
ポルトガルの公用語はポルトガル語。お金はユーロ。コルクの生産が世界一で、土産店にはコルクのコースターやコルクの絵ハガキ、コルクのバッグ、コルクの靴まで売られていた。
いわしやタコをはじめ魚介料理の国でもある。塩漬けの干し鱈を使った料理のレパートリーが豊富で、バカリャウ・ア・ブラースは干し鱈とジャガイモと卵を炒めた一品。トッピングの千切りポテトチップスが良いアクセントになっていた。干し鱈のコロッケや、干し鱈のクリームグラタンなども意外にあっさり。全体的に薄味で食べやすい。
日本でも流行したエッグタルトもまたポルトガルの名物。パリパリの薄いパイ皮の中にたっぷりのカスタードクリーム。シナモンシュガーをかけて食べるのが一般的で、いろんな店のを買って食べ比べするのも楽しく、ただし、基本めちゃ甘い。
カフェでコーヒーを注文するとエスプレッソが出てくる。ポルトガルの甘いお菓子にはエスプレッソがよく合い、旅の間、よく飲んだ。
さて、ロカ岬である。
ユーラシア大陸最西端の岬であるらしい。ツアーバスに揺られ到着する。
海を見渡せる岬があった。それだけだ。だが、岬があれば十分だ。最西端が売りなのである。
十字架の石碑が建っていた。
「ここに地終わり、海始まる」
詩人カモンイスによる一節が刻まれている。みな、そこで記念写真を撮っているので、むろん、わたしも撮る。
丘にはぎっしりと多肉植物が茂っていた。こんなにたくさんの多肉植物を見るのは初めてだった。
「不気味な感じもするけど、かわいいようにも思えるし、なんか、ようわからんなー」
と眺めていた。
自分の心を決めつけず、ぼんやりさせておくのもよかろう。
たとえば、
「あの人なんか苦手やな、嫌いな気もするけど、そうでもない気もするし、まぁ、ようわからんしそのままにしとこ」
みたいな感じも時には大事なんだと思う。
風が強かった。
「最西端」というキーワードの元、たくさんの観光客がロカ岬を訪れていた。みなの髪の毛が強風でボサボサになっている。最西端の海に沈む夕日を見に来る人も多いらしい。
一軒だけある小さな土産店に寄ってみれば、手編みのセーターが並んでいた。時間があれば買っていたかもしれない。しかし、ツアーは終始時間に追われている。なんやかんやと慌ただしい。されど、ユーラシア大陸最西端の岬に個人的にやって来る力量などわたしにはないわけで、いろいろ差し引いてもツアー旅行というのは便利であるなと思う。そして、土産店のセーターにしたって帰国して冷静になれば、
「家にいっぱいあったわ、ユニクロのセーター」
なのである。
ロカ岬。
知らない人たちとユーラシア大陸最西端の海を眺めた午後だった。
つづく
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ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。