogibo HOLY MOUNTAIN
◯ 3/6(木) 大阪・南堀江KNAVE
◯ 3/8(土) 大阪・堺ファンダンゴ
◯ 3/14(金) 愛知・名古屋ミカツキ
◯ 3/15(土) 茨城・水戸ペーパームーン【※クリトリック・リス ワンマン】

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メディア出演

茨城放送ミッドナイトクレイジーラジオ 毎週土曜日22～23時 放送中